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「私が学園に入学して直ぐの頃、没落寸前の男爵なんてほぼ平民なの。だからね、同じ歳の令嬢に「没落寸前のくせによく学園に通えるわね」ってよく言われたの。言い返す事も出来ないわ。私は男爵家。相手は男爵より上の貴族だったから。毎日のように言われても我慢して耐えていたの。そんな時にね、ヘレン様が通りがかって言ってくれたの。
「学園の中では皆平等なの。王族だろうが男爵だろうがね。没落寸前でもよ? それで一人を寄ってたかって責めるのは違うわ。 学園は勉学を学びに来ていて、将来を決める場所。 貴女達も自分の評価を下げる行動は慎みなさい。 家名や背景を気にするのでは無くて、一個人として彼女を見なさい。 私から見た彼女は我慢強く凛としていて格好いいわ。それに比べて貴女達はどう?数人集まらないと責める事も出来ない。それも自分よりも格下の彼女を彼女の家を見下し侮辱した。 意中の男性が選ぶとしたらどちらの令嬢を選ぶと思う? 我慢強い令嬢か見下し責める令嬢か。 よく考えなさい。そして人から見られる己の行動をよく見直しなさい。貴女達は素敵なご令嬢ですもの。本来の貴女達の姿は友を大切に出来る心優しい方々よ?そうでしょ?いつも一緒に行動して仲の良い方々だもの。友を大切にしている証拠だわ」
ヘレン様に言われた令嬢達はそれきり何も私に言って来なかったわ。
その時私はヘレン様をお慕いしたの。ヘレン様こそが憧れる女性であり、とても凛とした格好いい女性で心優しい慈悲深い女性だと思ったの。
ある時、友人の家で夜会があってね私も招待されて行ったの。夜会で着るドレスなんて買えないから母親が着ていた昔のドレスを少し手直ししてね。それでも一昔前のドレスの印象は変わらないわ。私は壁の華になって終わるのを待っていたの。その時にね、学年の違う令嬢が私の所に来てドレスをけなしたわ。ドレスも買えないのかって。良くそんなドレスで夜会に来れたって。学園の外だから上下ははっきりしている。歳は私の方が上でも家は下、だからじっと耐えたわ。そしたらまたヘレン様が私を助けてくれたの。たまたま来ていたヘレン様が壁の華になってる私を見つけて声をかけようとしていたみたいでね。
「まあ素敵なドレスだわ。もしかしてお母様のドレスかしら」
「は、はい」
「まあ素敵。お母様のドレスを娘が着る。こんな素敵な事は無いわ。親子二代でドレスを着て貰えてドレスを制作した職人さんは大喜びね。それに流石お母様のドレスだわ。昔のドレスは生地がしっかりしていて型崩れもしない。あら、手直ししたの?」
「は、はい」
「お母様のドレスをご自分で手直しして大事に着る。刺繍も素敵に出来上がってるわ。私も今度はお母様のドレスを手直しして着るわ。親から子へ大切な物を贈る。それって親の愛情が溢れてるって事よ? 家宝を贈るのと一緒よ? いつか嫁ぐ娘の為に母親から娘への素敵な贈り物だわ」
と仰ってね。からかいに来た令嬢達はヘレン様の迫力に負けて何処かへ行ってしまったわ。
「貴女は入学して直ぐに令嬢に絡まれてた子よね?」
「はい…」
「やっぱり。そうかもと思って声をかけようと思ってたの。あれからお話する機会も無く私卒業したでしょ?少し気になってて。あれから何も言われない?」
「はい。その節はありがとうございました」
「それよりも貴女!」
「はい」
「お母様のお古のドレスで恥ずかしいと思ってるの?」
「はい。一昔前のドレスですから」
「一昔前のドレスであってもドレスは着る人の心を表すのよ?貴女が恥ずかしいと思って着ていれば古臭く見えるの。貴女の心一つでドレスは華やかにも見えるし古く見える。良い?」
「はい」
「これからお母様のドレスを着てお茶会や夜会に出席する時は着る前に自分の心に言いなさい。
【私はお母様の愛情やこのドレスに思う気持ち全てを受け取って受け継ぐの】
って。
良い? お母様がこのドレスを着た時の気持ちは分からないわ。だけどね、何年も大事に大切に保管したのはドレスを大事に大切に思っていたから。その思いは恥ずべき事ではないの。それに、ドレスを作ってくれたお針子さんにも失礼だわ。お針子さんは一縫い一縫い丁寧に魂を込めて縫いあげるの。お針子さんにも敬意を持たなくてはいけないわ。
貴女が恥ずかしいと思う気持ちはお母様の思いもお針子さんへの敬意も無にしてしまう行為なの。分かるわね?」
「はい」
「これからは堂々としなさい。胸を張りなさい。下を見ず真っ直ぐ見なさい」
「はい」
「そしたら誰にも何も言われないわ。素敵なドレスは何年たっても素敵なのよ」
「はい」
