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「エミリーヌよ、これで最後だ。父と母に最後に言いたい事はあるか?」
「陛下…」
「もう会うことはない。最後に文句でも罵声でも好きなだけ言うと良い」
「はい…」
「エリー、話したくないなら無理に話す必要は無いよ?」
「チャーリー…」
チャーリーは私の頬を優しく包み顔を上げさせ、目と目が合う。
「いい?エリーは何も悪くない。それに裁きを下したのは陛下だ。もし恨まれるとしたら陛下だ」
「ちょ、ちょっと」
「それにエリーにご両親を捨てさせる俺だ。エリーがご両親の裁きを嘆き悲しみ、誰かを恨むなら、陛下と俺を恨め。エリーが背負う必要はない。
エリーが自分を責めるなら俺を責めろ。俺を責めて罵ればいい。
エリーが責任を感じる必要はないんだ」
「うん…」
私はチャーリーの横に立ち、お父様とお母様を見つめる。お父様は膝から崩れて座りこんでいた。
「お父様、お母様………」
私は自然と涙が溢れてきた。
「私の…事も…、ううっ、 見て…ほしかった…ううっ、 愛して…ほしかった…。ううっ、」
私は流れる涙が止まらない。
チャーリーに抱き締められ、チャーリーの胸の中で泣いた。
「ううっ…ううっ…ううっ…」
「エリー、愛してるよ。愛しいエリー」
チャーリーは私の背中を優しく撫で、泣き止むまで「愛してる」と言っていた。
暫くして泣き止んだ私はそっとチャーリーから離れた。
「エミリーヌ、私の可愛い娘」
アーサー父様に今度は抱き締められ、
「私とローラの可愛い娘よ。泣き顔も可愛いよ。愛してるエミリーヌ、私とローラの娘は本当に可愛い、愛しい愛娘よ」
アーサー父様は私の額に口付けした。それから頭を撫で、私の肩に手を置き抱き寄せた。まるで、可愛いだろと言わんばかりに、そしてお前達には渡さないと言わんばかりに…。
「連れて行け」
陛下の声に騎士達がお父様とお母様を拘束して連れて行った。
「父上、離して下さい」
「嫌だ。私の愛娘だ」
「俺のエリーだ」
チャーリーは強引に私を引っ張り、私はチャーリーの胸の中に閉じ込められた。私を抱き締める腕に力が入ってる。そして私の額をゴシゴシと拭いている。
「父上でも許せない」
チャーリーは額に何度も口付けをしてる。
「ちょ、ちょっと」
「黙って」
私はチャーリーにされるがまま動く事が出来なかった。
「チャーリーよ、誰もお主からエミリーヌを取り上げなどせぬ」
「陛下は黙ってて下さい。これは俺と父上の争いです」
「ハハハッ、エミリーヌよ、これから苦労しそうだな」
「はい…」
「先程チャーリーが申した様に、恨むなら私を恨め。お主の父と母に裁きを下したのは私だ。お主が気に病む事はない、良いな」
「……はい」
「前侯爵も良いな」
「陛下に裁きをお任せしたのは私です。どの様な裁きが下ろうとも私共は何も言うつもりはありません。申し訳ありませんでした」
「本日の裁きはこれで終いとする」
「陛下、まだ私が裁かれておりません。愚息を野放しにし、愚息の教育を怠った私にも罪があります」
「罪か。ならばお主の力を私の民の為に使ってくれ。まだ隠居をするには早かろう。夫人の体調も良くなったのであろう」
「いえ、ヘレンの側にいつも寄り添っていたいのです」
「知っておる」
「それに私は老いぼれです。ヘレンと共に裁き受けたいと思います」
「ならば、夫人と共にチャーリーの手助けをして貰いたい。それが裁きだ」
「どう言う事でしょうか」
「王都にある孤児院の子達にお主の力を貸してほしい。チャーリーがミリー商会の経営者という事は知っておるな」
「はい」
「ならば孤児院の子達の現状は知っておるか」
「はい。孤児院の子達は迫害を受けやすい」
「そうだ。何故だと思う」
「文字の読み書きが出来る子達が著しく低いと」
「そうだ」
「それにより職に付けません」
「そうだ。だが子達に教える者が居らぬ。賢くて子達に向き合える者が。お主にはそれが出来る。そして夫人もだ」
「分かりました。ですが、ヘレンは調子の良い時だけです。それと私と共で無ければ認めません」
「それで良い。孤児院の子達はミリー商会に全て任せた。お主には手助けを頼む」
「分かりました。キャメル侯爵家として協力します」
「エミリーヌも同じ事を申したぞ」
「私の愛しい孫娘です。当然でしょう。かかる金銭は全てキャメル侯爵家で賄います」
「良いのか?」
「エミリーヌもそのつもりだと思います」
「お祖父様、良いのですか」
「当たり前だ。手助けを求める者に使わなくて何に使う」
「はい」
「チャーリー君、具体的に決まっておるのか」
「それがまだ。アイリーン様も協力して下さる事になっていますが、それでもまだ人手が足りません。紙やペン等の物資は既に頼んでありますので届き次第順次配る予定でいます」
「ならば年齢の高い子達を先に教えよう。今からでも間に合う」
「はい。前侯爵が力になってくれるなら何でも出来そうです」
「お祖父様、お願いがあります」
「ジムの息子とダンの息子も手伝わせる」
「よろしいのですか?」
「彼奴等も子達と関わり身に付くものがある」
「はい」
「まだジムもダンも引退する気はないからな」
