148 / 187
147
しおりを挟む
私とチャーリーは勉強がしたい子を呼び出し話を聞く事にした。
客間の一室、
コンコン
「お連れしました」
「入って」
ガインが男の子を連れて入って来た。そのままガインは部屋の中で待機している。
「さあ座って」
男の子はおずおずと椅子に座った。
チャーリーは優しく男の子に話しかけた。
「君は、ユナリーン孤児院の子だね」
「はい」
「名前は?」
「ユシュです」
「勉強がもっとしたいって書いてあったけど、どうしてかな?それに平民が通える学校は行ってないの?」
「それは…」
「責めてる訳じゃないよ。ユシュの本当の気持ちが知りたいんだ。それに聞いた事はここにいる3人と初めに話したお祖父さん、分かる?」
「はい」
「その人だけにしか教えない。そして俺達は誰にも言わない」
「はい」
「俺の孤児院は小さい子が多くてシスターだけでは手が回らない。それに勉強をする時間もない」
「それはどうして?」
「それは…」
「大丈夫。俺達を信じて」
「はい。それは、どうしても男手が必要な事、例えば水汲みや修理、幼い子達の面倒など年長者が見る事になってるからです」
「それは少なからず、どの孤児院でも当てはまるけど」
「年長者が俺しかいなくて。俺の下は12歳で女の子なので。力仕事をやらせる訳にもいかなくて」
「そうか。それは大変だね」
「俺も1年は学校に通えたんです。俺の上に何人か年長者がいたので」
「卒院してユシュがしないといけなくなった?」
「はい」
「学校は楽しかった?」
「馬鹿にされる事もあったけど勉強は楽しかった。毎日知らなかった事が分かって楽しかった」
「孤児院で本は読んでた?」
「寄付で貰った本を何度も読みました」
「本の世界は楽しかった?」
「はい。頭の中で物語の主人公になって冒険していくんです。想像するのは楽しい」
「もっと難しい本も読んでみたい?」
「読めるなら」
「ユシュは自分が何が足りないか分からないって書いたけど」
「勉強して何になりたいとかがないので」
「今はとりあえず知識を増やしたい?」
「はい」
「分かった。もう戻ってもいいよ」
ガインはユシュを連れて部屋を出て行った。
「チャーリー、何笑ってるの?」
「俺笑ってる?」
「ニヤニヤしてる」
「だってあの子伸びしろだらけだよ?」
「確かに話を聞いてるとしっかりと受け答えも出来てたわね」
「目を見て話してた」
「そうね」
「知識が入ったら何になりたいか目指すものが出来るよ。そしたら何が足りないかも自ずと分かる。そしてその為の努力も惜しまない。それに本の話の時のあの子見た?」
「楽しそうだったわね」
「ワクワクして目が輝いてた」
「でも勉強って一朝一夕で出来るものではないわ」
「そこはお義祖父様と相談だな」
「そうね」
「次はどの子にする?」
「チャーリーはどの子が気になるの?」
「絵を描きたい子かな?」
「どうして?」
「どれだけ絵が上手いか気になるから」
「絵ね…」
「感覚でいいんだよ。上手いか下手か」
「私、お父様が集めた絵画の良さが全く分からないの。下手な絵って思ってたのが凄く高かったり、街で見かけた上手って思ったのが安い物だったり…」
「それは…」
「はっきり言って、残念な目って」
「それも感性だよ」
「余計に惨めになるわ」
「ごめん」
「私にはふらないでね」
「分かった」
ガインが戻ってきたので、絵を描きたい子を連れて来て貰う事にした。その間軽食を軽くつまんだ。
コンコン
「お連れしました」
「入って」
ガインと男の子が入って来た。
「さぁ座って」
男の子が座り、チャーリーが話しかけた。
「君は絵を描きたいんだよね?」
「うん」
「今から描ける?」
「何を?」
「俺を」
「うん」
私は紙とペンを男の子に渡した。男の子は直ぐに描き始めた。
「描きながら答えれる?」
「多分」
「それなら答えれる事だけでいいよ」
「分かった」
「君はどこの孤児院で名前を教えて貰えるかな?」
「セイリーンでセナム」
「学校に行かなかったのはどうして?」
「絵を描いてたかったから」
「絵を描くのは好き?」
「うん」
「もし絵を描く仕事に就けないって言ったら?」
「そもそも思ってない」
「どう言う意味?」
「絵を描いて稼ごうなんて思ってない」
「でもなりたい職業なんだろ?」
「これは貴族様の道楽みたいなものだろ?俺達孤児院に施して楽しんでるだけだろ?」
