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「貴方達は自分勝手で傲慢だ。エミリーヌが前侯爵と夫人に護られていた時は良かった。前侯爵と夫人が邸を出てから、貴方達はエミリーヌの存在を消した。始めから産まれていない様に、エミリーヌという子はいない者として扱った。きっとエミリーヌが死んだとしても気が付かなかったはずだ。嫌、死んで欲しかったはずだ。 エミリーヌという存在がいれば貴方達は他の貴族から永遠に好奇の目で見られ続けられると思った。婚姻する前に身体を繋げたと陰口をたたかれ、子を宿したと好奇の目で見られる事を懸念した。
だけど、貴族には良くも悪くも暗黙のルールがある。例え婚姻する前に身体を繋げていたとしても、例え婚姻する前に子が宿ったとしても、誰も何も言わない。貴方達はエミリーヌを堂々と娘だと連れて歩けば良かったんだ。
貴方達は宿った子を認めれば良かった。それだけで良かったんだ。認めていれば愛せたはずだ。自分に良く似た可愛い娘を、初めての子を、愛し護り、日々の成長を楽しみにし、可愛い笑顔でお父様、お母様と呼ばれ、元気に走り回る姿を心配し、寝込めば自分が代われる事なら代わりたいと思ったでしょう。
貴方が当主として出来損ないだとしても、エミリーヌが貴方を補佐し、貴方が貴族の間で何も言われない様にたて、陰ながら手助けしたでしょう。
貴方達がエミリーヌを認めていれば、エミリーヌを愛するだけで、エミリーヌは貴方達を護る為に己の犠牲など苦にもせず愛する貴方達を護ったはずなのです。エミリーヌは前侯爵譲りの深い情を持った女性です」
「………」
「もう全てが手遅れですが」
「いや、まだ手遅れではない。今からエミリーヌを愛す」
「いえ、王の裁きは終わりました。貴方方はもう裁かれた。何もかも遅いのです」
「そんな事はない」
「やめんか!見苦しいぞ」
「ち、父上」
「今更お前達の都合のいい様になる訳がない。陛下の裁きは終わった。お前達は潔く命を受けるのだ」
「そんな…。父上は私が可愛くないのですか。私が陛下の命を受けたら辺境ですよ?辺境で私は命を落とすかもしれない。それでも良いと言うのですか」
「お前は自分の命は大切なのだな」
「当たり前です」
「お前が自分の命が大事な様にエミリーヌにも命があり大事な命だ。この世に生きる者全てに命がある。戦で命を落とす者も、天災で命を落とす者も、迫害を受けて命を落とす者もいる。
だけどな命持つ者全てが尊き者で、命を粗末に扱ってはならぬのだ。
お前達はエミリーヌの命を粗末に扱った。己可愛さに己を護る為に、儂の可愛い孫娘のエミリーヌの大事な命を粗末に扱った。
お前達は陛下の命に従い、潔く裁きを受けるのだ。そして己を見つめ直し自分達がしてきた事を、己の娘に何をしてきたか見つめ直せ」
「ち、父上!」
「お前は儂の息子だ。儂とヘレンの愛する息子だ。だからこそ許せぬのだ。お前の兄はこの世に誕生出来なかった。ヘレンがいつも腕に抱く事が出来なかった我が子を慈しみ悲しむ姿をお前も幼き頃より見ていたはずだ。そしてお前を慈しみ愛した。自分の元に産まれて来てくれてありがとうと、お前を抱きしめ何度も伝えていた。お前は忘れたのか」
「覚えています。母上は私の誕生を心から喜んでくれた。兄上が不慮の事故で誕生出来なかったのも知っています。母上は兄上の命日には部屋に籠もり一人で泣いていた。幼い私は兄上の分まで母上を幸せにしようと心に誓ったのです」
「ならばどうして自分の娘の命は粗末に扱えた。誕生を心から喜んでやらなかった。お前の母は誕生出来ぬ我が子の命を嘆き悲しんだ。エミリーヌは誕生したではないか。命を繋げたではないか。
ヘレンは慈悲深い女性だ。他人の命も粗末に扱う事はしなかった。助けを必要とする者がいれば迷わず手を差し伸べた。生きる者全ての命が尊きものだと、惜しくも落としてしまった命も尊きものだと心を痛めている。
お前はヘレンに、母に合わせる顔があるのか。エミリーヌを長年に渡り虐げたお前を母が許すと思うのか。
ヘレンが体調を崩した時、静養が必要だと邸を出たが、ヘレンの心残りはエミリーヌだった。お前達がサラフィスばかり可愛いがり、エミリーヌには見向きもしなかった。だがな、ヘレンは言っていたぞ。お前なら私達の息子のお前なら、エミリーヌを蔑ろにはしないと。虐げる事はしないと。命が大事と教え聞かせてきたお前ならエミリーヌの命を粗末に扱うはずがないと。
お前はヘレンの気持ちも踏みにじったんだ」
「は、母上………。すみません母上、すみません…すみません母上………」
