妹がいなくなった

アズやっこ

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 私とチャーリーは勉強がしたい子を呼び出し話を聞く事にした。


 客間の一室、

コンコン

「お連れしました」

「入って」


 ガインが男の子を連れて入って来た。そのままガインは部屋の中で待機している。


「さあ座って」


 男の子はおずおずと椅子に座った。

 チャーリーは優しく男の子に話しかけた。


「君は、ユナリーン孤児院の子だね」

「はい」

「名前は?」

「ユシュです」

「勉強がもっとしたいって書いてあったけど、どうしてかな?それに平民が通える学校は行ってないの?」

「それは…」

「責めてる訳じゃないよ。ユシュの本当の気持ちが知りたいんだ。それに聞いた事はここにいる3人と初めに話したお祖父さん、分かる?」

「はい」

「その人だけにしか教えない。そして俺達は誰にも言わない」

「はい」

「俺の孤児院は小さい子が多くてシスターだけでは手が回らない。それに勉強をする時間もない」

「それはどうして?」

「それは…」

「大丈夫。俺達を信じて」

「はい。それは、どうしても男手が必要な事、例えば水汲みや修理、幼い子達の面倒など年長者が見る事になってるからです」

「それは少なからず、どの孤児院でも当てはまるけど」

「年長者が俺しかいなくて。俺の下は12歳で女の子なので。力仕事をやらせる訳にもいかなくて」

「そうか。それは大変だね」

「俺も1年は学校に通えたんです。俺の上に何人か年長者がいたので」

「卒院してユシュがしないといけなくなった?」

「はい」

「学校は楽しかった?」

「馬鹿にされる事もあったけど勉強は楽しかった。毎日知らなかった事が分かって楽しかった」

「孤児院で本は読んでた?」

「寄付で貰った本を何度も読みました」

「本の世界は楽しかった?」

「はい。頭の中で物語の主人公になって冒険していくんです。想像するのは楽しい」

「もっと難しい本も読んでみたい?」

「読めるなら」

「ユシュは自分が何が足りないか分からないって書いたけど」

「勉強して何になりたいとかがないので」

「今はとりあえず知識を増やしたい?」

「はい」

「分かった。もう戻ってもいいよ」


 ガインはユシュを連れて部屋を出て行った。


「チャーリー、何笑ってるの?」

「俺笑ってる?」

「ニヤニヤしてる」

「だってあの子伸びしろだらけだよ?」

「確かに話を聞いてるとしっかりと受け答えも出来てたわね」

「目を見て話してた」

「そうね」

「知識が入ったら何になりたいか目指すものが出来るよ。そしたら何が足りないかも自ずと分かる。そしてその為の努力も惜しまない。それに本の話の時のあの子見た?」

「楽しそうだったわね」

「ワクワクして目が輝いてた」

「でも勉強って一朝一夕で出来るものではないわ」

「そこはお義祖父様と相談だな」

「そうね」

「次はどの子にする?」

「チャーリーはどの子が気になるの?」

「絵を描きたい子かな?」

「どうして?」

「どれだけ絵が上手いか気になるから」

「絵ね…」

「感覚でいいんだよ。上手いか下手か」

「私、お父様が集めた絵画の良さが全く分からないの。下手な絵って思ってたのが凄く高かったり、街で見かけた上手って思ったのが安い物だったり…」

「それは…」

「はっきり言って、残念な目って」

「それも感性だよ」

「余計に惨めになるわ」

「ごめん」

「私にはふらないでね」

「分かった」


 ガインが戻ってきたので、絵を描きたい子を連れて来て貰う事にした。その間軽食を軽くつまんだ。


コンコン

「お連れしました」

「入って」


 ガインと男の子が入って来た。


「さぁ座って」


 男の子が座り、チャーリーが話しかけた。


「君は絵を描きたいんだよね?」

「うん」

「今から描ける?」

「何を?」

「俺を」

「うん」


 私は紙とペンを男の子に渡した。男の子は直ぐに描き始めた。


「描きながら答えれる?」

「多分」

「それなら答えれる事だけでいいよ」

「分かった」

「君はどこの孤児院で名前を教えて貰えるかな?」

「セイリーンでセナム」

「学校に行かなかったのはどうして?」

「絵を描いてたかったから」

「絵を描くのは好き?」

「うん」

「もし絵を描く仕事に就けないって言ったら?」

「そもそも思ってない」

「どう言う意味?」

「絵を描いて稼ごうなんて思ってない」

「でもなりたい職業なんだろ?」

「これは貴族様の道楽みたいなものだろ?俺達孤児院に施して楽しんでるだけだろ?」

「心外だな。俺達は君達孤児院育ちの子達の未来を真剣に考えてる。道楽で君達の未来を面倒見る事など出来ない。それに施しならお金を寄付すればそれですむ。俺達の気持ちを踏みにじるなら帰って貰うよ。本当に働きたい子達に手を貸したいからね」

「なら絵で食っていけるのか?俺の絵で食っていける訳ないだろ!働く場所もない、お金もない、俺はどうすればいいんだ!」

「その為の手助けだ」

「絵が上手く描けたらお金をくれるのか?」

「才能にもよるけど画家を目指すだけの才能があるなら留学して学校に入れる。その間のお金も俺達が全部出す」

「う、そ、だろ?」

「本当だよ。俺達は道楽じゃない。真剣に君達の将来を手助けしたいと思ってる」

「…………」


 男の子は黙って黙々と描き始めた。 描きあがった絵を受け取り、男の子は部屋を出て行った。


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