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「では、シスター一人と小部屋で構いません、お貸しし頂けけたらと思います」
「それは構いません」
「ありがとうございます。ではこちらが指名する子を呼んで頂けますか?」
「はい。セイ」
「はい、シスター長」
「セイ、貴女はこちらのキャメル侯爵様に付いて案内して下さい」
「分かりました」
「シスター長ありがとうございます。ではセイ、お願いしますね」
「はい、キャメル侯爵様」
「キャメル侯爵様、今回は本当にありがとうございました。我々がもっとしっかりしなければいけないのです」
「シスター長、セイリーン孤児院は土地柄子供達が多く集まります。シスターも子供達に比べ少ないと思います。手が回らない事も仕方のない事です。ですが、仕方がないと諦めたら次から次へと働かない子達が街へ放り出されます」
「はい」
「卒院も仕方がない事です。シスター長も出来れば卒院させなくないとお思いでしょう。ですが入ってくる子達がいれば自ずと働ける年齢になれば出すしかない」
「はい」
「実状、勉学が出来ず、手に職もない、学校にすら通っていない、孤児院育ちではなく、例え両親がいる子でもそんな子を雇う人がいると思いますか? 孤児院にいる子達は孤児院育ちだからと言いますがそうではないのです。孤児院育ちでも勉学し、手に職をつけ、学校に通えば雇う人がいます。生活の為に働き稼ぐ事が出来るのです」
「はい」
「これは告げ口ではありません。なので子供達を諭す事だけは止めて下さい」
「分かりました」
「今回、我々がどんな職に就きたいか子供達に聞いた所、愛人になると書いた子が数人いました」
「愛人ですか!」
「はい。私共も愛人が職とは思いませんでした」
「当たり前です」
「ですが子供達の言い分を聞いていて進める事はしませんが、それでもある意味それも有りなのだと私は思いました。勉学が出来ずとも、手に職がなくとも、学校へ通わずとも、生活するお金を貰えます。愛人を容認する事は出来ません。ですが愛人を持つ貴族がいて、愛人になる平民の女性がいるのも紛れもない事実です。
勉学が出来ず手に職もない、学校にも通っていない子の働き口など賃金の安い下働きか、誰もやりたくない仕事しかありません。それなら愛人になった方が平民が生活するには十分なお金が貰えます。性の捌け口にはなりますが情を持てば愛する人に抱かれる行為になります」
「確かにそうですが…」
「働き口もなく孤児院を出て生活する為に見出した知恵とはあまり言いたくはないですが、それも一つのお金の稼ぎ方だと私は思いました」
「そうですが…」
「ですが愛人は一時の関係とも言えます。相手の男性の気が他にいけば捨てられます」
「はい」
「どれだけ貯えていたとしても贅沢していた生活を忘れられず他の愛人になるか、それかいずれ行末は娼館です」
「はい」
「それよりも地道に働き稼ぐ、当たり前の事ですが続けるのは大変です。賃金が安く働きに見合ってはいない、身体だけ酷使しそれでも働かなければ生きていけない。諦めて逃げる癖のついた子達が耐えられると思いますか?」
「無理でしょう」
「ええ、無理です。今孤児院で生活している子達は諦め逃げる癖のついた子達ばかりです。それはここの孤児院だけではありません。どこの孤児院の子達もです。孤児院育ちなのはこの先付いて回るものです。それも仕方がない事です。事実ですから」
「はい」
「両親がいる子なら両親が養ってくれる。ですが両親がいない孤児院の子達は自分で稼ぎ生きていくしかありません。だからこそ勉学が必要で、手に職を付ける事が必要で、学校に通う事が必要なのです」
「はい」
「親がいない、親に捨てられた、それを自ら認めそれを糧に諦めず逃げ出さず頑張るしか他ないのです」
「はい」
「学校で言われる事は職に就いても言われる事です。孤児院育ち、親無し、貧乏人、色々な蔑む言葉はあります。ですが孤児院で育ってるこの子達が自分で望んでここにいる訳ではありません。捨てた親が悪いし流行り病が悪い。それでも見えない相手より見える相手を侮辱し蔑むのも事実です」
「はい」
「孤児院で育つ子達にだけ枷を付けるのは酷な話ですが現実なのです」
「はい」
「ですが諦めず逃げ出さず頑張っていれば必ず報われる時がきます。その姿を見て評価をしてくれる人は必ずいます」
「はい」
「そうなれば孤児院育ちなど関係ありません。正当な評価で正当な賃金が貰え、結婚しても子が産まれても働く事が出来ます」
「はい」
「今年卒院する子達がこれからの足掛かりになれば良いと私共は考えています」