ヘレン様は本当に次のお茶会の時にお母様のドレスを手直しして着てきたらしいの。堂々と胸を張り、お母様の愛情が溢れてると言って。それから娘に大切なドレスを贈る人が増えたのよ?」
「そうだったんですね」
「学園の中では皆平等なの。王族だろうが男爵だろうがね。没落寸前でもよ? それで一人を寄ってたかって責めるのは違うわ。 学園は勉学を学びに来ていて、将来を決める場所。 貴女達も自分の評価を下げる行動は慎みなさい。 家名や背景を気にするのでは無くて、一個人として彼女を見なさい。 私から見た彼女は我慢強く凛としていて格好いいわ。それに比べて貴女達はどう?数人集まらないと責める事も出来ない。それも自分よりも格下の彼女を彼女の家を見下し侮辱した。 意中の男性が選ぶとしたらどちらの令嬢を選ぶと思う? 我慢強い令嬢か見下し責める令嬢か。 よく考えなさい。そして人から見られる己の行動をよく見直しなさい。貴女達は素敵なご令嬢ですもの。本来の貴女達の姿は友を大切に出来る心優しい方々よ?そうでしょ?いつも一緒に行動して仲の良い方々だもの。友を大切にしている証拠だわ」
ヘレン様に言われた令嬢達はそれきり何も私に言って来なかったわ。
その時私はヘレン様をお慕いしたの。ヘレン様こそが憧れる女性であり、とても凛とした格好いい女性で心優しい慈悲深い女性だと思ったの。
ある時、友人の家で夜会があってね私も招待されて行ったの。夜会で着るドレスなんて買えないから母親が着ていた昔のドレスを少し手直ししてね。それでも一昔前のドレスの印象は変わらないわ。私は壁の華になって終わるのを待っていたの。その時にね、学年の違う令嬢が私の所に来てドレスをけなしたわ。ドレスも買えないのかって。良くそんなドレスで夜会に来れたって。学園の外だから上下ははっきりしている。歳は私の方が上でも家は下、だからじっと耐えたわ。そしたらまたヘレン様が私を助けてくれたの。たまたま来ていたヘレン様が壁の華になってる私を見つけて声をかけようとしていたみたいでね。
「まあ素敵なドレスだわ。もしかしてお母様のドレスかしら」
「は、はい」
「まあ素敵。お母様のドレスを娘が着る。こんな素敵な事は無いわ。親子二代でドレスを着て貰えてドレスを制作した職人さんは大喜びね。それに流石お母様のドレスだわ。昔のドレスは生地がしっかりしていて型崩れもしない。あら、手直ししたの?」
「は、はい」
「お母様のドレスをご自分で手直しして大事に着る。刺繍も素敵に出来上がってるわ。私も今度はお母様のドレスを手直しして着るわ。親から子へ大切な物を贈る。それって親の愛情が溢れてるって事よ? 家宝を贈るのと一緒よ? いつか嫁ぐ娘の為に母親から娘への素敵な贈り物だわ」
と仰ってね。からかいに来た令嬢達はヘレン様の迫力に負けて何処かへ行ってしまったわ。
「貴女は入学して直ぐに令嬢に絡まれてた子よね?」
「はい…」
「やっぱり。そうかもと思って声をかけようと思ってたの。あれからお話する機会も無く私卒業したでしょ?少し気になってて。あれから何も言われない?」
「はい。その節はありがとうございました」
「それよりも貴女!」
「はい」
「お母様のお古のドレスで恥ずかしいと思ってるの?」
「はい。一昔前のドレスですから」
「一昔前のドレスであってもドレスは着る人の心を表すのよ?貴女が恥ずかしいと思って着ていれば古臭く見えるの。貴女の心一つでドレスは華やかにも見えるし古く見える。良い?」
「はい」
「これからお母様のドレスを着てお茶会や夜会に出席する時は着る前に自分の心に言いなさい。
【私はお母様の愛情やこのドレスに思う気持ち全てを受け取って受け継ぐの】
って。
良い? お母様がこのドレスを着た時の気持ちは分からないわ。だけどね、何年も大事に大切に保管したのはドレスを大事に大切に思っていたから。その思いは恥ずべき事ではないの。それに、ドレスを作ってくれたお針子さんにも失礼だわ。お針子さんは一縫い一縫い丁寧に魂を込めて縫いあげるの。お針子さんにも敬意を持たなくてはいけないわ。
貴女が恥ずかしいと思う気持ちはお母様の思いもお針子さんへの敬意も無にしてしまう行為なの。分かるわね?」
「はい」
「これからは堂々としなさい。胸を張りなさい。下を見ず真っ直ぐ見なさい」
「はい」
「そしたら誰にも何も言われないわ。素敵なドレスは何年たっても素敵なのよ」
「はい」
ヘレン様は本当に次のお茶会の時にお母様のドレスを手直しして着てきたらしいの。堂々と胸を張り、お母様の愛情が溢れてると言って。それから娘に大切なドレスを贈る人が増えたのよ?」
「そうだったんですね」
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