妹がいなくなった

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　チャーリーが戻ってくるまで話を進める事になった。


「子供達に就きたい職があるならそれを教えれば良いのだがな」

「お祖父様、ですが必ずしも就きたい職につけるかは分かりませんよ？」

「そうだな。就きたい職の能力が無ければ結果的に働く事を辞めてしまう」

「はい」

「だが、能力が無いと自分で認めなければ同じ事の繰り返しだ」

「はい」

「だからこそ就きたい職を教え、諦めさせなければならない」

「はい」

「例えばだ、メイドにはなれないが街の食堂で働く事は出来る」

「同じの様で違う、と言う事ですか？」

「そうだ。　観劇で言えば、メイドは主人公を裏方で助ける者で、街の食堂で働く者は舞台上の脇役だ。見る人に楽しんで貰いたいと思う気持ちは同じだが役割は違う」

「そうですね」

「メイドにはなれないが街の食堂で働く事は出来ても、メイドになりたいと諦めきれないと食堂で働いても、食堂の良さを見ようともせずメイドになりたいと執着する。だが紹介状もない平民を雇う貴族はいない。メイドの基礎も心得もない者が続けられる程メイドは甘くない」

「確かにそうですね」

「己の能力の現実を認めれるかもこれから先を思えば大事な事だ」

「はい」

「騎士やメイド、頭が賢い子なら勉学を教える事も出来る。手先の器用な子なら針子として教えれば良い。だが画家を目指したい子や職人になりたい子には我々では教える事は出来ない。そこをどうするかもこれから考えなくてはならない」

「はい」

「先ずは子供達の就きたい職を知ってからだ」

「そうですね」

「今から決める事は騎士やメイド、勉学を誰が教えるかだが、騎士はグレン頼めるか」

「俺一人では無理だな」

「邸の騎士を使っても構わん」

「それならまあ大丈夫だ」

「メイドはアイリーン譲のメイドとメイ、頼めるか」

「大旦那様、私はお嬢様のメイドですので、お嬢様に迷惑がかからない程度で良ければ」

「構わん」

「それなら大丈夫です」

「私のメイドも大丈夫です」

「アイリーン譲のメイドも良いか？」

「はい」

「勉学は儂も教える。ガイン、ベンも良いな？」

「「はい」」

「ジムは今迄通りエミリーに付いてくれ」

「畏まりました」

「ヘレンは調子の良い時で構わんからな」

「私は卒院する子達より今居る子達に本の読み聞かせや簡単な文字書きを教えたいのですが」

「儂と一緒でなければ許可できん」

「分かってますわ」

「なら構わん」

「お祖父様、お針子はチャーリーに頼んでミリー商会のお針子さん達にお願いしませんか？」

「そうだな」

「前侯爵様、私も勉学を教えます。刺繍も教える事ができますわ」

「アイリーン譲頼めるか」

「はい、お任せ下さい」

「後は陛下待ちだな」


　暫しの間、皆くつろいでいた。私はその間に執務室へジムと行き、久しぶりに書類を確認する。


「お祖父様に任せきりにしてしまったわ」

「大旦那様も喜んでおやりになっていました」

「ふふっ、お祖父様らしいわ」

「はい」

「公爵家の視察はどうなってる？」

「こちらに纏めてあります」


　私は書類を貰い中身を確認する。


「準備は順調のようね」

「はい」

「多分…絶対に陛下が視察に来るって言ってくるわね」

「打診はありましたので」


　と、ジムに書類を渡された。


「これ、打診と言うより決定事項よね？」

「その様です」

「ダンは何て？」

「陛下にお泊り頂く部屋をどの様にするか返答が欲しいそうです」

「やっぱり泊まり？」

「はい。一週間は泊まりたいと」

「一週間も？」

「その様です。どうなさいますか？」

「お父様達の部屋が一番豪華よね？あの部屋に手を加えれば良いわよね？」

「その様に伝えます。後、サフェム殿の邸にも滞在したいそうですが」

「それは…無理じゃない？」

「警備の問題ですか？」

「警備は陛下付の騎士が居るから良いとしても、あの子達が陛下と一緒なんて恐縮すると思うの」

「平民ですからね」

「そう。それに食事だって質素なものよ？」

「邸の料理人に運ばせますか？」

「騎士達の食事もあるしサフェム様の邸に料理人を滞在させる方がいいと思うわ。こっちの料理人も連れて行くしかないわね」

「分かりました。大旦那様と大奥様の食事はエイミーに任せましょう。大旦那様の邸でも作っていたそうですので」

「エイミーに？」

「はい」

「エイミーはいつこっちに来るの？」

「あちらの邸が片付き次第こちらに参ります」

「そう。ジムもようやくエイミーと一緒に暮らせるわね？」

「我々はキャメル侯爵家に仕える者ですので、一緒に暮らしていなくても心は同じです。キャメル侯爵家を支えたいと心から願い、主人を助けたいと望んでおります」

「ありがとう。助けて貰ってるわ」

「ではダンには連絡をしておきます」

「お願いね」

「はい」

「後、ガインとベンの部屋の用意もお願いね？」

「手配済です」

「そう、なら良かった」

「お嬢様」

「なに？」

「チャーリー殿の部屋はどうされますか？」

「改装するって話？」

「はい」

「手配しておいてくれない？」

「直ぐに始めます」

「お願いね」