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「お主が前侯爵から受け継ぎ当主となった事は私も認めた事だ。前侯爵は己には厳しく、己以外の者には深い情を持つ。私は前侯爵の息子であるお主にも前侯爵の様な者になってくれるだろうと期待しておった」
「陛下」
「だがお主は期待外れであったな」
「何故です」
「一人息子で家督を継ぐのは自分しかいないとでも思ったか」
「父上の子供は私しかおりません」
「それで学園での勉学を疎かにしたのか?」
「それは…」
「兄弟がおれば家督を継げるようにと勉学に勤しむであろう。貴族として、当主として、基礎も分からずして、それでも貴族だと自信満々な態度をする。お主は阿呆か」
「へ? 陛下でもあんまりです」
「ならば当主とはなんだ」
「当主とは、侯爵家を護り、自領を発展させ、侯爵家に仕える者全てを護る事です」
「ならばお主は当主として侯爵家を護ってきたのか?」
「はい」
「お主が護ってきたのは、お主と妻と次女のサラフィスだけだ」
「それは…」
「自領を発展させたのか?」
「はい」
「発展させたのはエミリーヌだ」
「違いま……」
「侯爵家に仕える者達を護ってきたのか」
「それ……」
「それもエミリーヌだ。お主が当主としてした事は己の趣味の絵画や壺を買い、妻とサラフィスにだけドレスや宝石を買い与えただけだ」
「それは、」
「あ~、そうだったな、お主はお金は勝手に溜まるものだと思っていたのだったな」
「それ……」
「お金が勝手に溜まるのなら誰も苦労などせん」
「陛下、あの…」
「黙れ!」
「………」
「キャメル侯爵家を護ってきたのはエミリーヌだ。時期当主として十歳になったばかりのエミリーヌだ。お主の代わりをまだ子供のエミリーヌが護ってきたのだ。
お主は前侯爵から当主を譲り受け、前侯爵の指導の元、何とか当主としてやっていけるだろうと思っていた。お主が国へ提出する書類は不備が多かった。だが前侯爵が側におるならと私も安堵したのだ。前侯爵が邸を出てお主に全てを任せた時、私は危惧した。キャメル侯爵家は小麦を主に扱う。小麦は我が国では欠かせない物だ。没落しても乗っ取られても困るのだ。
お主が当主となり全責任を負う立場となり、少しは当主として自覚を持ってくれればと思っていたのだがな。 数年様子を見たが、自覚を持つどころか当主という立場で好き勝手お金を散財した。没落か乗っ取りかとなった時、私はお主から当主を剥奪しようと、そして侯爵領は国が管理しようと考えていた。
その矢先、国へ提出された書類を見せられ調べさせた。提出された書類は不備一つない完璧な物だった。初めはお主の代わりについに執事自らするようになったかと。本来なら咎める所だが、執事がしていても目を瞑ろうと思っていた。それだけキャメル侯爵家はこの国に大事な存在なのだ。
だが、報告を聞いて私は驚いた。まだ学園にも通っていない十歳の長女が時期当主としてお主の代わりに当主代理として書類を提出したのだ。
本来、時期当主が当主の代理として認められておるのは当主が留守の時のみ。だが、私がエミリーヌの決済でも認めるよう下した。
エミリーヌは没落寸前の侯爵家を立て直した。お主と同様に前侯爵の指導を受け、当主代理として立派な働きをしておった。
私は未だに後悔しておる。今回の様に早い段階で王命を下せば良かったとな。お主から当主を剥奪し、成人しておらぬエミリーヌに当主を命ずれば良かったのだ。成人しておらぬ者でも特例で認めれば良かったのだ。貴族の過半数が認め、私が認めれば特例は認められる。
未熟なお主と子供のエミリーヌとどちらが国に取って重要か、誰に聞いても分かる事だった」
陛下は前侯爵の方を向いた。
「前侯爵よ」
「はい、陛下」
「私とお主は間違いをおこした」
「はい、そのようです」
「お主は妻の事があり幼いエミリーヌに頼むしか無かった」
「はい、その通りです」
「私は国へ提出する書類を多くする事でエミリーヌの助けを直ぐに受け取れる様にと思った。
だが、エミリーヌは辛抱強い子だった」
「はい」
「そして賢い子だった」
「はい」
「賢いが故に助けを求める事などしなかった」
「はい」
「私とお主で幼いエミリーヌを当主にするべく動かなくてはならなかった」
「はい」
「今更後悔しても遅いのだがな」
「私も愚息に見切りを付けた時に陛下にご相談すれば良かったと、後悔しております」
「お主の一人息子だが、私が裁きを決定しても良いか」
「はい。陛下にお任せ致します」
「そうか」
「はい。厳しい裁きをお願い致します」
「そうだな。貴族としても当主としても未熟者」