「はい」
「それは構いません」
「ありがとうございます。ではこちらが指名する子を呼んで頂けますか?」
「はい。セイ」
「はい、シスター長」
「セイ、貴女はこちらのキャメル侯爵様に付いて案内して下さい」
「分かりました」
「シスター長ありがとうございます。ではセイ、お願いしますね」
「はい、キャメル侯爵様」
「キャメル侯爵様、今回は本当にありがとうございました。我々がもっとしっかりしなければいけないのです」
「シスター長、セイリーン孤児院は土地柄子供達が多く集まります。シスターも子供達に比べ少ないと思います。手が回らない事も仕方のない事です。ですが、仕方がないと諦めたら次から次へと働かない子達が街へ放り出されます」
「はい」
「卒院も仕方がない事です。シスター長も出来れば卒院させなくないとお思いでしょう。ですが入ってくる子達がいれば自ずと働ける年齢になれば出すしかない」
「はい」
「実状、勉学が出来ず、手に職もない、学校にすら通っていない、孤児院育ちではなく、例え両親がいる子でもそんな子を雇う人がいると思いますか? 孤児院にいる子達は孤児院育ちだからと言いますがそうではないのです。孤児院育ちでも勉学し、手に職をつけ、学校に通えば雇う人がいます。生活の為に働き稼ぐ事が出来るのです」
「はい」
「これは告げ口ではありません。なので子供達を諭す事だけは止めて下さい」
「分かりました」
「今回、我々がどんな職に就きたいか子供達に聞いた所、愛人になると書いた子が数人いました」
「愛人ですか!」
「はい。私共も愛人が職とは思いませんでした」
「当たり前です」
「ですが子供達の言い分を聞いていて進める事はしませんが、それでもある意味それも有りなのだと私は思いました。勉学が出来ずとも、手に職がなくとも、学校へ通わずとも、生活するお金を貰えます。愛人を容認する事は出来ません。ですが愛人を持つ貴族がいて、愛人になる平民の女性がいるのも紛れもない事実です。
勉学が出来ず手に職もない、学校にも通っていない子の働き口など賃金の安い下働きか、誰もやりたくない仕事しかありません。それなら愛人になった方が平民が生活するには十分なお金が貰えます。性の捌け口にはなりますが情を持てば愛する人に抱かれる行為になります」
「確かにそうですが…」
「働き口もなく孤児院を出て生活する為に見出した知恵とはあまり言いたくはないですが、それも一つのお金の稼ぎ方だと私は思いました」
「そうですが…」
「ですが愛人は一時の関係とも言えます。相手の男性の気が他にいけば捨てられます」
「はい」
「どれだけ貯えていたとしても贅沢していた生活を忘れられず他の愛人になるか、それかいずれ行末は娼館です」
「はい」
「それよりも地道に働き稼ぐ、当たり前の事ですが続けるのは大変です。賃金が安く働きに見合ってはいない、身体だけ酷使しそれでも働かなければ生きていけない。諦めて逃げる癖のついた子達が耐えられると思いますか?」
「無理でしょう」
「ええ、無理です。今孤児院で生活している子達は諦め逃げる癖のついた子達ばかりです。それはここの孤児院だけではありません。どこの孤児院の子達もです。孤児院育ちなのはこの先付いて回るものです。それも仕方がない事です。事実ですから」
「はい」
「両親がいる子なら両親が養ってくれる。ですが両親がいない孤児院の子達は自分で稼ぎ生きていくしかありません。だからこそ勉学が必要で、手に職を付ける事が必要で、学校に通う事が必要なのです」
「はい」
「親がいない、親に捨てられた、それを自ら認めそれを糧に諦めず逃げ出さず頑張るしか他ないのです」
「はい」
「学校で言われる事は職に就いても言われる事です。孤児院育ち、親無し、貧乏人、色々な蔑む言葉はあります。ですが孤児院で育ってるこの子達が自分で望んでここにいる訳ではありません。捨てた親が悪いし流行り病が悪い。それでも見えない相手より見える相手を侮辱し蔑むのも事実です」
「はい」
「孤児院で育つ子達にだけ枷を付けるのは酷な話ですが現実なのです」
「はい」
「ですが諦めず逃げ出さず頑張っていれば必ず報われる時がきます。その姿を見て評価をしてくれる人は必ずいます」
「はい」
「そうなれば孤児院育ちなど関係ありません。正当な評価で正当な賃金が貰え、結婚しても子が産まれても働く事が出来ます」
「はい」
「今年卒院する子達がこれからの足掛かりになれば良いと私共は考えています」
「はい」
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