「心外だな。俺達は君達孤児院育ちの子達の未来を真剣に考えてる。道楽で君達の未来を面倒見る事など出来ない。それに施しならお金を寄付すればそれですむ。俺達の気持ちを踏みにじるなら帰って貰うよ。本当に働きたい子達に手を貸したいからね」
「なら絵で食っていけるのか?俺の絵で食っていける訳ないだろ!働く場所もない、お金もない、俺はどうすればいいんだ!」
「その為の手助けだ」
「絵が上手く描けたらお金をくれるのか?」
「才能にもよるけど画家を目指すだけの才能があるなら留学して学校に入れる。その間のお金も俺達が全部出す」
「う、そ、だろ?」
「本当だよ。俺達は道楽じゃない。真剣に君達の将来を手助けしたいと思ってる」
「…………」
男の子は黙って黙々と描き始めた。 描きあがった絵を受け取り、男の子は部屋を出て行った。
客間の一室、
コンコン
「お連れしました」
「入って」
ガインが男の子を連れて入って来た。そのままガインは部屋の中で待機している。
「さあ座って」
男の子はおずおずと椅子に座った。
チャーリーは優しく男の子に話しかけた。
「君は、ユナリーン孤児院の子だね」
「はい」
「名前は?」
「ユシュです」
「勉強がもっとしたいって書いてあったけど、どうしてかな?それに平民が通える学校は行ってないの?」
「それは…」
「責めてる訳じゃないよ。ユシュの本当の気持ちが知りたいんだ。それに聞いた事はここにいる3人と初めに話したお祖父さん、分かる?」
「はい」
「その人だけにしか教えない。そして俺達は誰にも言わない」
「はい」
「俺の孤児院は小さい子が多くてシスターだけでは手が回らない。それに勉強をする時間もない」
「それはどうして?」
「それは…」
「大丈夫。俺達を信じて」
「はい。それは、どうしても男手が必要な事、例えば水汲みや修理、幼い子達の面倒など年長者が見る事になってるからです」
「それは少なからず、どの孤児院でも当てはまるけど」
「年長者が俺しかいなくて。俺の下は12歳で女の子なので。力仕事をやらせる訳にもいかなくて」
「そうか。それは大変だね」
「俺も1年は学校に通えたんです。俺の上に何人か年長者がいたので」
「卒院してユシュがしないといけなくなった?」
「はい」
「学校は楽しかった?」
「馬鹿にされる事もあったけど勉強は楽しかった。毎日知らなかった事が分かって楽しかった」
「孤児院で本は読んでた?」
「寄付で貰った本を何度も読みました」
「本の世界は楽しかった?」
「はい。頭の中で物語の主人公になって冒険していくんです。想像するのは楽しい」
「もっと難しい本も読んでみたい?」
「読めるなら」
「ユシュは自分が何が足りないか分からないって書いたけど」
「勉強して何になりたいとかがないので」
「今はとりあえず知識を増やしたい?」
「はい」
「分かった。もう戻ってもいいよ」
ガインはユシュを連れて部屋を出て行った。
「チャーリー、何笑ってるの?」
「俺笑ってる?」
「ニヤニヤしてる」
「だってあの子伸びしろだらけだよ?」
「確かに話を聞いてるとしっかりと受け答えも出来てたわね」
「目を見て話してた」
「そうね」
「知識が入ったら何になりたいか目指すものが出来るよ。そしたら何が足りないかも自ずと分かる。そしてその為の努力も惜しまない。それに本の話の時のあの子見た?」
「楽しそうだったわね」
「ワクワクして目が輝いてた」
「でも勉強って一朝一夕で出来るものではないわ」
「そこはお義祖父様と相談だな」
「そうね」
「次はどの子にする?」
「チャーリーはどの子が気になるの?」
「絵を描きたい子かな?」
「どうして?」
「どれだけ絵が上手いか気になるから」
「絵ね…」
「感覚でいいんだよ。上手いか下手か」
「私、お父様が集めた絵画の良さが全く分からないの。下手な絵って思ってたのが凄く高かったり、街で見かけた上手って思ったのが安い物だったり…」
「それは…」
「はっきり言って、残念な目って」
「それも感性だよ」
「余計に惨めになるわ」
「ごめん」
「私にはふらないでね」
「分かった」
ガインが戻ってきたので、絵を描きたい子を連れて来て貰う事にした。その間軽食を軽くつまんだ。
コンコン
「お連れしました」
「入って」
ガインと男の子が入って来た。
「さぁ座って」
男の子が座り、チャーリーが話しかけた。
「君は絵を描きたいんだよね?」
「うん」
「今から描ける?」
「何を?」
「俺を」
「うん」
私は紙とペンを男の子に渡した。男の子は直ぐに描き始めた。
「描きながら答えれる?」
「多分」
「それなら答えれる事だけでいいよ」
「分かった」
