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「私が王として裁きを下す。良いな」
陛下は公爵様を止めていた騎士に目配せし、騎士が公爵様を陛下の御前に連れて来た。
「公爵、お主を子爵まで降下する。領地も没収する。そして新たに子爵に準ずる領地を与える。良いな」
「はい、国王陛下」
「お待ち下さい、お兄様。それは余りにも無慈悲ですわ」
「娘一人教育する事も出来ぬのに無慈悲とな」
「はい」
「教育し直せと私と約束をしたのにも関わらず、私との約束を守らず者に、臣下として信用も信頼も出来ぬ。 貴族籍を剥奪されなかっただけ慈悲と思え」
「そんな…」
「エステル、お主は貴族籍を剥奪する。そして修道院で己の罪と向き合うのだ、良いな」
「そんな、あんまりですわ、おじ様。わたくしに罪などありませんわ」
「己の罪さえ分からぬとはな…。お主は修道院で学び直し、罪と向き合え、良いな」
「おじ様、」
「裁きは覆る事はない。お主達が自分達で招いた結果だ」
「そんな…」
「お主が己の罪と向き合い、反省し、チャーリーに謝罪し、チャーリーが許したなら修道院から出してやる」
エステル様はチャーリーの方を向き、
「チャーリー様、今迄のご無礼謝罪致しますわ。これでよろしくて? 早くわたくしを許しなさい」
「では、エステル譲にとって罪とは何だと思いますか?」
「ふん、元々わたくしに罪などありませんわ。貴方が不貞をしたのが罪であって、わたくしに何の罪がお有りだとお思いで? 高貴なわたくしと婚約出来ただけでも有り難い事ですのに、わたくしの可愛らしい我儘さえ聞けず、ドレスや宝石を捨てたからと言って、他の女に現を抜かしたのは貴方の方ですわ。 それでもこのわたくしが謝罪したのです。早く許しなさい。貴方にはそれ位しか価値はありませんのよ。お分かりで?」
「黙れ!」
突然、陛下の地を這うような、怒りを纏った声が響き渡る。
「エステル、お主は口を開くな、良いな」
「おじ様、」
「私は口を開くなと言った」
「陛下、お許し頂けるのであれば、エステル譲に一つお言葉をかけてもよろしいでしょうか」
「お主が言葉をかけたいのなら私は止めん」
「感謝致します」
チャーリーは私を離し、エステル様の前に行き、
「エステル譲、隣国の大公に息子はいません。娘が二人です。それと隠し子もいません。大公は奥方が幼い頃から激愛なさっていて、半ば強引に婚約し婚姻しました。婚約中は勿論、婚姻してからも奥方を激愛し、他の女性になど見向きもしません。と言うより奥方以外の女性には興味もありません」
チャーリーはそう伝えるとエステル様の表情が見る見るうちに青くなっていきました。
「チャーリー、どう言う意味だ」
「陛下、私の口からは言えません。エステル譲にお聞き下さい」
「エステル、どう言う意味だ。答えろ」
エステル様は首を横に振っている。
「口を開いて良い。答えろ」
それでもエステル様は首を横に振っている。
「チャーリー、すまぬがエステルの代わりに答えてくれないか」
「私の口からお伝えして良い事か…」
「この場では伝えにくい事か?」
「そうですね。 エステル譲の父上と母上が貴族である以上、この場で伝える事は出来ません」
「分かった」
陛下は玉座へ戻り、
「皆の者、中断して悪かった。今宵は心ゆくまで楽しんでくれ」
陛下が演奏を始める様に目配せし、演奏が始まった。場の雰囲気を変える為に、王太子と王太子妃、第二王子と婚約者がダンスを踊った。
公爵家を筆頭に話し始め、会場は元の雰囲気に戻った。
アーサー父様がチャーリーの側に来て、
「チャーリー、陛下が話を聞きたいそうだ。今から別室へ移動する。付いてきなさい」
「父上、エミリーヌも一緒で構いませんか?」
「当たり前だ。 婚約者を一人にするのか」
「そうではありません。エミリーヌが嫌な思いをするのが嫌なだけです」
「ローラも居る、大丈夫だ」
「分かりました」
アーサー父様はローラ母様を抱き寄せ私達の前を歩いて陛下の所に向かっている。ローラ母様の耳元で何かを囁いていて、ローラ母様はアーサー父様に身体を預けている。
「エリーごめん、付き合わせて。帰りたかっただろ?」
「大丈夫よ。私はチャーリーの側に居て離れないから」
「ああ、エリーが側に居ると心強いよ。ありがとう」
チャーリーは私の腰を抱いてる手を自分に抱き寄せる様に力を入れ、私はチャーリーにもたれ掛かった。 チャーリーが額に口付けし、私は周りを確認したら、アーサー父様もローラ母様の額に口付けしていた。
陛下の御前に付き、陛下は王太子殿下にこの場を託し、陛下、王妃様の後ろに付いて行った。
