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陛下と王妃様が座るソファーの前に公爵家一家が座り、陛下側のソファーにアーサー父様とローラ母様が座り、王妃様側のソファーにチャーリーと私が座った。
アーサー父様はローラ母様を抱き寄せる様に、護る様に座り、チャーリーも私の腰を引き寄せ私の手を片方の手で握っている。
「では、エステル、先程チャーリーが言った意味を答えろ」
エステル様は首を横に振って、今にも泣き出しそうな顔をしている。
「チャーリー、すまぬがお主から教えて貰えぬか」
「陛下、一つ私のお願いを聞いて頂いてもよろしいでしょうか」
「何だ?」
「これから話す事で父上や母上、ブラウニー侯爵家とその親族、それから私の婚約者のエミリーヌにキャメル侯爵家とその親族、それとミリー商会に今後、手出しはしないとお約束して頂きたい」
「分かった、私が約束しよう。 妹にも、子爵になった義弟にも、義弟の親族や友人、妹の友人にも手出しはさせない。もし手出しした場合、皆纏めて貴族籍を抜こう」
「ありがとうございます」
「では話してくれぬか」
「はい。 単刀直入に申し上げます。よろしいでしょうか」
「構わない、申せ」
「はい。 エステル譲は現在、腹の中に子が宿っております」
「本当なのか」
「はい。 診察した医師にも確認しました。子が宿ったばかりですが、懐妊していると」
「夫の子ではないな」
「どうしてでしょう」
「あの者の近くに私の息がかかった者を置いておる。エステルはあの者が住まう離れには入った事はない」
「心を病んでる者に子が出来る行為は難しい」
「そうだな。で、相手は誰だ」
「それは「神からの贈り物ですわ」」
エステル様がチャーリーの言葉を遮り、
「わたくしは毎日教会へ旦那様の事を祈りに参ります。 確かに旦那様の離れには一度も入った事はありませんわ。 旦那様は病んでおられるのです。お身体を崩されておいでなのです。 ですからわたくしは旦那様のお身体の回復を祈る為に毎日教会に参りますの。 その時わたくしは神にお願いを申し上げますの。旦那様の子が出来ます様にと。
神はわたくしの願いを聞いて下さり、わたくしに子を授けて下さったのです。子は神からの贈り物なのですわ」
「エステル、その様な子供騙しに私が騙されると思うのか」
「本当ですわ」
「もう良い。 チャーリー、子の父は誰だ」
「それは「お願い、言わないで」」
「エステルを部屋の外に一度出す」
騎士がエステル様を無理矢理部屋の外へ連れ出した。部屋の外からエステル様の叫び声が聞こえる。
「チャーリーすまぬ。子の父は誰だ」
「エステル譲は隣国の大公の息子だと思っておいでですが、先程も言った様に大公には娘しかおりません。隠し子もおりません。 子の父親はこの国の孤児院育ちの平民です」
「その証拠はあるのか」
「男の部屋にあると思います。エステル譲の破瓜の印が付いたシーツをお持ちかと」
「だがそれだとエステルと断言出来ぬぞ」
「そうですね。ですが、子が産まれれば分かります。そして公爵家として子が産まれるまでその男を匿うしかない。父親かも知れないからです」
「確かにな」
「それにこれはたまたま聞いた事ですが、エステル譲本人が言っていました。 高貴な自分に相応しい高貴な殿方と子を作り夫の子として育てると。それにその高貴な殿方は毎日エステル譲を愛で、破瓜の印が付いたシーツを持ち帰り宝物にしていると。早く子が宿れば良いのにと腹を撫で言われていると」
「そうか。その男の所在は分かるのか」
「はい。私の情報屋が把握しています」
「そうか。その者を呼べるか」
「ミリー商会へ行けば」
「ミリー商会へ直ぐに使いを出そう」
「では、紙とペンをお貸し頂けますでしょうか」
「ああ」
アーサー父様が机の引き出しから紙とペンを取り出しチャーリーに渡し、チャーリーが手紙を書き、アーサー父様は受け取り騎士に渡した。
「孤児院育ちの平民が何故エステルを騙し子を作ったのだ」
「私もその男と会った事がありませんので分かりませんが、考えられる事はエステル譲に好意を抱いているか、公爵家を乗っ取るつもりだったか、それか多額の金銭を要求するつもりなのか。 どれも違うかも知れませんが」
「嫌、子が産まれれば自分が死ぬまで公爵家を脅し金銭を要求出来る。自分が正当な父だとな。 エステルに好意を抱いていてエステルも好意を持っていたなら愛人になれるしな」
「はい。平民の暮らしは決して貧しくありません。ですが、働かないと暮らしてはいけない。 平民の女性は貴族の愛人になりたい者が多い。貴族程贅沢な暮らしは出来なくとも、働かず暮らしていけるのです。子が出来れば一生面倒を見て貰える」
「そうだな」
「男性も同じ事を考えてもおかしくは無い。ただ、女性の場合、家のお金を自由に使えません。ですから愛人を持つ女性はいない。エミリーヌの様に当主になった者しか愛人は持てません」
「女性が爵位を継げる様になったのも父上が陛下になってからだ。父上は伯母上が国の犠牲になり命を落とした事を悔やんでいた。そして子は男か女しか産まれない。男なら爵位を継げて女なら継げないのはおかしいと、そして産まれた順により爵位を継ぐのはおかしいと、法を変えた。それにより当主に相応しい者を選び、女性でも爵位を持てる様になった」
「はい。それでも数年の話です。愛人を持つ女性当主は男性に比べ明らかに少ないと思います。そしてエステル譲は公爵家の一人娘、爵位を継ぐと思っていたのではないでしょうか」
「確かにな。エステルはお主と婚姻する為、当主にはなれない。公爵家の当主は遠縁の者が継ぐ事になっていた」
「はい。ですが今でも当主になれないとは思ってないはずです」
「だろうな。だが私がエステルを当主にする事を許可出来ない。だから印は押さない」
アーサー父様はローラ母様を抱き寄せる様に、護る様に座り、チャーリーも私の腰を引き寄せ私の手を片方の手で握っている。
「では、エステル、先程チャーリーが言った意味を答えろ」
エステル様は首を横に振って、今にも泣き出しそうな顔をしている。
「チャーリー、すまぬがお主から教えて貰えぬか」
「陛下、一つ私のお願いを聞いて頂いてもよろしいでしょうか」
「何だ?」
「これから話す事で父上や母上、ブラウニー侯爵家とその親族、それから私の婚約者のエミリーヌにキャメル侯爵家とその親族、それとミリー商会に今後、手出しはしないとお約束して頂きたい」
「分かった、私が約束しよう。 妹にも、子爵になった義弟にも、義弟の親族や友人、妹の友人にも手出しはさせない。もし手出しした場合、皆纏めて貴族籍を抜こう」
「ありがとうございます」
「では話してくれぬか」
「はい。 単刀直入に申し上げます。よろしいでしょうか」
「構わない、申せ」
「はい。 エステル譲は現在、腹の中に子が宿っております」
「本当なのか」
「はい。 診察した医師にも確認しました。子が宿ったばかりですが、懐妊していると」
「夫の子ではないな」
「どうしてでしょう」
「あの者の近くに私の息がかかった者を置いておる。エステルはあの者が住まう離れには入った事はない」
「心を病んでる者に子が出来る行為は難しい」
「そうだな。で、相手は誰だ」
「それは「神からの贈り物ですわ」」
エステル様がチャーリーの言葉を遮り、
「わたくしは毎日教会へ旦那様の事を祈りに参ります。 確かに旦那様の離れには一度も入った事はありませんわ。 旦那様は病んでおられるのです。お身体を崩されておいでなのです。 ですからわたくしは旦那様のお身体の回復を祈る為に毎日教会に参りますの。 その時わたくしは神にお願いを申し上げますの。旦那様の子が出来ます様にと。
