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朝食を食べた後、ローラ母様とお別れをして、チャーリーに送って貰ってキャメル侯爵家へ帰ってきた。
「お嬢様!」
「メイ」
私はメイに抱き付いた。
「エミリーヌお嬢様、よくお戻りになられました」
「ただいま戻りました。ジムには迷惑かけてしまったわ」
「いえ、お嬢様の元気なお姿が見れただけで」
「何か変わった事は無かった?」
「大旦那様がお嬢様の代わりにおやりになられてましたので」
「お祖父様にも迷惑をかけてしまったわ」
「お嬢様、大旦那様がお待ちです」
「お祖父様が?どこ?」
「書斎でお待ちです」
私はチャーリーと一緒に書斎へ向かった。
コンコン
「お祖父様、エミリーヌです」
「入りなさい」
私とチャーリーは書斎へ入った。お祖父様とお祖母様まで居た。
「お祖母様~」
私はお祖母様に抱き付いた。
「エミリー、私の可愛いエミリー、顔を見せてちょうだい?」
私はお祖母様に抱き付いたまま顔を上げた。
「こんなに大きくなったのね。ごめんなさいね、エミリーを一人残して邸を出てしまって…」
「お祖母様…」
「これからはずっと一緒よ。可愛いエミリー」
「え?」
私はお祖父様の方を見た。
「エミリー、これからは儂とヘレンがエミリーと一緒に住む」
「お祖父様本当ですか?」
「ああ」
「お祖母様も?」
「そうよ」
「嬉しい」
「エミリー、今迄寂しい思いをさせてごめんなさいね。これからはずっと一緒よ?」
「お祖母様」
「愛しいエミリー、愛してるわ」
「お祖母様、私もお祖母様大好き」
お祖母様は私の髪を優しく撫でている。
チャーリーはそんな私達を優しい眼差しで見つめている。
「お祖母様、私、愛する人が出来たの。お祖母様にも紹介しても良い?」
「紹介してくれるの?」
私はお祖母様から離れ、チャーリーの手を引いてお祖母様の前に来た。
「お祖母様、私の愛する人よ」
「お初にお目にかかります。ブラウニー侯爵家嫡男チャーリーと申します」
チャーリーは深々と頭を下げた。
「はじめまして、エミリーヌの祖母のヘレンと申します。エミリーヌの事、お願い致しますね」
「はい、勿論です」
「ふふっ、そう、エミリーも愛しい殿方を見つけたのね」
「前侯爵にはお伝えしてありますが、私は嫡男と言っても父上の跡は継ぎません。エミリーヌの元へ婿に入る予定です」
「まあ」
「私は一度勘当された身ですので」
「それでも貴方は貴方よ?今がどうとか、過去がどうとか、何も関係ないわ。貴方はチャーリー君でしょ?」
「はい」
「エミリーヌをよろしくお願い致しますね」
「はい」
「貴方が跡を継がないなんて、宰相様は嘆かれたのではないの?」
「父上も私はいない者と思っていますから。勘当し国外追放された時に息子はいないと。ブラウニー侯爵家を継ぐのは私とエミリーヌの子でも構いません」
「そう」
「夫人、もうお身体は、その、大丈夫なのですか?」
「ええ、今はもう落ち着いたわ」
「お祖母様、本当?」
「ええ」
「良かった~」
「チャーリー君も居る事だ、儂も君に聞きたい事がある」
「はい」
私達はソファーに座り、
「愚息の事はヘレンには伝えてある」
「お祖母様、申し訳ありません」
「エミリー、良いのよ。あの子がした事は人の道に反する事なの。こんな可愛い子を蔑ろにして、虐げていたのだから…。私が体調を崩さず邸を出なければ、エミリーは幸せになれたのに…私さえ…」
「お祖母様のせいではありません。私が、私さえ目を瞑っていれば…」
「ヘレン、彼奴は性根が腐っとる。ヘレンのせいではない。それにだ、エミリーのせいでもない」
「お祖父様…」
「エミリーを護れなかった儂の責任だ。エミリーだけでも儂が育てれば良かったのだ。彼奴に任せた私の責任だ」
「お祖父様のせいではありません。私が悪いのです」
「ハハハッ」
「チャーリー?」
「三人共、自分が悪いと言ってますが、誰も悪くありません。誰が悪いと言うのなら彼等です。彼等の自己責任です。どんな理由があろうとも産まれてきた子を愛せなかった彼等です。
どんな育て方をしても、どんな教育をしても、結局は受け取る方の心次第です。 夫人が愛情を注いで育てても、前侯爵が知識を教えても、受け取る息子の心次第です。
私も一人息子なので分かります。母上から惜しみない愛情を注がれました。父上からは厳しく教えられました。一人息子だと親の期待に答えたいと思います。自分しかいないのだからと。 ですが、自分の努力ではどうしようもない事は必ずあります。それを認める心があるかないかです。見栄を張り出来なくても出来ると言って虚勢をはるのは心の弱さです。 出来ない、分からないとは恥です。己の頭の悪さを自分で晒してる訳なのですから。 ですが、出来ない、分からないと認める心の強さがあれば恥ではありません。分からないなら教えを乞えば良い、出来ないのなら出来るまでやれば良い。 自分を認める心次第で人は変われます。
息子さんは心が弱かった、ただそれだけです。
それに、三人共似ていて驚きました。三人共、深い情をお持ちだ。やはり血ですね、ハハハッ」
「チャーリー?」
「だって皆、自分が全てを被れば良いと思ってる。自分の事より人の幸せばかりを望んでる。普通は自分が一番可愛い、先ずは自分の幸せを望むだろ? 自分が幸せで、それから他人の幸せを望むんだと思うよ?それが家族でもね」