「君はどこの孤児院で名前を教えて貰えるかな?」
「セイリーンでセナム」
「学校に行かなかったのはどうして?」
「絵を描いてたかったから」
「絵を描くのは好き?」
「うん」
「もし絵を描く仕事に就けないって言ったら?」
「そもそも思ってない」
「どう言う意味?」
「絵を描いて稼ごうなんて思ってない」
「でもなりたい職業なんだろ?」
「これは貴族様の道楽みたいなものだろ?俺達孤児院に施して楽しんでるだけだろ?」
「心外だな。俺達は君達孤児院育ちの子達の未来を真剣に考えてる。道楽で君達の未来を面倒見る事など出来ない。それに施しならお金を寄付すればそれですむ。俺達の気持ちを踏みにじるなら帰って貰うよ。本当に働きたい子達に手を貸したいからね」
「なら絵で食っていけるのか?俺の絵で食っていける訳ないだろ!働く場所もない、お金もない、俺はどうすればいいんだ!」
「その為の手助けだ」
「絵が上手く描けたらお金をくれるのか?」
「才能にもよるけど画家を目指すだけの才能があるなら留学して学校に入れる。その間のお金も俺達が全部出す」
「う、そ、だろ?」
「本当だよ。俺達は道楽じゃない。真剣に君達の将来を手助けしたいと思ってる」
「…………」
男の子は黙って黙々と描き始めた。 描きあがった絵を受け取り、男の子は部屋を出て行った。
121
お気に入りに追加
2,394
あなたにおすすめの小説
妹に婚約者を奪われたけど、婚約者の兄に拾われて幸せになる
ワールド
恋愛
妹のリリアナは私より可愛い。それに才色兼備で姉である私は公爵家の中で落ちこぼれだった。
でも、愛する婚約者マルナールがいるからリリアナや家族からの視線に耐えられた。
しかし、ある日リリアナに婚約者を奪われてしまう。
「すまん、別れてくれ」
「私の方が好きなんですって? お姉さま」
「お前はもういらない」
様々な人からの裏切りと告白で私は公爵家を追放された。
それは終わりであり始まりだった。
路頭に迷っていると、とても爽やかな顔立ちをした公爵に。
「なんだ? この可愛い……女性は?」
私は拾われた。そして、ここから逆襲が始まった。
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました
ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。
このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。
そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。
ーーーー
若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。
作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。
完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。
第一章 無計画な婚約破棄
第二章 無計画な白い結婚
第三章 無計画な告白
第四章 無計画なプロポーズ
第五章 無計画な真実の愛
エピローグ
恋した殿下、あなたに捨てられることにします〜魔力を失ったのに、なかなか婚約解消にいきません〜
百門一新
恋愛
魔力量、国内第二位で王子様の婚約者になった私。けれど、恋をしたその人は、魔法を使う才能もなく幼い頃に大怪我をした私を認めておらず、――そして結婚できる年齢になった私を、運命はあざ笑うかのように、彼に相応しい可愛い伯爵令嬢を寄こした。想うことにも疲れ果てた私は、彼への想いを捨て、彼のいない国に嫁ぐべく。だから、この魔力を捨てます――。
※「小説家になろう」、「カクヨム」でも掲載
【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。
曽根原ツタ
恋愛
ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。
ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。
その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。
ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる