177 / 187
176
しおりを挟む
「私達はもっと話し合えば良かったのかしらね。それでもきっとあの頃の私は何もかも諦めていた。心が死んでる私では誰が相手でも変わらなかったと思うわ。家を空けて出掛ける事も出来なかった。だって学園に通って帰って来てから夜遅くまで家の仕事をしてたから、そんな暇なんて無かったの。それでも私の為だけに髪留め一つでも贈って欲しかった、それがあの時の本音よ?」
「あった」
「何?」
「婚約して、俺を見ないお前に苛立っていたのも事実だ。絶対に婚約破棄してやるって思ってたしな」
「そう」
「誰がお前なんか相手にしてやるって思ってた」
「そうよね」
「それでも婚約して初めてのお前の誕生日に俺の色の髪留めを贈ろうと買ったんだ」
「そうなの?私貰ってないけど」
「お前は覚えてないんだな」
「え?」
「俺はお前の誕生日の前日にお前に言った。明日の誕生日どうすると」
「え?」
「お前は覚えてないんだな」
「ごめんなさい。私は何て言ったの?」
「お前は誕生日なんか祝って貰わなくていい、そんな事より用事はそれだけ?それだけなら帰ってくれないって言ったんだ!」
「ごめんなさい」
「あの時の俺の気持ちがお前に分かるか?確かに親に勝手に決められた婚約だった。お前だって俺が気に食わなかっただろう。だけど婚約して初めてのお前の誕生日だぞ?婚約者が自分の色の物を贈る事が出来る誕生日だぞ!それをお前はそんな事って言ったんだ!
お前は!お前は俺がサラに心を移して何も贈って貰えなかったって思ってるかも知れないけどな!お前が俺に何も贈らせ無かったんだ!」
「ごめんなさい、本当にごめんなさい」
「俺を婚約者として見てなかったのはお前だ!」
「ごめんなさい」
「今の俺の姿を嘲笑いたいなら嘲笑ってくれ」
「そんな事出来ないわよ」
「嘲笑いに来たんだろ?」
「ジェフ様を確認しに来たのは本当よ。嘲笑いに来たって思われても仕方ないわ。
それでも、本当にごめんなさい。今更謝っても許される事じゃないわ。あの時私は心が死んでた。感情を持ってたらもっと小さい時に本当に死んでたから。貴方に会う時には既に心を失くして情を失くして、ただ人形の様に生きていた。
それでももしジェフ様に本当の事を言えてたら、もしジェフ様に弱音を吐いていたら、もしジェフ様に助けを求めていたらきっと違ったのかも知れない。それでも今更よね」
「今更だな」
「私はジェフ様の人生を壊したのね」
「ああ。それでも俺がお前に相手にされなくても贈り続けていれば良かったのか?そしたらお前は俺を見たのか? それでも俺もガキだったんだよ。お前の言葉一つ行動一つで傷付くガキだったんだよ」
「ごめんなさい」
「もう今更だ」
「私は謝っても謝っても許されない事をしたわ。貴方のお兄様に私も謝罪して本当の事を言うわ。お兄様に、」
「止めてくれ!」
「でも、」
「止めてくれ。俺は勘当された。お前に婚約者として贈り物をしてこなかったのも事実だ」
「でもそれは、」
「お前がいながらサラに好意を持ったのも事実だ」
「それだって、」
「もう良いんだよ、他っておいてくれ」
「そんな事出来ないわよ!」
「何だよ、罪滅ぼしでもするってか?」
「そうよ!私は貴方に罪をなすりつけたのだもの」
「それこそ止めてくれ」
「何でよ!私の罪よ。貴方は婚約者として贈り物を贈ろうとしてくれた。それなのに私が受け取らなかった。ううん違うわね、貴方に贈らせ無かった。それは私の罪よ、貴方じゃない。貴方が受ける罰じゃない」
「それでも今更だ」
「貴族に戻す事は簡単じゃないわ。そんな事分かってる。それでも被る必要のない罪を被る必要なんてないのよ」
「なあエミリーヌ」
「何?」
「俺はエミリーヌの辛さ、置かれてる立場、そんなの見ようとしなかった」
「そんなの当たり前じゃない。私が言わなかったんだもの」
「確かに聞いてない。それでも当主じゃないお前が、毎度会いに行く度に仕事をしているのを疑問に思わなかった俺にだって責任はあるんだよ」
「そんなの責任じゃないわ」
「それでも俺はお前の補佐として婿に入る予定だった。学園でも当主の仕事も補佐の仕事も習った。冷静になった今思えば当主じゃないお前が仕事をしているのがおかしいと気付ける。時期当主だとしてもお前の父上が家に居て仕事をせず、お前が代わりに仕事をしてる事は本来なら駄目な事だ。それでもあの時の俺は疑問にも思わなかった。それが俺の罪だ」
「そんなの罪じゃないわ。当主の仕事を代わりにする家だってあるわよ」
「それでも兄上は人に任せたりしない。当主しか印が押せない物があるし、当主しか知らされない家の内情もある。それすら見えない程俺の目は曇っていた」
「曇らせたのは私じゃない。私がもっと婚約者らしくしていれば違ったわ。ジェフ様は言ったわ、婚約者になりたかったと。ジェフ様を婚約者にしなかったのは私よ…」
「それでも今更なんだよ」
「あった」
「何?」
「婚約して、俺を見ないお前に苛立っていたのも事実だ。絶対に婚約破棄してやるって思ってたしな」
「そう」
「誰がお前なんか相手にしてやるって思ってた」
「そうよね」
「それでも婚約して初めてのお前の誕生日に俺の色の髪留めを贈ろうと買ったんだ」
「そうなの?私貰ってないけど」
「お前は覚えてないんだな」
「え?」
「俺はお前の誕生日の前日にお前に言った。明日の誕生日どうすると」
「え?」
「お前は覚えてないんだな」
「ごめんなさい。私は何て言ったの?」
「お前は誕生日なんか祝って貰わなくていい、そんな事より用事はそれだけ?それだけなら帰ってくれないって言ったんだ!」
「ごめんなさい」
「あの時の俺の気持ちがお前に分かるか?確かに親に勝手に決められた婚約だった。お前だって俺が気に食わなかっただろう。だけど婚約して初めてのお前の誕生日だぞ?婚約者が自分の色の物を贈る事が出来る誕生日だぞ!それをお前はそんな事って言ったんだ!
お前は!お前は俺がサラに心を移して何も贈って貰えなかったって思ってるかも知れないけどな!お前が俺に何も贈らせ無かったんだ!」
「ごめんなさい、本当にごめんなさい」
「俺を婚約者として見てなかったのはお前だ!」
「ごめんなさい」
「今の俺の姿を嘲笑いたいなら嘲笑ってくれ」
「そんな事出来ないわよ」
「嘲笑いに来たんだろ?」
「ジェフ様を確認しに来たのは本当よ。嘲笑いに来たって思われても仕方ないわ。
それでも、本当にごめんなさい。今更謝っても許される事じゃないわ。あの時私は心が死んでた。感情を持ってたらもっと小さい時に本当に死んでたから。貴方に会う時には既に心を失くして情を失くして、ただ人形の様に生きていた。
それでももしジェフ様に本当の事を言えてたら、もしジェフ様に弱音を吐いていたら、もしジェフ様に助けを求めていたらきっと違ったのかも知れない。それでも今更よね」
「今更だな」
「私はジェフ様の人生を壊したのね」
「ああ。それでも俺がお前に相手にされなくても贈り続けていれば良かったのか?そしたらお前は俺を見たのか? それでも俺もガキだったんだよ。お前の言葉一つ行動一つで傷付くガキだったんだよ」
「ごめんなさい」
「もう今更だ」
「私は謝っても謝っても許されない事をしたわ。貴方のお兄様に私も謝罪して本当の事を言うわ。お兄様に、」
「止めてくれ!」
「でも、」
「止めてくれ。俺は勘当された。お前に婚約者として贈り物をしてこなかったのも事実だ」
「でもそれは、」
「お前がいながらサラに好意を持ったのも事実だ」
「それだって、」
「もう良いんだよ、他っておいてくれ」
「そんな事出来ないわよ!」
「何だよ、罪滅ぼしでもするってか?」
「そうよ!私は貴方に罪をなすりつけたのだもの」
「それこそ止めてくれ」
「何でよ!私の罪よ。貴方は婚約者として贈り物を贈ろうとしてくれた。それなのに私が受け取らなかった。ううん違うわね、貴方に贈らせ無かった。それは私の罪よ、貴方じゃない。貴方が受ける罰じゃない」
「それでも今更だ」
「貴族に戻す事は簡単じゃないわ。そんな事分かってる。それでも被る必要のない罪を被る必要なんてないのよ」
「なあエミリーヌ」
「何?」
「俺はエミリーヌの辛さ、置かれてる立場、そんなの見ようとしなかった」
「そんなの当たり前じゃない。私が言わなかったんだもの」
「確かに聞いてない。それでも当主じゃないお前が、毎度会いに行く度に仕事をしているのを疑問に思わなかった俺にだって責任はあるんだよ」
「そんなの責任じゃないわ」
「それでも俺はお前の補佐として婿に入る予定だった。学園でも当主の仕事も補佐の仕事も習った。冷静になった今思えば当主じゃないお前が仕事をしているのがおかしいと気付ける。時期当主だとしてもお前の父上が家に居て仕事をせず、お前が代わりに仕事をしてる事は本来なら駄目な事だ。それでもあの時の俺は疑問にも思わなかった。それが俺の罪だ」
「そんなの罪じゃないわ。当主の仕事を代わりにする家だってあるわよ」
「それでも兄上は人に任せたりしない。当主しか印が押せない物があるし、当主しか知らされない家の内情もある。それすら見えない程俺の目は曇っていた」
「曇らせたのは私じゃない。私がもっと婚約者らしくしていれば違ったわ。ジェフ様は言ったわ、婚約者になりたかったと。ジェフ様を婚約者にしなかったのは私よ…」