神はわたくしの願いを聞いて下さり、わたくしに子を授けて下さったのです。子は神からの贈り物なのですわ」
「エステル、その様な子供騙しに私が騙されると思うのか」
「本当ですわ」
「もう良い。 チャーリー、子の父は誰だ」
「それは「お願い、言わないで」」
「エステルを部屋の外に一度出す」
騎士がエステル様を無理矢理部屋の外へ連れ出した。部屋の外からエステル様の叫び声が聞こえる。
「チャーリーすまぬ。子の父は誰だ」
「エステル譲は隣国の大公の息子だと思っておいでですが、先程も言った様に大公には娘しかおりません。隠し子もおりません。 子の父親はこの国の孤児院育ちの平民です」
「その証拠はあるのか」
「男の部屋にあると思います。エステル譲の破瓜の印が付いたシーツをお持ちかと」
「だがそれだとエステルと断言出来ぬぞ」
「そうですね。ですが、子が産まれれば分かります。そして公爵家として子が産まれるまでその男を匿うしかない。父親かも知れないからです」
「確かにな」
「それにこれはたまたま聞いた事ですが、エステル譲本人が言っていました。 高貴な自分に相応しい高貴な殿方と子を作り夫の子として育てると。それにその高貴な殿方は毎日エステル譲を愛で、破瓜の印が付いたシーツを持ち帰り宝物にしていると。早く子が宿れば良いのにと腹を撫で言われていると」
「そうか。その男の所在は分かるのか」
「はい。私の情報屋が把握しています」
「そうか。その者を呼べるか」
「ミリー商会へ行けば」
「ミリー商会へ直ぐに使いを出そう」
「では、紙とペンをお貸し頂けますでしょうか」
「ああ」
アーサー父様が机の引き出しから紙とペンを取り出しチャーリーに渡し、チャーリーが手紙を書き、アーサー父様は受け取り騎士に渡した。
「孤児院育ちの平民が何故エステルを騙し子を作ったのだ」
「私もその男と会った事がありませんので分かりませんが、考えられる事はエステル譲に好意を抱いているか、公爵家を乗っ取るつもりだったか、それか多額の金銭を要求するつもりなのか。 どれも違うかも知れませんが」
「嫌、子が産まれれば自分が死ぬまで公爵家を脅し金銭を要求出来る。自分が正当な父だとな。 エステルに好意を抱いていてエステルも好意を持っていたなら愛人になれるしな」
「はい。平民の暮らしは決して貧しくありません。ですが、働かないと暮らしてはいけない。 平民の女性は貴族の愛人になりたい者が多い。貴族程贅沢な暮らしは出来なくとも、働かず暮らしていけるのです。子が出来れば一生面倒を見て貰える」
「そうだな」
「男性も同じ事を考えてもおかしくは無い。ただ、女性の場合、家のお金を自由に使えません。ですから愛人を持つ女性はいない。エミリーヌの様に当主になった者しか愛人は持てません」
「女性が爵位を継げる様になったのも父上が陛下になってからだ。父上は伯母上が国の犠牲になり命を落とした事を悔やんでいた。そして子は男か女しか産まれない。男なら爵位を継げて女なら継げないのはおかしいと、そして産まれた順により爵位を継ぐのはおかしいと、法を変えた。それにより当主に相応しい者を選び、女性でも爵位を持てる様になった」
「はい。それでも数年の話です。愛人を持つ女性当主は男性に比べ明らかに少ないと思います。そしてエステル譲は公爵家の一人娘、爵位を継ぐと思っていたのではないでしょうか」
「確かにな。エステルはお主と婚姻する為、当主にはなれない。公爵家の当主は遠縁の者が継ぐ事になっていた」
「はい。ですが今でも当主になれないとは思ってないはずです」
「だろうな。だが私がエステルを当主にする事を許可出来ない。だから印は押さない」
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