騎士が立つ部屋に入ると、そこにエステル様のお父様とお母様、そしてエステル様がソファーに座り、騎士が側で立っていた。 エステル様の顔色は悪く、青白く、今にも倒れそうな雰囲気だった。
陛下は公爵様を止めていた騎士に目配せし、騎士が公爵様を陛下の御前に連れて来た。
「公爵、お主を子爵まで降下する。領地も没収する。そして新たに子爵に準ずる領地を与える。良いな」
「はい、国王陛下」
「お待ち下さい、お兄様。それは余りにも無慈悲ですわ」
「娘一人教育する事も出来ぬのに無慈悲とな」
「はい」
「教育し直せと私と約束をしたのにも関わらず、私との約束を守らず者に、臣下として信用も信頼も出来ぬ。 貴族籍を剥奪されなかっただけ慈悲と思え」
「そんな…」
「エステル、お主は貴族籍を剥奪する。そして修道院で己の罪と向き合うのだ、良いな」
「そんな、あんまりですわ、おじ様。わたくしに罪などありませんわ」
「己の罪さえ分からぬとはな…。お主は修道院で学び直し、罪と向き合え、良いな」
「おじ様、」
「裁きは覆る事はない。お主達が自分達で招いた結果だ」
「そんな…」
「お主が己の罪と向き合い、反省し、チャーリーに謝罪し、チャーリーが許したなら修道院から出してやる」
エステル様はチャーリーの方を向き、
「チャーリー様、今迄のご無礼謝罪致しますわ。これでよろしくて? 早くわたくしを許しなさい」
「では、エステル譲にとって罪とは何だと思いますか?」
「ふん、元々わたくしに罪などありませんわ。貴方が不貞をしたのが罪であって、わたくしに何の罪がお有りだとお思いで? 高貴なわたくしと婚約出来ただけでも有り難い事ですのに、わたくしの可愛らしい我儘さえ聞けず、ドレスや宝石を捨てたからと言って、他の女に現を抜かしたのは貴方の方ですわ。 それでもこのわたくしが謝罪したのです。早く許しなさい。貴方にはそれ位しか価値はありませんのよ。お分かりで?」
「黙れ!」
突然、陛下の地を這うような、怒りを纏った声が響き渡る。
「エステル、お主は口を開くな、良いな」
「おじ様、」
「私は口を開くなと言った」
「陛下、お許し頂けるのであれば、エステル譲に一つお言葉をかけてもよろしいでしょうか」
「お主が言葉をかけたいのなら私は止めん」
「感謝致します」
チャーリーは私を離し、エステル様の前に行き、
「エステル譲、隣国の大公に息子はいません。娘が二人です。それと隠し子もいません。大公は奥方が幼い頃から激愛なさっていて、半ば強引に婚約し婚姻しました。婚約中は勿論、婚姻してからも奥方を激愛し、他の女性になど見向きもしません。と言うより奥方以外の女性には興味もありません」
チャーリーはそう伝えるとエステル様の表情が見る見るうちに青くなっていきました。
「チャーリー、どう言う意味だ」
「陛下、私の口からは言えません。エステル譲にお聞き下さい」
「エステル、どう言う意味だ。答えろ」
エステル様は首を横に振っている。
「口を開いて良い。答えろ」
それでもエステル様は首を横に振っている。
「チャーリー、すまぬがエステルの代わりに答えてくれないか」
「私の口からお伝えして良い事か…」
「この場では伝えにくい事か?」
「そうですね。 エステル譲の父上と母上が貴族である以上、この場で伝える事は出来ません」
「分かった」
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「皆の者、中断して悪かった。今宵は心ゆくまで楽しんでくれ」
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アーサー父様がチャーリーの側に来て、
「チャーリー、陛下が話を聞きたいそうだ。今から別室へ移動する。付いてきなさい」
「父上、エミリーヌも一緒で構いませんか?」
「当たり前だ。 婚約者を一人にするのか」
「そうではありません。エミリーヌが嫌な思いをするのが嫌なだけです」
「ローラも居る、大丈夫だ」
「分かりました」
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「エリーごめん、付き合わせて。帰りたかっただろ?」
「大丈夫よ。私はチャーリーの側に居て離れないから」
「ああ、エリーが側に居ると心強いよ。ありがとう」
チャーリーは私の腰を抱いてる手を自分に抱き寄せる様に力を入れ、私はチャーリーにもたれ掛かった。 チャーリーが額に口付けし、私は周りを確認したら、アーサー父様もローラ母様の額に口付けしていた。
陛下の御前に付き、陛下は王太子殿下にこの場を託し、陛下、王妃様の後ろに付いて行った。
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