「はい」
「それにだ、人としても親としても未熟者だったな」
「はい、その通りです」
「陛下」
「だがお主は期待外れであったな」
「何故です」
「一人息子で家督を継ぐのは自分しかいないとでも思ったか」
「父上の子供は私しかおりません」
「それで学園での勉学を疎かにしたのか?」
「それは…」
「兄弟がおれば家督を継げるようにと勉学に勤しむであろう。貴族として、当主として、基礎も分からずして、それでも貴族だと自信満々な態度をする。お主は阿呆か」
「へ? 陛下でもあんまりです」
「ならば当主とはなんだ」
「当主とは、侯爵家を護り、自領を発展させ、侯爵家に仕える者全てを護る事です」
「ならばお主は当主として侯爵家を護ってきたのか?」
「はい」
「お主が護ってきたのは、お主と妻と次女のサラフィスだけだ」
「それは…」
「自領を発展させたのか?」
「はい」
「発展させたのはエミリーヌだ」
「違いま……」
「侯爵家に仕える者達を護ってきたのか」
「それ……」
「それもエミリーヌだ。お主が当主としてした事は己の趣味の絵画や壺を買い、妻とサラフィスにだけドレスや宝石を買い与えただけだ」
「それは、」
「あ~、そうだったな、お主はお金は勝手に溜まるものだと思っていたのだったな」
「それ……」
「お金が勝手に溜まるのなら誰も苦労などせん」
「陛下、あの…」
「黙れ!」
「………」
「キャメル侯爵家を護ってきたのはエミリーヌだ。時期当主として十歳になったばかりのエミリーヌだ。お主の代わりをまだ子供のエミリーヌが護ってきたのだ。
お主は前侯爵から当主を譲り受け、前侯爵の指導の元、何とか当主としてやっていけるだろうと思っていた。お主が国へ提出する書類は不備が多かった。だが前侯爵が側におるならと私も安堵したのだ。前侯爵が邸を出てお主に全てを任せた時、私は危惧した。キャメル侯爵家は小麦を主に扱う。小麦は我が国では欠かせない物だ。没落しても乗っ取られても困るのだ。
お主が当主となり全責任を負う立場となり、少しは当主として自覚を持ってくれればと思っていたのだがな。 数年様子を見たが、自覚を持つどころか当主という立場で好き勝手お金を散財した。没落か乗っ取りかとなった時、私はお主から当主を剥奪しようと、そして侯爵領は国が管理しようと考えていた。
その矢先、国へ提出された書類を見せられ調べさせた。提出された書類は不備一つない完璧な物だった。初めはお主の代わりについに執事自らするようになったかと。本来なら咎める所だが、執事がしていても目を瞑ろうと思っていた。それだけキャメル侯爵家はこの国に大事な存在なのだ。
だが、報告を聞いて私は驚いた。まだ学園にも通っていない十歳の長女が時期当主としてお主の代わりに当主代理として書類を提出したのだ。
本来、時期当主が当主の代理として認められておるのは当主が留守の時のみ。だが、私がエミリーヌの決済でも認めるよう下した。
エミリーヌは没落寸前の侯爵家を立て直した。お主と同様に前侯爵の指導を受け、当主代理として立派な働きをしておった。
私は未だに後悔しておる。今回の様に早い段階で王命を下せば良かったとな。お主から当主を剥奪し、成人しておらぬエミリーヌに当主を命ずれば良かったのだ。成人しておらぬ者でも特例で認めれば良かったのだ。貴族の過半数が認め、私が認めれば特例は認められる。
未熟なお主と子供のエミリーヌとどちらが国に取って重要か、誰に聞いても分かる事だった」
陛下は前侯爵の方を向いた。
「前侯爵よ」
「はい、陛下」
「私とお主は間違いをおこした」
「はい、そのようです」
「お主は妻の事があり幼いエミリーヌに頼むしか無かった」
「はい、その通りです」
「私は国へ提出する書類を多くする事でエミリーヌの助けを直ぐに受け取れる様にと思った。
だが、エミリーヌは辛抱強い子だった」
「はい」
「そして賢い子だった」
「はい」
「賢いが故に助けを求める事などしなかった」
「はい」
「私とお主で幼いエミリーヌを当主にするべく動かなくてはならなかった」
「はい」
「今更後悔しても遅いのだがな」
「私も愚息に見切りを付けた時に陛下にご相談すれば良かったと、後悔しております」
「お主の一人息子だが、私が裁きを決定しても良いか」
「はい。陛下にお任せ致します」
「そうか」
「はい。厳しい裁きをお願い致します」
「そうだな。貴族としても当主としても未熟者」
「はい」
「それにだ、人としても親としても未熟者だったな」
「はい、その通りです」
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