妹がいなくなった

アズやっこ

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「エミリーヌが何をした。エミリーヌはあんた達の子供として産まれてきただけだ。あんた達が身体を繋げたから出来た子だ。繋げず子が出来るか?子が勝手に腹に宿ったのか?違うだろ。

あんたが自分の快楽を優先した結果だ。婚姻するまで待てず、避妊もせず、ただ己の欲を吐き出す為に、快楽を得る為に身体を繋げた結果だ。違うか。避妊もせず身体を繋げれば子が出来る。当たり前の事だ。自分は失敗しないとでも思ったのか?そして子が宿った事を失敗したとでも思ったのか? 覚悟も無いくせに身体を繋げるべきじゃない。

あんたは快楽に溺れた自分を、自分の失態を何の罪もないエミリーヌに背負わせ、己を護る為にエミリーヌを虐げた。自分の子ではないと己に言い聞かせ、エミリーヌを傷つけ蔑ろにした。

だけどあんたは分かっていた、エミリーヌが自分の子だと。子が宿ったと知らされた時、あんたは焦ったはずだ。婚姻する前に身体を繋げてた事が分かる事を、子が出来た事で知られる事を、他人から向けられる目が怖かったはずだ。 子を産まない選択をすれば白い目で見られる。子を産む選択をしたのは結局は自分の保身を護る為だ。宿った子を護る為じゃない。あんたにそんな覚悟なんて無かった」

「なっ、」

「それから夫人、あんたは自分の腹を痛めて産んだ子を愛せなかった。どれだけ綺麗事を並べても結局は子を捨てたんだ。 自分の手で育てたから愛せて、自分の手で育てなかったから愛せないなんて、そんなの愛情じゃない。あんたは誰も愛せない。旦那も妹のサラフィスも愛してないんだよ。 あんたは自分しか愛してないんだ。

旦那を愛する事で、自分の手で育てたサラフィスを愛する事で、自分は愛情を持てる女性なのだとそんな自分に酔い、己を愛してるだけだ。

例え自分で赤子から育てなくても、例え自分の子でなくても、愛情は接した時間で育まれるものだ。 あんたは腹の中でエミリーヌを育ててただろ。その時から愛情は育まれるものなんだ。そして腹を痛めて産んだからこそより深い愛情が溢れるんだ。

あんたは腹の中に宿った子に愛情なんて持ってなかった。 エミリーヌにしてもサラフィスにしても腹の中にいた時は愛してなかった」

「なっ、」

「あんたは自分が愛情深い母親だと勘違いしてるようだけど、同じ子を持つ母親には分かっていた。あんたが子に愛情を持ってない事をな。

良い妻、良い母を演じてる自分を、見て、褒めて、私は愛情深い女性なの、と自分しか愛してなかった。

そんなあんたの犠牲になったのがエミリーヌだ。でもな、エミリーヌは言ってたよ、サラフィスも犠牲なのだとな。 あんたはサラフィスを愛する事で良い母親だと皆に示す為に愛しただけだ」

「なっ」

「あんたはエミリーヌを前侯爵夫人に奪われたと言ったけどな、先にエミリーヌから逃げて放棄したのはあんただ。 あんたは産まれたエミリーヌに愛情が持てなかった。嫌、きっとサラフィスにも愛情が持てなかった。

エミリーヌの時は運良く腹に子が宿り、悪阻が酷いから、身重だからと、エミリーヌを育てられなくても誰にも咎められなかった。だけどサラフィスの時は育てられない言い訳がない、だから育てるしかなかった。

愛情を持てない子を育てる為にあんたは聖母の様に演じた。それを自分の手で育てたからとサラフィスを愛してるフリをしたんだ。そして自分を正当化する為にエミリーヌは前侯爵夫人に奪われたと言った。

あんたは自分が可愛い、自分しか愛せない人だ」

「なっ」

「自分の手で育てたから愛せると言うのなら、サラフィスが産まれてから自分の手でエミリーヌも育てれば良かったはずだ。 エミリーヌはお姉さんとしてあんたの手伝いを進んでしたはずだ。

あんたの身勝手な考え方で、エミリーヌとサラフィス、姉妹の関係も壊したんだ。

あんたは愛情深い母親じゃない。全てを人のせいにして、エミリーヌや前侯爵夫人のせいにして、自分可愛いさに己を護った。 一番に護られるべき者は子のはずなのに、子を犠牲にして己を護った。

快楽に溺れたあんたの旦那と同じ様にあんたも快楽に溺れた」

「ちが…」

「違わない。あんたは身体を求められ断れなかったんじゃない、断らなかったんだ。身体を求められる事で自分がどれだけ愛されてるか、自分を求める旦那に、愛される自分に酔った。結果、あんたは快楽に溺れ子が宿った。宿った子が大きくなり産まれるから産んだ。

あんたはただ産み落としただけだ。エミリーヌを産み落としただけだ」


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