妹がいなくなった

アズやっこ

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 ベンと一緒にセシルが出て行き、ガインと少女が入って来た。


「座って」


 少女が座り、


「一週間考える時間があったけど、君の考えを聞かせて貰える?」

「笑わない?」

「笑わないよ、聞かせて?」

「私、色々な国に行きたいの」

「壮大だね」

「でしょ!」

「でもそれはお金を稼いでお金を貯めてから行くものだね」

「やっぱりそっか~」

「うん、そうだね」

「お金を出してくれる人なんかいないよね~」

「まあ、いないよね」

「だと思った!」

「なら他に考えてきたの?」

「う~ん、私ね、ある意味愛人って良いなって思ってたの。働かなくてもお金貰えて、運良ければ旅行に連れて行って貰えるかもしれないでしょ?確かに好きじゃない人に抱かれるのは嫌だけどさぁ~。格好いいおじさんなら良いけど、デブやハゲは嫌。でも、そんなのこっちが選べる立場じゃないし」

「まあそうだね」

「セナンちゃんみたいに綺麗じゃないけど、そこそこ見目も良いし?愛嬌はあると思うの。セナンちゃんみたいにツンツンしてないし」

「あ、うん」

「でもさぁ、愛人以外で考えろって言われてさぁ、急に困るよね~」

「なら君は愛人になると?」

「それも考えた末ならいいかとも思ったんだけど、どうせなら次にやりたい事にしようと思って」

「それは何?」

「私ね、色々な国に行きたいって行ったでしょ?」

「そうだね」

「それと良く似てて、色々な人になりたいの」

「ん?」

「ほら、貴族の人達が良く観に行くじゃん」

「観劇の事?」

「それそれ!話題の小説や人物を劇にしたやつ!」

「役者って事?」

「そう!ねえ、役者ってどうやってなれるの?知ってる?」

「あまり詳しくないけど、劇場の人に交渉するとか?」

「あ~!その手があったね~。分かった、私、交渉してくる」

「そうだね、頑張って」

「役者になったら観に来てね!」

「観に行くよ」

「絶対だよ!」

「ああ」


 少女がガインと出て行き、


「とても元気な子だったな」

「本当に」

「あの子なら本当に役者になれそうだ」

「確かにね」

「その時はエリー観に行こうね?」

「勿論。楽しみね」

「そうだね」


 ガインがセナンを連れて入って来た。


「座って」


 セナンが座り、


「君はまだ愛人になりたい?」

「それは…」

「何?」

「もうなりたくない…」

「そうか。でもどうして?」

「あれからお姉さんに聞いたの」

「お姉さん?」

「孤児院でよくしてくれたお姉さん」

「そのお姉さんが誰かの愛人だったの?」

「そう」

「お姉さんに何を聞いたの?」

「愛人って何がいいの?って」

「そしたら?」

「娼婦と変わらないって言ってた。それに、まだ娼婦の方が稼げるって」

「そうか」

「それに私程の見目なら人気が出るだろうって。でも私嫌よ。娼婦は嫌」

「ならどうするの?」

「地道に働く」

「何して?」

「食堂でも服屋でも何でもいいから地道に働くわ」

「そう」

「シスターに聞いたら職を紹介してくれるって言ってたし」

「孤児院の子達の職は厳しい所が多いけど大丈夫?」

「それも聞いたわ。給金は安いって」

「それでも紹介して貰うの?」

「毎日食べていけるだけ稼げればいいし」

「そうか。それでどこを紹介して貰うの?」

「皿洗いか洗濯だって言ってた」

「どっちも大変そうだけど」

「確かに大変だと思うけど」

「どっちも得意なの?」

「洗濯は苦手だから皿洗いにするつもり」

「そうか。場所は食堂?」

「街の騎士団の食堂だって行ってた」

「騎士団か…ちょっと危険な気がするのは俺だけかな…」

「どうして危険なの?」

「街の騎士団って事は男ばっかりでしょ?それも平民の。騎士って血気盛んって言うか。君、見目は良いからな…」

「どうしよう…」

「俺も他に伝手があれば話をしてあげれるけど…」

「チャーリー、お昼とか食堂に行かないの?」

「それがさ、向こうでは昼も夜も食堂や酒場で食べてたんだよ。孤児院を卒院した子達の様子を見がてらね。向こうでは食堂や酒場で働き口を探したし、店主の人も快く引き受けてくれたからさぁ。働きぶりを見に行って、また卒院する子をお願いしたりね」

「夜は家に帰ったとしても、こっちでも昼ご飯は食べるでしょ?昼は帰って来なかったじゃない」

「それがさ、こっちではエディーナ譲はじめ針子の子達が作って皆で食べるんだよ。俺もこっち来て驚いたけど」

「そうなの?」

「食べながら話し合いをしたり、今後の予定を話したりしながらさぁ。だからこっちでは平民の食堂には行ってないんだよね。だから知り合いもいなければ伝手もないんだよ」

「そうなのね」

「貴族が行く食堂ならまだ昔馴染みの所が何店かあるけど、それも俺が頼んで雇ってくれるかどうか」

「私も食堂には行かないから…。そうだ、グレンならどこかあるかもしれないわ」

「グレンさん?」

「多分だけど。ねぇ、セナン」

「なに?」

「きちんと働くのよね?」

「うん」

「嫌だからって辞めない?」

「辞めるつもりはない」

「分かった。ガイン、悪いけどグレンに走って急いで来て!って伝えて来てくれない?ガインはゆっくり歩いて来ていいから」

「分かりました」


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