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「貴女、覚悟はできておりますわよね。わたくしに楯突くとは。 わたくし許しませんわ。 貴女を即刻処刑致しますわ」
エステル様は私達を睨みつけている。
「見苦しいぞ!エステル!」
陛下の声が響き渡る。
「おじ様もお聞きになりましたわよね? 即刻この女を処刑して下さいませ」
陛下が私達の所まで歩いて来た。その後ろにはアーサー父様の姿…。
「処刑する理由は何だ」
「王族であるわたくしに楯突いたのですのよ」
「お主は確かに王族の血筋で最も近しい者だ。だが貴族だ、お主にその様な権限はない」
「わたくしはいわれもない事を言われましたのよ?」
「全て本当の事であろう」
「本当の事ではありませんわ。わたくしはここに居る貴族の者達の事を言った訳ではありませんわ。それにその男が不貞をしたのも間違いではありませんわ」
「確かにチャーリーはお主と婚約中に不貞をしたのは事実だ。だがもう裁きは終わった。終わった事をお主はいつまで言うつもりだ」
「それだけわたくしは傷つけられたのですわ」
「傷ついたとな」
「はい、わたくしは傷つけられましたわ」
「ならばチャーリーを傷つけたお主にも裁きを下さないとならんな」
「わたくしはその男を傷つけてなどおりませんわ」
「お主とチャーリーの婚約は七年であったな。その間お主はチャーリーが贈る物を捨て、文句を言い、何処かへ出かければ大声でチャーリーを貶めた。
七年もお主の愚行に耐えたチャーリーが傷つかないと思うのか。
お主達の婚約は私が宰相に頼んだ事だ。チャーリーは時期宰相としての器があったからだ。可愛い姪を託すにはチャーリー以上の者は居ないと思ったからだ。 それに宰相の家系は愛する者を一途に慕う。例え決められた婚約だとしても婚約者に寄り添い大事にし愛する事ができる、慈愛に満ちた者達が多い。 可愛い姪が慈愛に満ちたチャーリーに慕われれば幸せになれると思ったからだ。
チャーリーはお主に何を言われても、下僕の様な扱いをされても愚行に耐え、それでもなお自分を戒め婚約者として在ろうとした。
だがお主はどうだ。 婚約者に寄り添う事もせず、贈られた物を捨て、皆が居る前で婚約者を貶め、さも自分の方が耐えている様に見せかけた。お主は始めからチャーリーを人として見ていなかった。口答え出来ない奴隷の様に扱っていたのだ。違うか!」
「違います。わたくしは婚約者として接していましたわ」
「婚約者として見ていたなら何故、ドレスや宝石を捨てた。 形が気に入らないからか?」
「そうですわ」
「先程エミリーヌが言った様に、職人の誇りを踏み躙る行為だ」
「職人の誇り、それが何ですの?わたくしには関係ありませんわ」
「それならこれからお主は今後、自分の着る物は全て自分で作るのだな。 私が命を下す」
「そんなのあんまりですわ」
「後、色が気に入らないだったか?」
「え、ええ、そうですわ」
「婚約者が婚約者に贈る贈り物は自分の色の物を贈る。自分の色が気に入らないと捨てられたら他人の色を贈れば良いのか?」
「わたくしに似合う色を贈って下さればよろしいのですわ」
「お主は自分の事しか考えられない様だ。自分の色を贈るのはマナーだが、自分の色を贈る思いにお主は寄り添う事もしなかった。
決められた婚約が多い貴族には意に沿わない婚約もあるだろう。 それでもお互いが寄り添う努力をしなければならない。 片方だけ努力をしても駄目なのだ。 片方だけに寄り添う努力をさせるのは下僕と何ら変わらない。 お主はチャーリーにどう寄り添った。申してみよ」
「それは……」
「あ~後、ただの貴族の子はお主は産みたくないのだったな。王族の血筋が入った者との子をチャーリーの子として育てさせるのだったか?」
「え?何故……」
「お主が周りに聞こえる様に話しておったのだろう?」
「ですが本当にするつもりはなかったですわ」
「お主の愚行に耐え続け、下僕の様に扱わられてる者がお主の言葉を信じても仕方あるまい。 不貞をしたチャーリーも悪いが、そうさせたお主にも責任はある。 傷ついたのがお主だけだとは思うな。チャーリーもお主に傷つけられたのだ」
「ですが、わたくし」
「黙れ!」
陛下はチャーリーの方を向いた。
「チャーリーよ、あの時私が姪も同様に裁かなくてはいけなかった。 お主一人に辛い思いをさせた事、本当にすまなかった」
陛下はチャーリーに頭を下げた。
「おやめ下さい、陛下。 不貞をした私が一番悪いのです。陛下が謝る事ではありません」
「だが、あの時、私が裁きを決めるべきだった」
「いえ、平民に落とされ国外追放になった事で私は今の立場を得たのです。ミリー商会の名声を広げ、拡大できたのは、全て愛しい婚約者のお陰です」
チャーリーは私の腰を抱き寄せ、私を愛おしい瞳で見つめる。
「そうか。 だがやはりお主には宰相の器がある」
「いえ、私はミリー商会の経営者です。私はそれだけで充分です」
