妹がいなくなった

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　メイが呼びに来て私達は食堂へ向かった。１９人の子供達が座っている。皆キョロキョロと落ち着かない様子だけど…。

　子供達の前には紙とペンが置いてあり、お祖父様が子供達に声をかけた。


「今から目の前の紙にこちらが聞く事を書いてほしい。書けないなら書かなくても良い。ただし嘘だけは書かない事。良いか？」


　子供達は頷いていた。


「では始めるぞ。

１、自分の名前。
２、就きたい職業。
３、その理由。
４、就きたい職業に就くには自分は何が足りないか。
５、給金を貰ったら何に使いたいか。

書ける所だけで良いぞ。ただし嘘は書いては駄目だ。君達は今年孤児院を卒院しないといけない。何も出来ないと諦めるのはまだ早い。君達の手助けをする為にここにいる者達が集まっている。本気の気持ちには本気の思いで我々は君達に接しよう。だが嘘の気持ちには我々は手助けする気はない。勝手に生きていけば良い。それからやる気のない者は帰りなさい。馬車で送る。だが今後一切手助けはしない。　分かったら始めなさい」


　子供達は回りを見ながらそれぞれペンを取り書き始めた。私達は口を出さずに見守った。昨日お祖父様から口を出さない様にと言われたから。　何か聞きたそうな子もいたけど何も言わず見守った。

　お祖父様に昨日聞いた話では、この５つの項目はそれぞれ意味を持つ。

１、自分の名前がかけるかどうか。孤児院で名前と綴りを書いた紙を迎えに行った時にシスターから預かった。自分の名前の綴りが書けないと言う事は文字が書けないと言う事。

２、自分が何をやりたいか。働く気があるのか。

３、理由がはっきりしていると覚える気がありのみこむのも早いから。

４、自分に足りない物があると気付く子は頭が賢い子が多い。自分を客観的に見れて分析してるから。

５、買いたい物が具体的なら買うにはどうしたら良いか導く事が出来るから。



　私がこの子達の歳の時に同じ事を聞かれても分からないと思う。今も分からないかも…。

　自分の名前は書けるわね、それは完璧よ。時期当主としていずれキャメル侯爵家当主になるって幼い頃から教えられてきたからなりたいとかは思った事が無かったけど…。なるのが当たり前？そんな感じよね。当主になる為の勉強も、お父様があれだったから侯爵家や領民を護る為にも必然的にやらないとって思ってたから、分からない所は教えられながらも私なりにやってきたわ。キャメル侯爵家として得たお金はお父様やお母様、サラが使う物だったから…。これからは私も何か買っても良いのかしら。もし買って良いって聞かれたらチャーリーと住む離れと家具を買うのに使っても良いのかな…。チャーリーは俺が出すって言ってたけど、我が家に婿に来てくれるなら私が準備するべきよね？後でお祖父様に許可を貰わないと！



　私が色々考えてる間に皆書き終わったみたいね。


「皆書き終わったか？」


　頷く子供達。


「それなら今から昼食にしよう」


　メイドが次々に子供達の前にサンドイッチと飲み物、果物を用意し、子供達は食べ始めた。

　私達は一度食堂から書斎へ移った。食堂にはメイドの他に騎士も一人付いた。



　書斎に移り、


「皆も見てほしい」


　と、子供達が書いた紙を見た。


　騎士になりたい子、料理人になりたい子、もっと勉強をしたい子、商会で働きたい子、服屋で働きたい子、針子になりたい子、メイドになりたい子、どこでも良いから働きたい子、絵をかきたい子、職人になりたい子、それから貴族の愛人になりたい子…。


「これは…」

「どうした？」

「チャーリー見て」

「愛人か…」

「愛人は職業なの？」

「職業と見てるって事なんだと思うよ」

「そう…」


　貴族の愛人になれば働かず暮らしていける。子供が出来れば子供が巣立つまで少なからず生活の補償もして貰えるけど…。愛人だって若い頃は良いけど歳をとったら？自分で働き稼ぐ事を覚えないと一生誰かに寄生しながら生きていくの？


「俺は勉強をしたい子が気になるな」

「勉強をしたい子？」

「何を勉強したいのか聞いてみたい。ただ自分に何が足りないか分からないみたいだ」

「そうね」

「それでも何が足りないか分からないと素直に書いた事を俺は褒めたいな」

「確かに」

「分からないと認められる強さを持ってる」

「本当に分からないだけだったら？」

「強さを持たない子はいい事を書くよ。自分の非を認めたくないからね。出来ないは恥だ。それを恥と思わず認め教えを乞う気持ちが大事なんだよ」

「確かに」

「俺は一度話してみたい」

「そうね」

「後は商会で働きたい子だけど、もっと具体的に書いてほしかったな」

「そうね。商会って幅広すぎて何をしたいか分からないわ。お針子だって商会で働いてるし職人だってそうよ？何の職人になりたいか分からないけど」

「こうやって書いて貰うと気になる所が分かって良いよね。早速隣国でも取り入れようかな」

「ふふっ」

「何？」

「チャーリーは忙しそうね」

「何が」

「この国と隣国と両方の孤児院の子達の事を考えなくてはいけないもの」

「隣国はもう俺は手を引いてるよ。任せれるだけの人材も育ててきた。だけど良い事はどんどん取り入れていくべきだと思うよ」

「そうね」