「ふふっ、そうですね」
「陛下…」
「もう会うことはない。最後に文句でも罵声でも好きなだけ言うと良い」
「はい…」
「エリー、話したくないなら無理に話す必要は無いよ?」
「チャーリー…」
チャーリーは私の頬を優しく包み顔を上げさせ、目と目が合う。
「いい?エリーは何も悪くない。それに裁きを下したのは陛下だ。もし恨まれるとしたら陛下だ」
「ちょ、ちょっと」
「それにエリーにご両親を捨てさせる俺だ。エリーがご両親の裁きを嘆き悲しみ、誰かを恨むなら、陛下と俺を恨め。エリーが背負う必要はない。
エリーが自分を責めるなら俺を責めろ。俺を責めて罵ればいい。
エリーが責任を感じる必要はないんだ」
「うん…」
私はチャーリーの横に立ち、お父様とお母様を見つめる。お父様は膝から崩れて座りこんでいた。
「お父様、お母様………」
私は自然と涙が溢れてきた。
「私の…事も…、ううっ、 見て…ほしかった…ううっ、 愛して…ほしかった…。ううっ、」
私は流れる涙が止まらない。
チャーリーに抱き締められ、チャーリーの胸の中で泣いた。
「ううっ…ううっ…ううっ…」
「エリー、愛してるよ。愛しいエリー」
チャーリーは私の背中を優しく撫で、泣き止むまで「愛してる」と言っていた。
暫くして泣き止んだ私はそっとチャーリーから離れた。
「エミリーヌ、私の可愛い娘」
アーサー父様に今度は抱き締められ、
「私とローラの可愛い娘よ。泣き顔も可愛いよ。愛してるエミリーヌ、私とローラの娘は本当に可愛い、愛しい愛娘よ」
アーサー父様は私の額に口付けした。それから頭を撫で、私の肩に手を置き抱き寄せた。まるで、可愛いだろと言わんばかりに、そしてお前達には渡さないと言わんばかりに…。
「連れて行け」
陛下の声に騎士達がお父様とお母様を拘束して連れて行った。
「父上、離して下さい」
「嫌だ。私の愛娘だ」
「俺のエリーだ」
チャーリーは強引に私を引っ張り、私はチャーリーの胸の中に閉じ込められた。私を抱き締める腕に力が入ってる。そして私の額をゴシゴシと拭いている。
「父上でも許せない」
チャーリーは額に何度も口付けをしてる。
「ちょ、ちょっと」
「黙って」
私はチャーリーにされるがまま動く事が出来なかった。
「チャーリーよ、誰もお主からエミリーヌを取り上げなどせぬ」
「陛下は黙ってて下さい。これは俺と父上の争いです」
「ハハハッ、エミリーヌよ、これから苦労しそうだな」
「はい…」
「先程チャーリーが申した様に、恨むなら私を恨め。お主の父と母に裁きを下したのは私だ。お主が気に病む事はない、良いな」
「……はい」
「前侯爵も良いな」
「陛下に裁きをお任せしたのは私です。どの様な裁きが下ろうとも私共は何も言うつもりはありません。申し訳ありませんでした」
「本日の裁きはこれで終いとする」
「陛下、まだ私が裁かれておりません。愚息を野放しにし、愚息の教育を怠った私にも罪があります」
「罪か。ならばお主の力を私の民の為に使ってくれ。まだ隠居をするには早かろう。夫人の体調も良くなったのであろう」
「いえ、ヘレンの側にいつも寄り添っていたいのです」
「知っておる」
「それに私は老いぼれです。ヘレンと共に裁き受けたいと思います」
「ならば、夫人と共にチャーリーの手助けをして貰いたい。それが裁きだ」
「どう言う事でしょうか」
「王都にある孤児院の子達にお主の力を貸してほしい。チャーリーがミリー商会の経営者という事は知っておるな」
「はい」
「ならば孤児院の子達の現状は知っておるか」
「はい。孤児院の子達は迫害を受けやすい」
「そうだ。何故だと思う」
「文字の読み書きが出来る子達が著しく低いと」
「そうだ」
「それにより職に付けません」
「そうだ。だが子達に教える者が居らぬ。賢くて子達に向き合える者が。お主にはそれが出来る。そして夫人もだ」
「分かりました。ですが、ヘレンは調子の良い時だけです。それと私と共で無ければ認めません」
「それで良い。孤児院の子達はミリー商会に全て任せた。お主には手助けを頼む」
「分かりました。キャメル侯爵家として協力します」
「エミリーヌも同じ事を申したぞ」
「私の愛しい孫娘です。当然でしょう。かかる金銭は全てキャメル侯爵家で賄います」
「良いのか?」
「エミリーヌもそのつもりだと思います」
「お祖父様、良いのですか」
「当たり前だ。手助けを求める者に使わなくて何に使う」
「はい」
「チャーリー君、具体的に決まっておるのか」
「それがまだ。アイリーン様も協力して下さる事になっていますが、それでもまだ人手が足りません。紙やペン等の物資は既に頼んでありますので届き次第順次配る予定でいます」
「ならば年齢の高い子達を先に教えよう。今からでも間に合う」
「はい。前侯爵が力になってくれるなら何でも出来そうです」
「お祖父様、お願いがあります」
「ジムの息子とダンの息子も手伝わせる」
「よろしいのですか?」
「彼奴等も子達と関わり身に付くものがある」
「はい」
「まだジムもダンも引退する気はないからな」
「ふふっ、そうですね」
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