陛下とチャーリーが話をしている時、エステル様が声を発した。
エステル様は私達を睨みつけている。
「見苦しいぞ!エステル!」
陛下の声が響き渡る。
「おじ様もお聞きになりましたわよね? 即刻この女を処刑して下さいませ」
陛下が私達の所まで歩いて来た。その後ろにはアーサー父様の姿…。
「処刑する理由は何だ」
「王族であるわたくしに楯突いたのですのよ」
「お主は確かに王族の血筋で最も近しい者だ。だが貴族だ、お主にその様な権限はない」
「わたくしはいわれもない事を言われましたのよ?」
「全て本当の事であろう」
「本当の事ではありませんわ。わたくしはここに居る貴族の者達の事を言った訳ではありませんわ。それにその男が不貞をしたのも間違いではありませんわ」
「確かにチャーリーはお主と婚約中に不貞をしたのは事実だ。だがもう裁きは終わった。終わった事をお主はいつまで言うつもりだ」
「それだけわたくしは傷つけられたのですわ」
「傷ついたとな」
「はい、わたくしは傷つけられましたわ」
「ならばチャーリーを傷つけたお主にも裁きを下さないとならんな」
「わたくしはその男を傷つけてなどおりませんわ」
「お主とチャーリーの婚約は七年であったな。その間お主はチャーリーが贈る物を捨て、文句を言い、何処かへ出かければ大声でチャーリーを貶めた。
七年もお主の愚行に耐えたチャーリーが傷つかないと思うのか。
お主達の婚約は私が宰相に頼んだ事だ。チャーリーは時期宰相としての器があったからだ。可愛い姪を託すにはチャーリー以上の者は居ないと思ったからだ。 それに宰相の家系は愛する者を一途に慕う。例え決められた婚約だとしても婚約者に寄り添い大事にし愛する事ができる、慈愛に満ちた者達が多い。 可愛い姪が慈愛に満ちたチャーリーに慕われれば幸せになれると思ったからだ。
チャーリーはお主に何を言われても、下僕の様な扱いをされても愚行に耐え、それでもなお自分を戒め婚約者として在ろうとした。
だがお主はどうだ。 婚約者に寄り添う事もせず、贈られた物を捨て、皆が居る前で婚約者を貶め、さも自分の方が耐えている様に見せかけた。お主は始めからチャーリーを人として見ていなかった。口答え出来ない奴隷の様に扱っていたのだ。違うか!」
「違います。わたくしは婚約者として接していましたわ」
「婚約者として見ていたなら何故、ドレスや宝石を捨てた。 形が気に入らないからか?」
「そうですわ」
「先程エミリーヌが言った様に、職人の誇りを踏み躙る行為だ」
「職人の誇り、それが何ですの?わたくしには関係ありませんわ」
「それならこれからお主は今後、自分の着る物は全て自分で作るのだな。 私が命を下す」
「そんなのあんまりですわ」
「後、色が気に入らないだったか?」
「え、ええ、そうですわ」
「婚約者が婚約者に贈る贈り物は自分の色の物を贈る。自分の色が気に入らないと捨てられたら他人の色を贈れば良いのか?」
「わたくしに似合う色を贈って下さればよろしいのですわ」
「お主は自分の事しか考えられない様だ。自分の色を贈るのはマナーだが、自分の色を贈る思いにお主は寄り添う事もしなかった。
決められた婚約が多い貴族には意に沿わない婚約もあるだろう。 それでもお互いが寄り添う努力をしなければならない。 片方だけ努力をしても駄目なのだ。 片方だけに寄り添う努力をさせるのは下僕と何ら変わらない。 お主はチャーリーにどう寄り添った。申してみよ」
「それは……」
「あ~後、ただの貴族の子はお主は産みたくないのだったな。王族の血筋が入った者との子をチャーリーの子として育てさせるのだったか?」
「え?何故……」
「お主が周りに聞こえる様に話しておったのだろう?」
「ですが本当にするつもりはなかったですわ」
「お主の愚行に耐え続け、下僕の様に扱わられてる者がお主の言葉を信じても仕方あるまい。 不貞をしたチャーリーも悪いが、そうさせたお主にも責任はある。 傷ついたのがお主だけだとは思うな。チャーリーもお主に傷つけられたのだ」
「ですが、わたくし」
「黙れ!」
陛下はチャーリーの方を向いた。
「チャーリーよ、あの時私が姪も同様に裁かなくてはいけなかった。 お主一人に辛い思いをさせた事、本当にすまなかった」
陛下はチャーリーに頭を下げた。
「おやめ下さい、陛下。 不貞をした私が一番悪いのです。陛下が謝る事ではありません」
「だが、あの時、私が裁きを決めるべきだった」
「いえ、平民に落とされ国外追放になった事で私は今の立場を得たのです。ミリー商会の名声を広げ、拡大できたのは、全て愛しい婚約者のお陰です」
チャーリーは私の腰を抱き寄せ、私を愛おしい瞳で見つめる。
「そうか。 だがやはりお主には宰相の器がある」
「いえ、私はミリー商会の経営者です。私はそれだけで充分です」
陛下とチャーリーが話をしている時、エステル様が声を発した。
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