「それでも今更なんだよ」
108
お気に入りに追加
2,372
あなたにおすすめの小説
理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました
ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。
このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。
そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。
ーーーー
若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。
作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。
完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。
第一章 無計画な婚約破棄
第二章 無計画な白い結婚
第三章 無計画な告白
第四章 無計画なプロポーズ
第五章 無計画な真実の愛
エピローグ
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
愛のない貴方からの婚約破棄は受け入れますが、その不貞の代償は大きいですよ?
日々埋没。
恋愛
公爵令嬢アズールサは隣国の男爵令嬢による嘘のイジメ被害告発のせいで、婚約者の王太子から婚約破棄を告げられる。
「どうぞご自由に。私なら傲慢な殿下にも王太子妃の地位にも未練はございませんので」
しかし愛のない政略結婚でこれまで冷遇されてきたアズールサは二つ返事で了承し、晴れて邪魔な婚約者を男爵令嬢に押し付けることに成功する。
「――ああそうそう、殿下が入れ込んでいるそちらの彼女って実は〇〇ですよ? まあ独り言ですが」
嘘つき男爵令嬢に騙された王太子は取り返しのつかない最期を迎えることになり……。
※この作品は過去に公開したことのある作品に修正を加えたものです。
またこの作品とは別に、他サイトでも本作を元にしたリメイク作を別のペンネー厶で公開していますがそのことをあらかじめご了承ください。
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます
結城芙由奈
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】
私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。
もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。
※マークは残酷シーン有り
※(他サイトでも投稿中)
【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?
仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。
そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。
「出来の悪い妹で恥ずかしい」
「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」
そう言ってましたよね?
ある日、聖王国に神のお告げがあった。
この世界のどこかに聖女が誕生していたと。
「うちの娘のどちらかに違いない」
喜ぶ両親と姉妹。
しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。
因果応報なお話(笑)
今回は、一人称です。
田舎者とバカにされたけど、都会に染まった婚約者様は破滅しました
さこの
恋愛
田舎の子爵家の令嬢セイラと男爵家のレオは幼馴染。両家とも仲が良く、領地が隣り合わせで小さい頃から結婚の約束をしていた。
時が経ちセイラより一つ上のレオが王立学園に入学することになった。
手紙のやり取りが少なくなってきて不安になるセイラ。
ようやく学園に入学することになるのだが、そこには変わり果てたレオの姿が……
「田舎の色気のない女より、都会の洗練された女はいい」と友人に吹聴していた
ホットランキング入りありがとうございます
2021/06/17
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる