妹がいなくなった

アズやっこ

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 子供達が着いたらしく、お祖父様も私達のいる部屋に入って来た。


「では始めようか」


 お祖父様の声でガインは部屋を出て行った。

 暫くして戻って来たガインの隣にマークが居て、


「さあ、座って」


 マークが座り、


「一週間たったけどマークの気持ちは決まった?」

「ああ」

「妹や弟ともきちんと話し合って決めた?」

「ああ、妹と弟と一緒に決めた」

「なら聞かせて貰おうか」

「妹と弟と一緒に領地へ行きたい」

「分かった。前侯爵、よろしいですか?」

「ああ構わん」

「ではマーク、君達はキャメル侯爵家の領民になる。これからはキャメル侯爵家へ仕える事になる」

「よろしく頼みます」

「それならこれから君達の主はエミリーヌだ。エミリーヌ」

「ようこそキャメル侯爵家へ。私が現当主のエミリーヌよ?貴方達は私の庇護下に入って貰うわ。貴方達は私が護る、だから貴方達は領地を盛りたててね?」

「盛りたてる?」

「貴方達だけじゃないけど、領地に住まう領民が小麦を育ててくれるからキャメル侯爵家は成り立ってるの。そして私は大事な領民達が飢える事なく暮していける様に育ててくれた小麦を色々な人に売ってお金を稼いでいるの。そして得たお金を領民に返す。その為には小麦を育て収穫してくれないとお金にもならないわ? 領民が領地を盛りたててくれてるからキャメル侯爵家はこの国に無くてはならない家になったの。私達キャメル侯爵家は領民を家族だと思ってるの。マークもその一員になるのよ?家族を護る為に貴方達にも協力してほしいの」

「分かった」

「ガイン、ベンを呼んできて貰える?」

「はい、お嬢様」


 ガインはベンを呼びに部屋を出た。


コンコン

「ベンです」

「入って?」


 ベンが部屋に入って来て、


「ダンには私から手紙を書くけど、ベンにも伝えるわ」

「はい」

「マークとマークの妹さんと弟さんは私の護る領民になったの。ベンはいずれダンの跡をついで領地を任される立場になるわ、マークやごきょうだいをお願いね」

「分かりました」

「マーク、直ぐに領地へ行ってもいいし、もう少し後でもこちらは構わないわ。どうしたい?」

「直ぐに行ってもいいなら直ぐに行きたい」

「それは妹さんや弟さんも同じ意見かしら」

「それも話し合って決めた。早く行けるなら早く行こうって」

「分かったわ。こちらの手続きが終わり次第、領地へ向かって貰うわね」

「ああ」

「領地に着いたら先ずはダン、今領地を任せてる責任者ね?貴方達はダンに挨拶なさい。それからダンの指示に従って貰うわ、良いわね?」

「ああ」

「それなら先ずはベンに挨拶なさい」

「お願いします」

「こちらこそ。君達は私が領地まで送り届け、馴染むまでは私もいるから何でも聞いてくれて構わないからね?」

「ああ」

「ベン、お願いね?」

「分かりましたお嬢様」

「早くて二週間、遅くても一ヶ月後には領地へ向かって貰うわ。それまでに荷物をまとめて行ける準備だけはしておいてね?」

「分かった」

「ステラお祖母様の事、お願いね」

「本当に一緒に住んで良いのか?」

「まだ返事は来てないけど、きっとステラお祖母様なら快く迎えてくれるわ。もしステラお祖母様が嫌だと言った時には住む家は必ず用意するわ。それでも妹さんや弟さんの為にもステラお祖母様と暮らした方がいいの。まだ甘えたい弟さんは特にね。うんと甘えなさい。マークもよ?貴方は今迄頑張ってきたわ、もう大人を頼ってもいいの。ステラお祖母様が一緒に妹さんや弟さんを育ててくれるわ」

「……ああ」

「もう貴方一人で頑張らなくて良いの」

「……ああ」


 マークは妹さんや弟さんを育てないと、といつも肩肘張って頑張ってきた。だからこそステラお祖母様と暮らす意味がある。一緒に育ててくれる大人が側に居るという事がマークの背負うものを一緒に背負い、少しでも軽くなれば良いと願う。マークも本来なら大人に護られる一人なのだから。



 マークが出て行き、


「お祖父様、ステラお祖母様は断るでしょうか」

「嫌、婆さんは断らないと思う。なんだかんだ言っても婆さんは子供好きだからな。それにマークの今迄の状況を聞いたら私が面倒をみないとと張り切りそうだ。婆さんの張り切る姿が目に浮かぶ」

「そうですか、それなら大丈夫ですね。マークにももう肩の荷を下ろさせてあげたいですから。できれば年相応の少年になってくれる事を願います」

「そうだな」

「それにまだ甘えたい年頃でご両親を亡くした妹さんや弟さんに、甘えられる方が側にいると分かってほしいです」

「婆さんは厳しい人だが優しい人だ。上手く子供達と付き合ってくれるだろう」

「はい」


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