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セナンが出て行き、少し休憩になった。メイが入ってきてお茶とお菓子の準備をする。
私はアイリーン様と隣に並び座りお茶を口に含む。
「お祖父様」
「何だ」
「明後日セイリーン孤児院へ行って来ます」
「分かった」
「セナンの気持ちを聞きがてら、手紙を渡すつもりでしたがシスター長と直接お会いして話して来ます」
「それが良いだろう。どうせエミリーの事だ、セシルの事を頼みに行くのだろ?」
「はい。私が後見人になるつもりです」
「分かった」
「後はマークの妹さんや弟さんにも会って来ます」
「そうしてくれ」
「なあエリー」
「何?」
「セシルの時、どうして急に代わるって言ったんだ?嫌、俺だって分かるよ?怖がってた事ぐらい。だから一応優しく言ったつもりだったんだけど」
「チャーリーの対応が駄目だった訳じゃないの。セシルが精神的なものか発育の類いか分からないけど、私も一時セシルの様に吃ってたの。私の場合は精神的な方だけど、お父様の前にいくとね…。きちんと話さないとと思うと余計に。私にはメイが側にいてくれたし、グレンも護ってくれたから本当に一時で済んだけど、焦ると余計に話せなくなるの。それに孤児院には大人の男性は居ないでしょ?だから私が代わったの」
「そう言う事だったんだ」
「うん」
「儂も報告は受けてたが、すまないな」
「お祖父様はお祖母様が側にいましたもの」
「まあそうだが、エミリーの辛い時に側にいてやれなかった」
「私とお祖母様と二人を見てたらお祖父様が倒れてしまうわ。お祖父様が倒れたらキャメル侯爵家は没落してましたよ?」
「そうだが」
「一時だけだったので大丈夫です」
「そうか」
「前侯爵」
「何だ?」
「こんな話の後に出したくないのですが」
「何だ」
「先程隔離した子ですけど、どうしますか?」
「あの子な」
「はい。あそこまで依存していては短時間隔離しただけでまともに考えるとは思えませんが…」
「セナンがどちらを選ぶにせよ、心掛けが違う以上同じ様に働く事は出来んだろうな」
「はい」
「セナンと離し独り立ちさせるべきだが、それも危ういしな」
「はい」
「アイリーン譲はどう思う」
「はい。私の時もそうでしたが、王女という私に依存した者もおりました。私の真似をし、私に意見を聞き、私の言う事全てに同調し、私に全てを委ねてきました。心酔する、聞こえは良いですが、依存される方は恐ろしくもありました。
実際、私の学生時代、婚約者がいる令息の腕に自分の腕を絡ませ距離の近い令嬢がいたのですが、私がふしだらと言った一言でその令嬢を陰で虐めていました。早々に気付いたので大きな怪我もなく穏便に済みましたが、私が気付かなければその令嬢がどうなっていたか考えると…。それから彼女の前では何も言えませんでした。
私を慕ってくれるのはありがたいのですが、度を超えた慕いは正直息ができませんでした。
セナンがその様に思っているとは思いませんが、それも狭い籠の中だからこそです。孤児院を出た後まで全てを委ねられたらセナンも一緒に共倒れです。セナンには彼女を背負うだけの心はありませんから。それにあの子も今は己しか支えられません」
「そうだろうな」
「はい」
「ではどうするか」
「短時間で考えが変わるとは思いませんが」
「だろうな。どうしたものか…」
沈黙になり、
「その依存を他に向けさせたらどうでしょうか」
「エミリー、依存する者を変えても意味がない」
「なら神とかならどうです?」
「それも神に依存をし過ぎると変な方向に進んでしまう」
「神に仕えるシスターなら良いと思ったのですが。神はこちらの声は聞いてくれますが、神からは返事はありません。依存するのが人ならば意見を聞けば返事が返ってくるので同じ事の繰り返しになってしまいますが神ならばと思ったのですが…」
「それも危険なのだ。神を心酔するあまり自分が神になったように振る舞い信者を集め、いずれお金の亡者になる。良い行いをしている時は良いが、お金に囚われる様になった時は最後だ」
「それも怖いですね」
「まず他人に依存する事を止めさせなければ意味がない」
「確かにそうですが」
「誰かが根気よく諭していかなければならない」
「諭す?教えるのではなくて?」
「ああ。教えるのではなく諭すだ。先程話した子の中にも居ただろう、セナンが強いから側にいると言った子が」
「はい」
「あの子もある意味依存しているのだ。ただ違う所は個人ではないという事だ。あの子はセナンに依存しているのではなく強い者だ。強い者の側にいて自分の場所を確保する。孤児院ではセナンだったと言うだけで外に出れば出た所で見つけていく。
我々が自分で考えろと言った事によりセナンを早々に切り捨てた。計算してやっているのなら強かだが、己の保身の為にやるのであればいずれは破滅だ」
「破滅ですか…」
「強いものに巻かれろそれが悪い事ではない、出世術だ。だが己の心は己の物と芯をしっかり持っていればだ。目指すものがあり目指すものの為に権力者に取り入る、それ等は誰しもやる事だ」
私はアイリーン様と隣に並び座りお茶を口に含む。
「お祖父様」
「何だ」
「明後日セイリーン孤児院へ行って来ます」
「分かった」
「セナンの気持ちを聞きがてら、手紙を渡すつもりでしたがシスター長と直接お会いして話して来ます」
「それが良いだろう。どうせエミリーの事だ、セシルの事を頼みに行くのだろ?」
「はい。私が後見人になるつもりです」
「分かった」
「後はマークの妹さんや弟さんにも会って来ます」
「そうしてくれ」
「なあエリー」
「何?」
「セシルの時、どうして急に代わるって言ったんだ?嫌、俺だって分かるよ?怖がってた事ぐらい。だから一応優しく言ったつもりだったんだけど」
「チャーリーの対応が駄目だった訳じゃないの。セシルが精神的なものか発育の類いか分からないけど、私も一時セシルの様に吃ってたの。私の場合は精神的な方だけど、お父様の前にいくとね…。きちんと話さないとと思うと余計に。私にはメイが側にいてくれたし、グレンも護ってくれたから本当に一時で済んだけど、焦ると余計に話せなくなるの。それに孤児院には大人の男性は居ないでしょ?だから私が代わったの」
「そう言う事だったんだ」
「うん」
「儂も報告は受けてたが、すまないな」
「お祖父様はお祖母様が側にいましたもの」
「まあそうだが、エミリーの辛い時に側にいてやれなかった」
「私とお祖母様と二人を見てたらお祖父様が倒れてしまうわ。お祖父様が倒れたらキャメル侯爵家は没落してましたよ?」
「そうだが」
「一時だけだったので大丈夫です」
「そうか」
「前侯爵」
「何だ?」
「こんな話の後に出したくないのですが」
「何だ」
「先程隔離した子ですけど、どうしますか?」
「あの子な」
「はい。あそこまで依存していては短時間隔離しただけでまともに考えるとは思えませんが…」
「セナンがどちらを選ぶにせよ、心掛けが違う以上同じ様に働く事は出来んだろうな」
「はい」
「セナンと離し独り立ちさせるべきだが、それも危ういしな」
「はい」
「アイリーン譲はどう思う」
「はい。私の時もそうでしたが、王女という私に依存した者もおりました。私の真似をし、私に意見を聞き、私の言う事全てに同調し、私に全てを委ねてきました。心酔する、聞こえは良いですが、依存される方は恐ろしくもありました。
実際、私の学生時代、婚約者がいる令息の腕に自分の腕を絡ませ距離の近い令嬢がいたのですが、私がふしだらと言った一言でその令嬢を陰で虐めていました。早々に気付いたので大きな怪我もなく穏便に済みましたが、私が気付かなければその令嬢がどうなっていたか考えると…。それから彼女の前では何も言えませんでした。
私を慕ってくれるのはありがたいのですが、度を超えた慕いは正直息ができませんでした。
セナンがその様に思っているとは思いませんが、それも狭い籠の中だからこそです。孤児院を出た後まで全てを委ねられたらセナンも一緒に共倒れです。セナンには彼女を背負うだけの心はありませんから。それにあの子も今は己しか支えられません」
「そうだろうな」
「はい」
「ではどうするか」
「短時間で考えが変わるとは思いませんが」
「だろうな。どうしたものか…」
沈黙になり、
「その依存を他に向けさせたらどうでしょうか」
「エミリー、依存する者を変えても意味がない」
「なら神とかならどうです?」
「それも神に依存をし過ぎると変な方向に進んでしまう」
「神に仕えるシスターなら良いと思ったのですが。神はこちらの声は聞いてくれますが、神からは返事はありません。依存するのが人ならば意見を聞けば返事が返ってくるので同じ事の繰り返しになってしまいますが神ならばと思ったのですが…」
「それも危険なのだ。神を心酔するあまり自分が神になったように振る舞い信者を集め、いずれお金の亡者になる。良い行いをしている時は良いが、お金に囚われる様になった時は最後だ」
「それも怖いですね」
「まず他人に依存する事を止めさせなければ意味がない」
「確かにそうですが」
「誰かが根気よく諭していかなければならない」
「諭す?教えるのではなくて?」
「ああ。教えるのではなく諭すだ。先程話した子の中にも居ただろう、セナンが強いから側にいると言った子が」
「はい」
「あの子もある意味依存しているのだ。ただ違う所は個人ではないという事だ。あの子はセナンに依存しているのではなく強い者だ。強い者の側にいて自分の場所を確保する。孤児院ではセナンだったと言うだけで外に出れば出た所で見つけていく。
我々が自分で考えろと言った事によりセナンを早々に切り捨てた。計算してやっているのなら強かだが、己の保身の為にやるのであればいずれは破滅だ」
「破滅ですか…」
「強いものに巻かれろそれが悪い事ではない、出世術だ。だが己の心は己の物と芯をしっかり持っていればだ。目指すものがあり目指すものの為に権力者に取り入る、それ等は誰しもやる事だ」
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