妹がいなくなった

アズやっこ

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コンコン


「爺さん入るぞ」

「グレン!」

「エミー!」


 私はグレンに抱きついた。グレンも私を抱き締めてくれて、


「エミー、元気だったか?」

「うん」

「顔を見せてくれ」


 私は顔を上げた。


「顔色が良いな」

「うん」

「チャーリーの家は楽しかったか?」

「うん。皆優しかった」

「そうか。もう帰って来たのか?」

「うん」

「これからは爺さんも婆さんも一緒だ」

「うん」

「沢山甘えろ」

「うん」

「今迄辛かった分、これからは幸せになれ」

「分かってる」

「俺も居るしな」

「グレンは私を護る騎士でしょ?それにお兄様でしょ?」

「そうだな」

「ならこれからも側に居てくれないと。それにこれからは忙しくなるわよ?」

「エミーの人使いの荒さは爺さん譲りだな」

「何で?」

「爺さんが邸に住む様になって俺は爺さんの小間使いだ」

「ふふっ、そう」

「これからは爺さんとエミーにこき使われるのか」

「そうね」

「そろそろ離して下さい」

「チャーリーは相変わらずだな」

「二人が仲良すぎて俺は嫉妬しますよ」

「俺はエミーの兄だからな。エミーの伴侶はお前に譲っただろ?」

「兄役も譲って貰って構いませんが」

「それは出来ないな。俺はエミーの赤ん坊の頃からの付き合いだ。エミーのおしめも替えたしな」

「え?」

「なあ、婆さん、そうだよな?」

「ふふっ、そうね」

「赤ん坊のエミーを妹として接してきた。今更兄役を譲れるか」

「赤ん坊のエミリーはグレンに凄く懐いていたわね。それにグレンもエミリーの面倒を進んで見てくれたわ。おしめもそうだけど遊び相手にもなってくれたわね」

「な? 今更譲れねえな。お前には伴侶になる許可を出しただろ?」

「そうですが。それでもエリーは離して下さい。俺のエリーです」


 チャーリーは私の腰を持ち、私を自分の方へ引き寄せた。そのままチャーリーに抱き締められ、


「本当に仲良すぎ…」

「それは仕方ないわよ」

「分かってる。でも、嫉妬も仕方ない」

「ふふっ、そうね。そんなチャーリーも好きよ」

「俺は大好きだ」

「なら愛しいわ」

「俺は愛してる」

「私もよ」

「エリー」


 私達は見つめ合った。チャーリーの優しい手が頬を撫でる。私はその手に頬を擦り寄せる。


「おい、あのさ、二人の世界に入ってる所悪いけど、今の状況分かってるよな?」

「「あっ!」」


 私達は真っ赤な顔を俯けた。


「おい、ヘレン、儂は何を見せられているのだろうな」

「ふふっ、よろしいではありませんか。仲が良いなら」

「それもそうだが。それなら儂もヘレンを独占するとしよう」


 お祖父様はお祖母様を膝の上に座らせ、後ろから抱き締めている。お祖母様はお祖父様の頬を撫でている。


「爺さんと婆さんまでか…まあ、いいや。それより連れて来たぞ」

「入ってこい」

「「大旦那様、大奥様」」

「お前等驚かないのか?」

「兄さん、大旦那様の膝の上は大奥様の定位置だよ?今更驚かないよ。それにまだ口付けが始まってないだけましだよ?」

「は?」

「口付けが始まると俺達なんて壁紙と一緒だよ。居ても居なくても関係ない」

「お前等も大変だな」


 グレンを兄さんと呼ぶって事はジムの息子さんなのね、きっと…。


「エミリーヌお嬢様、お初ではありませんが、お初にお目にかかります」

「お初ではないの?」

「私もこの邸で育ちましたので」

「あっ、そうよね」

「お嬢様は兄上しかお側に置きませんでしたから」

「それはお前も幼児だったからだろ?」

「そうですね。私もお嬢様も幼児でした」

「そう」

「私はジムの息子のガインと申します。お嬢様の執事が務まるよう、これから精進致します」

「お願いね」

「はい。よろしいお願い致します」

「お嬢様、お初にお目にかかります。私はダンの息子のベンと申します。父上の跡を継ぎお嬢様の代わりに領地をお護りする所存です」

「お願いね」

「はい。よろしくお願い致します」

「早速だけど、ガインとベンには手伝って貰いたい事があるの。いいかしら」

「「はい」」


コンコン

「大旦那様、入ります」

「ジムか、入れ」


 ジムは一度お祖父様とお祖母様を見て、見て見ぬ振りをした。流石ね。


「こちらをご用意致しました」


 ジムは手に書類を持っていた。


「ジム、メイは?」

「今、お茶のご用意をしております」

「なら、配り終わったら一緒に聞いて欲しいの。ジムもよ?」

「分かりました」

「あ、グレンもね」

「俺も?」

「そうよ」

「分かったよ」


 私は部屋を見渡し、


「グレン、椅子が足りないわ。持ってきて」

「早速こき使いやがって。お前等も手伝え」


 グレンはガインとベンを連れて椅子を取りに行った。


「グレンさんは分かるけどメイさんも?」

「メイドとして意見を聞きたいの」

「あぁ、そうだね」

「メイドとして何が必要かは私には分からないもの」

「アイリーン様も言ってたしね」

「なるべくなりたい職種に付かせてあげたくても、出来ないものはあるわ。貴族になりたいと言ってもなれないもの。それに執事も無理よ?」

「執事は血縁を大事にするからね」

「そうね。ガインはグレンの知らない事も知らされてると思うわ」

「だと思うよ」


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