妹がいなくなった

アズやっこ

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 少女が隔離させていた部屋から連れて来られ、


「座って」


 怯えた少女が座り、


「少し自分で考える時間を与えたけど、君の考えは決まった?」

「せ、セナンちゃんは?セナンちゃんはどうするって言ってた?」

「セナンではなくて君の考えを教えて貰いたいんだけどね?」

「私はセナンちゃんと同じ所で働く」

「ならセナンがもし娼館で働くって言ってたら君も娼館で働くのか?」

「セナンちゃんが働くのなら私も働く」

「ねえ君さ、どうしてそこまでセナンにこだわるわけ?」

「セナンちゃんは友達だもの」

「友達ね…。君は他にも友達がいただろ?」

「私にはセナンちゃんだけだもん」

「セナンの取り巻きには君以外もいたよね?」

「あの子達はセナンちゃんの友達で私の友達じゃない」

「それでも孤児院では一緒にいるんじゃないの?」

「だって、セナンちゃんの側にあの子達もいるから」

「一緒に孤児院で過ごして、一緒にご飯食べて、一緒に話したりしてないの?」

「それはしてるけど…。でも、セナンちゃんがいるから。私はセナンちゃんと二人でいたいのに…」

「君の中にはセナンしかいないみたいだけど、良く周りを見てごらん?この世には君とセナンしかいないんじゃない、ここにも俺達だっている、孤児院にだって何十人といるだろ?」

「いるけど…」

「セナンに頼りたいのは分かるけど、もう君も一人で立てる様にならないと。卒院したら君は自分で稼ぎお金を得て生活をしないといけない。

確かに卒院した子達で一緒に暮らす事はあると思う、いきなり孤児院から放り出されるわけだからね。それでも自分の生活費は自分で稼がないといけないのは君も分かってるよね?」

「うん」

「誰かと一緒の職場で働くのが悪い訳でもない。だけど人には得手不得手があるだろ? 得意な事ややりたい事が同じなら、同じ職場でもお互い頑張って働くだろう。だけど、孤児院から放り出されるのは皆同じなんだ。君だけが放り出される訳じゃない。

君は得意な事もやりたい事もないって言ったよね?」

「うん」

「君がどんな仕事でも我武者羅にやるって言うならそれでも良い。だけどね、それはエナン関係なくならだ。

君にとってエナンは幼い頃から孤児院で一緒に育ってきて、親でもあり姉妹でもあり友でもあるのかも知れないけど、エナンは友ではあるけど親でも無ければ姉妹でも無いんだ。

君の人生をエナンに預けてどうする。エナンも君の人生は背負えないよ?」

「私はただエナンちゃんの側にいたいだけ」

「エナンの側にいたいだけなら君は君の職場を探すんだ。同じ立場で側にいるならそれでもいい」

「同じ立場って?」

「エナンの意見に左右されず、エナンに頼らなくても自分の考えを持って一人で立つ事かな?

エナンだって卒院すれば自分の生活の為に働く。今は君の事を目にかけていても、働き出したら君の事など目にも入らないだろう。それだけエナンも必死になって働くからだ。慣れない仕事に人間関係、今迄自分は護られていたと分かるだろう。

孤児院で育った君達はきっと今の生活に不満もあると思う。食べたい物も食べられず、着たい服が着れる訳でもない。それでもね、君達は孤児院で護られている子供だったんだ。

世間の目は冷たい。孤児院育ちだけで理不尽な仕打ちもされるだろう。それでも歯を食いしばって頑張るしか自分を認めさせる事は出来ないんだ」

「…………」

「君は君自身で頑張り他人に認めて貰うんだ。エナンに頼るのではなくてね」

「そんなの…私一人では無理…」

「不安なのは君だけじゃない。皆不安なんだ。どれだけ頑張れば良いのか、どれだけ努力をすれば良いのか、何をすれば認めて貰えるのか、そんなもの目に見えないものだ。それでも日々努力して我武者羅に頑張っていればいつか必ず認められる時がくる。

それは君達だけの話じゃないんだよ?俺達貴族もそうだ。ただ君達と違う所は初めから背負う者達がいて護る家がある、それだけで、俺達だって日々努力し我武者羅に頑張って働きお金を稼いでいる。護るべき者達の為にも貴族に産まれた者に課せられた宿命だ。

始めから何でも出来る者なんていないんだ。勉学が苦手なら人より勉学するしかない。剣が苦手なら人より剣を振るしかない。社交が苦手なら進んで社交に出掛けるしかない。苦手だからと逃げず努力するしかない。

君はエナンに頼らず一人で立てるように自分から逃げず自分と向き合うべきだ」

「そんなの、無理よ」

「無理だと思ったら無理なんだ。やれる、やってみると思わないと出来ないよ?」

「そんなの…」

「なら先ずは自分でも出来そうな事を自分で考えてみるんだ」

「分からない、分からないもん。私何も出来ない」

「それなら孤児院で君は何をするの? 孤児院では少なからず何かするだろ?何もしないなんて事ないだろ?」



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