「お前達は己の罪に向き合え。そして己を見つめ直すのだ」
「父上………」
「良いな」
「わ、分かりました………。だからどうか、どうか母上にだけは…知らせないで下さい。お願いします。どうか母上にだけは、お願いします父上…」
だけど、貴族には良くも悪くも暗黙のルールがある。例え婚姻する前に身体を繋げていたとしても、例え婚姻する前に子が宿ったとしても、誰も何も言わない。貴方達はエミリーヌを堂々と娘だと連れて歩けば良かったんだ。
貴方達は宿った子を認めれば良かった。それだけで良かったんだ。認めていれば愛せたはずだ。自分に良く似た可愛い娘を、初めての子を、愛し護り、日々の成長を楽しみにし、可愛い笑顔でお父様、お母様と呼ばれ、元気に走り回る姿を心配し、寝込めば自分が代われる事なら代わりたいと思ったでしょう。
貴方が当主として出来損ないだとしても、エミリーヌが貴方を補佐し、貴方が貴族の間で何も言われない様にたて、陰ながら手助けしたでしょう。
貴方達がエミリーヌを認めていれば、エミリーヌを愛するだけで、エミリーヌは貴方達を護る為に己の犠牲など苦にもせず愛する貴方達を護ったはずなのです。エミリーヌは前侯爵譲りの深い情を持った女性です」
「………」
「もう全てが手遅れですが」
「いや、まだ手遅れではない。今からエミリーヌを愛す」
「いえ、王の裁きは終わりました。貴方方はもう裁かれた。何もかも遅いのです」
「そんな事はない」
「やめんか!見苦しいぞ」
「ち、父上」
「今更お前達の都合のいい様になる訳がない。陛下の裁きは終わった。お前達は潔く命を受けるのだ」
「そんな…。父上は私が可愛くないのですか。私が陛下の命を受けたら辺境ですよ?辺境で私は命を落とすかもしれない。それでも良いと言うのですか」
「お前は自分の命は大切なのだな」
「当たり前です」
「お前が自分の命が大事な様にエミリーヌにも命があり大事な命だ。この世に生きる者全てに命がある。戦で命を落とす者も、天災で命を落とす者も、迫害を受けて命を落とす者もいる。
だけどな命持つ者全てが尊き者で、命を粗末に扱ってはならぬのだ。
お前達はエミリーヌの命を粗末に扱った。己可愛さに己を護る為に、儂の可愛い孫娘のエミリーヌの大事な命を粗末に扱った。
お前達は陛下の命に従い、潔く裁きを受けるのだ。そして己を見つめ直し自分達がしてきた事を、己の娘に何をしてきたか見つめ直せ」
「ち、父上!」
「お前は儂の息子だ。儂とヘレンの愛する息子だ。だからこそ許せぬのだ。お前の兄はこの世に誕生出来なかった。ヘレンがいつも腕に抱く事が出来なかった我が子を慈しみ悲しむ姿をお前も幼き頃より見ていたはずだ。そしてお前を慈しみ愛した。自分の元に産まれて来てくれてありがとうと、お前を抱きしめ何度も伝えていた。お前は忘れたのか」
「覚えています。母上は私の誕生を心から喜んでくれた。兄上が不慮の事故で誕生出来なかったのも知っています。母上は兄上の命日には部屋に籠もり一人で泣いていた。幼い私は兄上の分まで母上を幸せにしようと心に誓ったのです」
「ならばどうして自分の娘の命は粗末に扱えた。誕生を心から喜んでやらなかった。お前の母は誕生出来ぬ我が子の命を嘆き悲しんだ。エミリーヌは誕生したではないか。命を繋げたではないか。
ヘレンは慈悲深い女性だ。他人の命も粗末に扱う事はしなかった。助けを必要とする者がいれば迷わず手を差し伸べた。生きる者全ての命が尊きものだと、惜しくも落としてしまった命も尊きものだと心を痛めている。
お前はヘレンに、母に合わせる顔があるのか。エミリーヌを長年に渡り虐げたお前を母が許すと思うのか。
ヘレンが体調を崩した時、静養が必要だと邸を出たが、ヘレンの心残りはエミリーヌだった。お前達がサラフィスばかり可愛いがり、エミリーヌには見向きもしなかった。だがな、ヘレンは言っていたぞ。お前なら私達の息子のお前なら、エミリーヌを蔑ろにはしないと。虐げる事はしないと。命が大事と教え聞かせてきたお前ならエミリーヌの命を粗末に扱うはずがないと。
お前はヘレンの気持ちも踏みにじったんだ」
「は、母上………。すみません母上、すみません…すみません母上………」
「お前達は己の罪に向き合え。そして己を見つめ直すのだ」
「父上………」
「良いな」
「わ、分かりました………。だからどうか、どうか母上にだけは…知らせないで下さい。お願いします。どうか母上にだけは、お願いします父上…」
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