妹がいなくなった

アズやっこ

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「もうそろそろ良いと思うけどどう?」


 一通りダンスを踊り、談笑してる人達が多くなった。ダンスを踊ってる人達を見てない人達も多く、若い世代の子達がダンスを踊ってる。


「そうね」

「愛しい婚約者エミリーヌ、私とダンスを踊って頂けますか?」

「はい、喜んで」


 私はチャーリーにエスコートされダンスフロアに来た。前奏が始まり礼をしてダンスを踊った。チャーリーの動きに身を任せてるだけだから足を踏む事なく踊り終えた。 礼をしてエスコートされ壁際へ来た。


「上手く踊れてたよ?」

「それはチャーリーが上手だからよ。私はチャーリーに預けてただけだもの」

「足は踏まなかった」

「それは本当に良かった」

「少し涼みにバルコニーへ行く?」

「そうね、少し涼みたいかも」


 私はチャーリーとバルコニーへ来た。バルコニーで談笑してる人や婚約者同士でお話してる人も居た。私達は誰も居ないバルコニーで涼む事にした。バルコニーに置いてあるソファーに座り、チャーリーが横に座った。チャーリーの手が私の腰に回され、引き寄せられた。ぴったりと寄り添い私はチャーリーにもたれ掛かった。


「疲れた?」

「流石に疲れたわ。夜会初めてだし、こんなに人が居る所なんて学園に通ってた振りよ?学園だって教室と食堂しか行かないからこんなに大勢じゃなかったわ」


 チャーリーは自分の上着を私の肩に掛け、また抱き寄せた。


「エリー、さっきみたいにもたれ掛かってくれないの?」

「良いの?重くない?」

「重くないよ。俺に甘えてるって思えて嬉しかった」

「チャーリーに甘えっぱなしよ?」

「それで良いんだよ。俺は嬉しい」


 私はチャーリーに身を預けた。


「チャーリーの元婚約者に会わなかったわね」

「夜会とか好んで行く人だったから何処かに居ると思うけどね」

「そうね。終わるまでここにいよ?」

「寒くない?」

「寒くない。チャーリーが温かいもの」


 チャーリーは私の手を取り口付けした。耳元で、


「口付けしても分からないと思わない?」

「は?」

「バルコニーに来る人なんて二人きりの時間を過ごしたい人か、人に聞かれたくない話をする人しか来ないよ。そういう人は他人なんて気にしない。それに隣のバルコニーは少し離れてるからこれだけ薄暗ければ顔は見えないよ。エリー、口付けしたい」

「もう!」

「なら膝の上に座る?」

「どっちも恥ずかしいわよ」

「そうだよね、残念」


 チャーリーの顔が俯いた。私は耳元で、


「口付けなら…」

「本当?無理してない?」

「恥ずかしいだけで嫌じゃないもの」


 チャーリーの手が私の頬を包み、唇が重なった。


「エリー、愛してる」

「私も愛してる」


 私達は見つめ合い、自然と唇が重なる。


「ふふっ」

「どうしたの?」

「口付けが自然だなって思ったの。自然と一部になってる」

「そうだね」

「前はドキドキしていっぱいいっぱいだったけど、今は安心する」

「もうドキドキしないの?」

「ドキドキするけど安心する方が強いかも」

「俺もエリーと口付けすると安心する。嫌がられてない、嫌われてない、愛されてるって確認出来る」

「嫌じゃないし嫌ってないわよ?チャーリーの嫌な所なんてないじゃない」

「ほら、近くに居たらすぐ側に寄るし、離さないし、すぐ口付けしたくなる」

「それの何処が嫌な事なの?」

「エリーは平気?」

「平気も何も、目に見える愛情表現は私には嬉しいわ。チャーリーの気持ちを疑う事はないけど、距離を取られると寂しい。婚姻前だし駄目な事は分かるけど、もし今日から一緒に寝ないって言われると不安になる」

「俺も不安になるよ。エリーを抱き締めて寝れなくなるなんて寂しいし不安になる」

「うん。チャーリーが隣に居るって思うと安心する」

「今日も抱き締めて寝るからね?」

「うん」


 チャーリーの唇が私の唇に重なった。

 暫くバルコニーに居たけどやっぱり少し寒くなって、


「クシュン」

「寒い?」

「少し冷えてきたかも」

「中入ろうか」

「うん」


 会場の中に入ったら遠くの目線の先、


「居たわね」

「誰が?」

「元婚約者、ほらあそこ」

「本当だね。でも関係ないし気にしないでおこう」

「そうね。 でも、何か顔色悪くない?」


 チャーリーの元婚約者の顔色が悪く、ハンカチで口元を隠してる。


「あ~、神に祈って贈り物をされたみたいだね」

「え?」

「俺達には関係ない、行こう」


 チャーリーに腰を抱かれ元婚約者とは離れた壁際に来た。


「ねえ、子が出来たって事?」

「そうらしいよ」

「例の人の?」

「だろうね」

「馬鹿なの?」

「相手は居ない、神に祈って出来た子だから」

「それが通用すると本当に思ってる?」

「さあ?」


 私は呆れた眼差しで元婚約者を見た。


「どうなろうとも俺達には関係ない事だよ」

「そうだけど、ご両親も知ってるの?」

「旦那の子だと思ってるんじゃない?」

「心を病んでる人でしょ? その、」

「何?」

「子が出来る行為が出来るものなの?」

「普通は無理だろうね」

「どう言う事?」

「心を病んでる人は欲は余り持たないんじゃないかな? 自分の殻に閉じ籠もり今の自分を楽にしたいと思って死に執着する。 欲はどちらかと言えば生の方だ。生きたい、子孫を残したいといった生の行為だと俺は思うよ」

「でも、死に執着するなら余計に子孫を残したいって思うんじゃない?」

「確かにそれも一理あると思う。それでもいつも死に執着すると自分をなくし兼ねない。死にたい、死にたくないと自分の中で葛藤がうまれる。誰だって死は怖い。暴力的に欲を吐き出し自分を護る事もあると思うよ」

「そうね」

「それでも暴力的に欲を吐き出した自分の行為に後悔して自分を責める。そしてまた死に執着するんだ」

「あの人と婚姻した自分が悪いんじゃない」

「地位が欲しいと思う男は多いと思うよ」

「確かにね」

「それでも気の毒とは思うけどね」

「そうね。 多少の王族の血が混ざってる自分なら酷い仕打ちはされないだろうと思ってただろうし」


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