「お嬢様!」
「メイ」
私はメイに抱き付いた。
「エミリーヌお嬢様、よくお戻りになられました」
「ただいま戻りました。ジムには迷惑かけてしまったわ」
「いえ、お嬢様の元気なお姿が見れただけで」
「何か変わった事は無かった?」
「大旦那様がお嬢様の代わりにおやりになられてましたので」
「お祖父様にも迷惑をかけてしまったわ」
「お嬢様、大旦那様がお待ちです」
「お祖父様が?どこ?」
「書斎でお待ちです」
私はチャーリーと一緒に書斎へ向かった。
コンコン
「お祖父様、エミリーヌです」
「入りなさい」
私とチャーリーは書斎へ入った。お祖父様とお祖母様まで居た。
「お祖母様~」
私はお祖母様に抱き付いた。
「エミリー、私の可愛いエミリー、顔を見せてちょうだい?」
私はお祖母様に抱き付いたまま顔を上げた。
「こんなに大きくなったのね。ごめんなさいね、エミリーを一人残して邸を出てしまって…」
「お祖母様…」
「これからはずっと一緒よ。可愛いエミリー」
「え?」
私はお祖父様の方を見た。
「エミリー、これからは儂とヘレンがエミリーと一緒に住む」
「お祖父様本当ですか?」
「ああ」
「お祖母様も?」
「そうよ」
「嬉しい」
「エミリー、今迄寂しい思いをさせてごめんなさいね。これからはずっと一緒よ?」
「お祖母様」
「愛しいエミリー、愛してるわ」
「お祖母様、私もお祖母様大好き」
お祖母様は私の髪を優しく撫でている。
チャーリーはそんな私達を優しい眼差しで見つめている。
「お祖母様、私、愛する人が出来たの。お祖母様にも紹介しても良い?」
「紹介してくれるの?」
私はお祖母様から離れ、チャーリーの手を引いてお祖母様の前に来た。
「お祖母様、私の愛する人よ」
「お初にお目にかかります。ブラウニー侯爵家嫡男チャーリーと申します」
チャーリーは深々と頭を下げた。
「はじめまして、エミリーヌの祖母のヘレンと申します。エミリーヌの事、お願い致しますね」
「はい、勿論です」
「ふふっ、そう、エミリーも愛しい殿方を見つけたのね」
「前侯爵にはお伝えしてありますが、私は嫡男と言っても父上の跡は継ぎません。エミリーヌの元へ婿に入る予定です」
「まあ」
「私は一度勘当された身ですので」
「それでも貴方は貴方よ?今がどうとか、過去がどうとか、何も関係ないわ。貴方はチャーリー君でしょ?」
「はい」
「エミリーヌをよろしくお願い致しますね」
「はい」
「貴方が跡を継がないなんて、宰相様は嘆かれたのではないの?」
「父上も私はいない者と思っていますから。勘当し国外追放された時に息子はいないと。ブラウニー侯爵家を継ぐのは私とエミリーヌの子でも構いません」
「そう」
「夫人、もうお身体は、その、大丈夫なのですか?」
「ええ、今はもう落ち着いたわ」
「お祖母様、本当?」
「ええ」
「良かった~」
「チャーリー君も居る事だ、儂も君に聞きたい事がある」
「はい」
私達はソファーに座り、
「愚息の事はヘレンには伝えてある」
「お祖母様、申し訳ありません」
「エミリー、良いのよ。あの子がした事は人の道に反する事なの。こんな可愛い子を蔑ろにして、虐げていたのだから…。私が体調を崩さず邸を出なければ、エミリーは幸せになれたのに…私さえ…」
「お祖母様のせいではありません。私が、私さえ目を瞑っていれば…」
「ヘレン、彼奴は性根が腐っとる。ヘレンのせいではない。それにだ、エミリーのせいでもない」
「お祖父様…」
「エミリーを護れなかった儂の責任だ。エミリーだけでも儂が育てれば良かったのだ。彼奴に任せた私の責任だ」
「お祖父様のせいではありません。私が悪いのです」
「ハハハッ」
「チャーリー?」
「三人共、自分が悪いと言ってますが、誰も悪くありません。誰が悪いと言うのなら彼等です。彼等の自己責任です。どんな理由があろうとも産まれてきた子を愛せなかった彼等です。
どんな育て方をしても、どんな教育をしても、結局は受け取る方の心次第です。 夫人が愛情を注いで育てても、前侯爵が知識を教えても、受け取る息子の心次第です。
私も一人息子なので分かります。母上から惜しみない愛情を注がれました。父上からは厳しく教えられました。一人息子だと親の期待に答えたいと思います。自分しかいないのだからと。 ですが、自分の努力ではどうしようもない事は必ずあります。それを認める心があるかないかです。見栄を張り出来なくても出来ると言って虚勢をはるのは心の弱さです。 出来ない、分からないとは恥です。己の頭の悪さを自分で晒してる訳なのですから。 ですが、出来ない、分からないと認める心の強さがあれば恥ではありません。分からないなら教えを乞えば良い、出来ないのなら出来るまでやれば良い。 自分を認める心次第で人は変われます。
息子さんは心が弱かった、ただそれだけです。
それに、三人共似ていて驚きました。三人共、深い情をお持ちだ。やはり血ですね、ハハハッ」
「チャーリー?」
「だって皆、自分が全てを被れば良いと思ってる。自分の事より人の幸せばかりを望んでる。普通は自分が一番可愛い、先ずは自分の幸せを望むだろ? 自分が幸せで、それから他人の幸せを望むんだと思うよ?それが家族でもね」
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