妹がいなくなった

アズやっこ

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「私は貴女が誰からも愛される女性になって欲しいと願い幼い頃から貴女に誰からも愛される子と言ってきたわ。元王女の娘と言う立場、公爵令嬢と言う立場で令嬢の手本となる様にと願い貴女に接してきた。一人娘という事で甘やかして育てた私がいけなかったの。

貴女の発言で旦那様の立場だけでなく、お兄様の立場も危うくなる事は分かっていたのに、私は貴女の愚行に目を背けた。

チャーリー君が不貞をした時も貴女を庇う為にチャーリー君を責めたわ。顔を見たくない、この国に居ると思うだけで虫酸が走るといってね。チャーリー君は勘当され国外追放になった。だけど本当は貴女を庇う為ではないの。貴女の愚行から目を背けた私自身を護る為、そして娘の貴女では無くてチャーリー君を悪者にする為よ。

貴女とチャーリー君、どちらの罪が重いと思うの。不貞をしたチャーリー君より、貴族を平民を見下し、罵り、婚約者を奴隷の様に扱い足蹴にした貴女の方が罪は重いのよ」


 エステル様のお母様は、アーサー父様、ローラ母様、チャーリーの前に来て、


「ブラウニー侯爵、侯爵夫人、チャーリー君、今更謝罪をされても許せないと思います。あの時、チャーリー君一人に罪を被せ背負わした事、そして侯爵、夫人の心を蔑ろにし傷つけた事、深くお詫び致します。申し訳御座いませんでした」


 エステル様のお母様は深々と頭を下げた。お母様の後ろにエステル様のお父様も立ち、お父様も「申し訳なかった」と深々と頭を下げた。


「もう済んだ事です」


 アーサー父様はエステル様のご両親に一言だけ言った。その一言はとても重い言葉だった。許すと言える程、許せる事ではないし、今、チャーリーは自らの力でこの国へ帰って来たけれど、帰って来なければ謝罪も反省も何もしなかっただろうから。

 許して貰えた訳でない事はエステル様のご両親も分かっているはず。


 エステル様のお母様は陛下へ向き、


「お兄様、いえ、陛下、妹の最後のお願いです。どうか御慈悲を頂けないでしょうか」

「申してみよ」

「ありがとうございます。娘をエステルを、子を自分で育てれる修道院に送って頂けませんでしょうか。どうか御慈悲を」

「分かった。子を育てれる修道院へ送る事を約束しよう」

「有り難きお言葉感謝致します」

「お主等も子爵からやり直せ」

「はい、そのつもりです。御迷惑をおかけし申し訳御座いませんでした」


 陛下の表情がとても苦しそうで悲しそうだった。妹を子爵夫人にすると言う事は、今迄みたいにもう陛下に会い話す事は出来なくなると思う。子爵は下位貴族、年に二度しか夜会に参加出来ない。その二度でも子爵が王族に話し掛ける事は出来ない。陛下から話し掛ければ別だけど、挨拶以外の会話は出来ないと思う。

 そして陛下にとってエステル様は姪。姪を、修道院へ送る裁きを自分で下す思いは陛下にとって辛い事だと思う。エステル様が心から反省し己の罪を認め償う事を願うしかない。


「わたくしは修道院には入りませんわ。チャーリー様に謝り許して頂けましたわ。そうですわよね、チャーリー様」

「私は許した覚えはないが」

「貴方、わたくしを誰だとお思いで」

「修道院へ送られる罪人だ」

「な、なんですって」

「エステル譲、貴女は己の罪を認めるべきだ」

「ですからわたくしは罪など犯してないと散々申し上げておりますわ」

「エステル譲、先程、私の婚約者のエミリーヌが貴女に言った言葉をお忘れですか? 貴女の発言で陛下の立場は危うくなるのですよ?貴女はもう少し言葉を選んで話した方が良い」

「貴方に言われたくありませんわ」

「そうですか。私としても貴女がどうなろうと関係ありませんのでお好きにして下さい。貴女に何を言っても無駄の様だ」

「なんですって。貴方、ご自分の立場をお分かりですの?」

「貴女こそご自分の立場をお分かりですか?」

「わたくしは公爵ですのよ」

「お父上ももう公爵ではありませんが、貴女は平民です。そして罰として修道院へ送られる罪人ですよ?」

「わたくしが平民?馬鹿馬鹿しい。平民は貴方ですわ」

「私は侯爵令息です。そして貴女を平民にしたのは陛下の裁き、覆る事はありません」

「おじ様がわたくしを見捨てるはずありませんわ。わたくしは姪ですのよ」

「お主はつくづく阿呆だな」

「おじ様?」

「先程、皆の前でお主を平民にし、これ迄の愚行の数々、暴言の数々を問うて修道院送りを下したではないか。それさえも覚えていないとは、お主はもう一度赤子からやり直すか」

「なっ、おじ様、失礼ですわ」

「なら今私が言った事を申してみよ」

「それは……」

「はぁぁ。もう一度言う、きちんと話を聞くんだ。良いな。

お主は本日の夜会で、貴族が見守る中、私の裁きによって平民にし、修道院送りを下した。お主の度重なる愚行と暴言、私の大事な民を貶め傷つけた。私は大事な民を護る為にお主に裁きを下したのだ」

「わたくしはおじ様の大事な姪ではありませんの」

「大事な姪だからこそお主には私が裁かなくてはならぬ。お主は王族の血を受け継ぎ、最も王族に近しい者だ」

「そうですわ、わたくしは王族ですのよ」

「お主は王族ではない。 お主が王族だと言うのならどうして民を見下したのだ。王族とはこの国を支える民に常に感謝し敬意を払わなければならぬのだ。民が居るから私は王であり、民が居なければ私もただの人だ。 私はこの国の王として大事な民を護る義務がある。そしてお主は私の大事な民を傷つけた。傷つけた者を罰し裁きを下すのは当たり前の事だ。 お主もチャーリーの不貞で傷つきチャーリーを罰したであろう。お主だけが罰せる立場ではないのだぞ。皆平等に罰せる立場にある」


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