妹がいなくなった

アズやっこ

文字の大きさ
上 下
140 / 187

139

しおりを挟む
 朝食を食べた後、ローラ母様とお別れをして、チャーリーに送って貰ってキャメル侯爵家へ帰ってきた。


「お嬢様!」

「メイ」


 私はメイに抱き付いた。


「エミリーヌお嬢様、よくお戻りになられました」

「ただいま戻りました。ジムには迷惑かけてしまったわ」

「いえ、お嬢様の元気なお姿が見れただけで」

「何か変わった事は無かった?」

「大旦那様がお嬢様の代わりにおやりになられてましたので」

「お祖父様にも迷惑をかけてしまったわ」

「お嬢様、大旦那様がお待ちです」

「お祖父様が?どこ?」

「書斎でお待ちです」


 私はチャーリーと一緒に書斎へ向かった。


コンコン

「お祖父様、エミリーヌです」

「入りなさい」


 私とチャーリーは書斎へ入った。お祖父様とお祖母様まで居た。


「お祖母様~」


 私はお祖母様に抱き付いた。


「エミリー、私の可愛いエミリー、顔を見せてちょうだい?」


 私はお祖母様に抱き付いたまま顔を上げた。


「こんなに大きくなったのね。ごめんなさいね、エミリーを一人残して邸を出てしまって…」

「お祖母様…」

「これからはずっと一緒よ。可愛いエミリー」

「え?」


 私はお祖父様の方を見た。


「エミリー、これからは儂とヘレンがエミリーと一緒に住む」

「お祖父様本当ですか?」

「ああ」

「お祖母様も?」

「そうよ」

「嬉しい」

「エミリー、今迄寂しい思いをさせてごめんなさいね。これからはずっと一緒よ?」

「お祖母様」

「愛しいエミリー、愛してるわ」

「お祖母様、私もお祖母様大好き」


 お祖母様は私の髪を優しく撫でている。

 チャーリーはそんな私達を優しい眼差しで見つめている。


「お祖母様、私、愛する人が出来たの。お祖母様にも紹介しても良い?」

「紹介してくれるの?」


 私はお祖母様から離れ、チャーリーの手を引いてお祖母様の前に来た。


「お祖母様、私の愛する人よ」

「お初にお目にかかります。ブラウニー侯爵家嫡男チャーリーと申します」


 チャーリーは深々と頭を下げた。


「はじめまして、エミリーヌの祖母のヘレンと申します。エミリーヌの事、お願い致しますね」

「はい、勿論です」

「ふふっ、そう、エミリーも愛しい殿方を見つけたのね」

「前侯爵にはお伝えしてありますが、私は嫡男と言っても父上の跡は継ぎません。エミリーヌの元へ婿に入る予定です」

「まあ」

「私は一度勘当された身ですので」

「それでも貴方は貴方よ?今がどうとか、過去がどうとか、何も関係ないわ。貴方はチャーリー君でしょ?」

「はい」

「エミリーヌをよろしくお願い致しますね」

「はい」

「貴方が跡を継がないなんて、宰相様は嘆かれたのではないの?」

「父上も私はいない者と思っていますから。勘当し国外追放された時に息子はいないと。ブラウニー侯爵家を継ぐのは私とエミリーヌの子でも構いません」

「そう」

「夫人、もうお身体は、その、大丈夫なのですか?」

「ええ、今はもう落ち着いたわ」

「お祖母様、本当?」

「ええ」

「良かった~」

「チャーリー君も居る事だ、儂も君に聞きたい事がある」

「はい」


 私達はソファーに座り、


「愚息の事はヘレンには伝えてある」

「お祖母様、申し訳ありません」

「エミリー、良いのよ。あの子がした事は人の道に反する事なの。こんな可愛い子を蔑ろにして、虐げていたのだから…。私が体調を崩さず邸を出なければ、エミリーは幸せになれたのに…私さえ…」

「お祖母様のせいではありません。私が、私さえ目を瞑っていれば…」

「ヘレン、彼奴は性根が腐っとる。ヘレンのせいではない。それにだ、エミリーのせいでもない」

「お祖父様…」

「エミリーを護れなかった儂の責任だ。エミリーだけでも儂が育てれば良かったのだ。彼奴に任せた私の責任だ」

「お祖父様のせいではありません。私が悪いのです」

「ハハハッ」

「チャーリー?」

「三人共、自分が悪いと言ってますが、誰も悪くありません。誰が悪いと言うのなら彼等です。彼等の自己責任です。どんな理由があろうとも産まれてきた子を愛せなかった彼等です。

どんな育て方をしても、どんな教育をしても、結局は受け取る方の心次第です。 夫人が愛情を注いで育てても、前侯爵が知識を教えても、受け取る息子の心次第です。

私も一人息子なので分かります。母上から惜しみない愛情を注がれました。父上からは厳しく教えられました。一人息子だと親の期待に答えたいと思います。自分しかいないのだからと。 ですが、自分の努力ではどうしようもない事は必ずあります。それを認める心があるかないかです。見栄を張り出来なくても出来ると言って虚勢をはるのは心の弱さです。 出来ない、分からないとは恥です。己の頭の悪さを自分で晒してる訳なのですから。 ですが、出来ない、分からないと認める心の強さがあれば恥ではありません。分からないなら教えを乞えば良い、出来ないのなら出来るまでやれば良い。 自分を認める心次第で人は変われます。

息子さんは心が弱かった、ただそれだけです。

それに、三人共似ていて驚きました。三人共、深い情をお持ちだ。やはり血ですね、ハハハッ」

「チャーリー?」

「だって皆、自分が全てを被れば良いと思ってる。自分の事より人の幸せばかりを望んでる。普通は自分が一番可愛い、先ずは自分の幸せを望むだろ? 自分が幸せで、それから他人の幸せを望むんだと思うよ?それが家族でもね」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】恋は、終わったのです

楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。 今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。 『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』 身長を追い越してしまった時からだろうか。  それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。 あるいは――あの子に出会った時からだろうか。 ――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。

【完結】お世話になりました

こな
恋愛
わたしがいなくなっても、きっとあなたは気付きもしないでしょう。 ✴︎書き上げ済み。 お話が合わない場合は静かに閉じてください。

【完結】で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?

Debby
恋愛
キャナリィ・ウィスタリア侯爵令嬢とクラレット・メイズ伯爵令嬢は困惑していた。 最近何故か良く目にする平民の生徒──エボニーがいる。 とても可愛らしい女子生徒であるが視界の隅をウロウロしていたりジッと見られたりするため嫌でも目に入る。立場的に視線を集めることも多いため、わざわざ声をかけることでも無いと放置していた。 クラレットから自分に任せて欲しいと言われたことも理由のひとつだ。 しかし一度だけ声をかけたことを皮切りに身に覚えの無い噂が学園内を駆け巡る。 次期フロスティ公爵夫人として日頃から所作にも気を付けているキャナリィはそのような噂を信じられてしまうなんてと反省するが、それはキャナリィが婚約者であるフロスティ公爵令息のジェードと仲の良いエボニーに嫉妬しての所業だと言われ── 「私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 そう問うたキャナリィは 「それはこちらの台詞だ。どうしてエボニーを執拗に苛めるのだ」 逆にジェードに問い返されたのだった。 ★★★★★★ 覗いて下さりありがとうございます。 女性向けHOTランキングで最高20位までいくことができました。(本編) 沢山の方に読んでいただけて嬉しかったので、続き?を書きました(*^^*) ★花言葉は「恋の勝利」  本編より過去→未来  ジェードとクラレットのお話 ★ジェード様の憂鬱【読み切り】  ジェードの暗躍?(エボニーのお相手)のお話

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

【完結】本当の悪役令嬢とは

仲村 嘉高
恋愛
転生者である『ヒロイン』は知らなかった。 甘やかされて育った第二王子は気付かなかった。 『ヒロイン』である男爵令嬢のとりまきで、第二王子の側近でもある騎士団長子息も、魔法師協会会長の孫も、大商会の跡取りも、伯爵令息も 公爵家の本気というものを。 ※HOT最高1位!ありがとうございます!

【完結】無能に何か用ですか?

凛 伊緒
恋愛
「お前との婚約を破棄するッ!我が国の未来に、無能な王妃は不要だ!」 とある日のパーティーにて…… セイラン王国王太子ヴィアルス・ディア・セイランは、婚約者のレイシア・ユシェナート侯爵令嬢に向かってそう言い放った。 隣にはレイシアの妹ミフェラが、哀れみの目を向けている。 だがレイシアはヴィアルスには見えない角度にて笑みを浮かべていた。 ヴィアルスとミフェラの行動は、全てレイシアの思惑通りの行動に過ぎなかったのだ…… 主人公レイシアが、自身を貶めてきた人々にざまぁする物語── ※ご感想・ご意見につきましては、近況ボードをご覧いただければ幸いです。 《皆様のご愛読、誠に感謝致しますm(*_ _)m》

あなたに未練などありません

風見ゆうみ
恋愛
「本当は前から知っていたんだ。君がキャロをいじめていた事」 初恋であり、ずっと思いを寄せていた婚約者からありえない事を言われ、侯爵令嬢であるわたし、アニエス・ロロアルの頭の中は真っ白になった。 わたしの婚約者はクォント国の第2王子ヘイスト殿下、幼馴染で親友のキャロラインは他の友人達と結託して嘘をつき、私から婚約者を奪おうと考えたようだった。 数日後の王家主催のパーティーでヘイスト殿下に婚約破棄されると知った父は激怒し、元々、わたしを憎んでいた事もあり、婚約破棄後はわたしとの縁を切り、わたしを家から追い出すと告げ、それを承認する書面にサインまでさせられてしまう。 そして、予告通り出席したパーティーで婚約破棄を告げられ絶望していたわたしに、その場で求婚してきたのは、ヘイスト殿下の兄であり病弱だという事で有名なジェレミー王太子殿下だった…。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

処理中です...