妹がいなくなった

アズやっこ

文字の大きさ
上 下
86 / 187

85

しおりを挟む
「お祖母様が私を手元に置いて育てたからと言って自分は赤子を取り上げられた被害者なのだと」

「うん」

「お祖母様が邸を出て行って自分が育てないといけないと分かっていても、赤子から育ててない子に愛情は湧かないと言い訳して」

「うん」

「結局、産み落とし育児を放棄した現実から目を背けて自分を護っただけ」

「うん」

「お祖母様のせいにして」

「うん」

「私のせいにして」

「うん」

「結局お父様もお母様も自分を護る為に私を犠牲にしただけ」

「うん」

「お父様は婚姻した後に出来たサラをサラだけを自分の子と言った」

「うん」

「お母様は自分で育て愛したサラをサラだけが自分の子と思えたと言った」

「うん」

「結局自分達の失態を認める事が出来ず、現実から目を背けて、自分達の行いを正当化し、自分達を護った」

「うん」

「私は望まれずに勝手に宿った子。望まれずに勝手に産まれた子。望まれずに…………ううっ」

「うん」


 チャーリーの優しい手が優しく宥める様に背中を撫でる。


「ううっ、両親に…捨てられた…子……ううっ」

「うん」

「ううっ、ううっ、ううっ」

「うん」

「ううっ、うわぁぁぁん、うわぁぁぁん」

「うん。思いきり泣きな」

「ううっ、うわぁぁぁぁん、うわぁぁぁぁん」

「よしよし…」

「うわぁぁぁぁぁん、うわぁぁぁぁぁん」

「エミリーヌ愛してる」

「うわぁぁぁぁぁん、うわぁぁぁぁぁん」

「愛してる…愛してるよ…俺はエミリーヌを愛してる」

「うわぁぁぁぁぁん、うわぁぁぁぁぁん」

「愛してる、愛してる、俺の愛しいエミリーヌ、俺の可愛いエミリーヌ、愛してる」


 チャーリーは私が泣いてる間、ずっと、愛してる、愛してると繰り返し言った。

 暫く泣いた私は、涙がようやく止まった。


「エミリーヌ」

「ん?(ズズッ)」

「君のご両親を悪く言いたく無いけど、責任が取れない行為はするべきじゃない」

「うん」

「俺も人の事を言える立場ではない。結婚する前に身体を繋げてた訳だしね」

「うん」

「だけど俺は子が宿ったら責任を取るつもりで身体を繋げてた。もし恋人に子が宿ったとしても無責任に放おり投げる事なんてしない。だって自分の子だよ?子が宿ったら嬉しいし喜ぶよ」

「うん」

「確かに母上の言う様にご両親は心が子供だったのかも知れない。現実から目を背けないと自分を護れなかったのかも知れない」

「うん」

「でもね、身体を繋げる以上、女性にも、宿った子にも責任が取れないなら繋げるべきじゃない」

「うん」

「確かに身体を繋げれば快楽はある。また繋げたいと思う欲も出てくる。だけど、二人で愛し合う行為だ。嫌なら断らないといけないし、我慢しないといけない」

「うん」

「嫌と言えず断れなかった、我慢出来ず半ば無理矢理でも身体を繋げた。それはね、どちらかが悪いんじゃない。どっちも悪いんだ。悪いのは君のご両親で君じゃない」

「うん」

「行為をせず子が宿るかい?」

「ううん」

「行為をするから子が宿るんだ」

「うん」

「行為をしたのはご両親だ。子が出来て困るならそもそもしなければ良い。結婚してから出来た子しか認められないなら初めから結婚してから身体を繋げれば良かったんだ」

「うん」

「心が子供だったから?子が宿るとは思わなかったから?自分の子か信用出来ないから?そんなもの何の理由にもならない」

「うん」

「君の言う様に子には悪いけど堕胎という選択もあった。それを選択しなかったのはご両親だ」

「うん」

「産む事を決めたなら、産まれた子が例え自分の子じゃなくて愛さないといけない。子として育てないといけない。それが子に対する敬意だ」

「うん」

「子は神聖な者で神から与えられた贈り物だ」

「うん」

「自分を護る為に敵意を持ったり、蔑ろにしたりするべきじゃない」

「うん」

「自分で育てたから手を掛けたから愛せて、自分で育てなかったから手を掛けなかったから愛せない。確かに人は情の生き物だ」

「うん」

「母親は子を腹で宿す」

「うん」

「日々大きくなるお腹。腹の中で動く子を常に感じてるのは母親だ」

「うん」

「産まれる前から情を持てたはずだ」

「うん」

「腹の中で子供を育ててるんじゃないのか?」

「うん」

「それを産んで育てた過程だけで愛情が変わる母親なんて居ない方がましだ」

「うん」

「確かに君はご両親に捨てられた。君が宿った段階で捨てられた。腹が大きくなり産まれるから産んだだけ。確かにそうだ」

「……う…ん………」

「けど俺は君を産んでくれて良かったよ。君が産まれてなければ君と出会わなかった。出会わなければ俺は死んでいた。君と出会わなかったらもう一度人を信じる事も人を頼る事も人を愛す事も出来なかった。俺は君とエミリーヌと出会ったから人を信じる事も頼る事も出来た。それに愛する人を、護りたい人を、側に居て欲しい人を、離したくない人と出会えた」

「うん」

「俺の愛情だけでは不満かい?」

「ううん」

「俺がエミリーヌだけ側に居て欲しいと願うのは嫌かい?」

「ううん」

「俺が離したくないと思うのは嫌かい?」

「ううん」

「俺はエミリーヌが必要だ。エミリーヌが居ないなら俺は生きる意味がない。生きる希望もない」

「うん」

「俺の愛する人。俺の愛を受け取ってくれるかい?」

「うん」

「愛してる」

「うん」

「愛しい」

「うん」

「可愛い」

「うん」

「俺の為に産まれてきてくれてありがとう」

「チャーリーの為?」

「そう。俺の為。俺の生きる意味で希望だから」

「うん」

「俺の為に産まれてきてくれてありがとう」

「うん。ううっ……ううっ……」


 チャーリーは優しく背中を撫でてくれた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済み】妹に婚約者を奪われたので実家の事は全て任せます。あぁ、崩壊しても一切責任は取りませんからね?

早乙女らいか
恋愛
当主であり伯爵令嬢のカチュアはいつも妹のネメスにいじめられていた。 物も、立場も、そして婚約者も……全てネメスに奪われてしまう。 度重なる災難に心が崩壊したカチュアは、妹のネメアに言い放つ。 「実家の事はすべて任せます。ただし、責任は一切取りません」 そして彼女は自らの命を絶とうとする。もう生きる気力もない。 全てを終わらせようと覚悟を決めた時、カチュアに優しくしてくれた王子が現れて……

父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる

兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

裏切りの代償

志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。 家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。 連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。 しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。 他サイトでも掲載しています。 R15を保険で追加しました。 表紙は写真AC様よりダウンロードしました。

一番悪いのは誰

jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。 ようやく帰れたのは三か月後。 愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。 出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、 「ローラ様は先日亡くなられました」と。 何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・

【完結】「冤罪で処刑された公爵令嬢はタイムリープする〜二度目の人生は殺(や)られる前に殺(や)ってやりますわ!」

まほりろ
恋愛
【完結しました】 アリシア・フォスターは第一王子の婚約者だった。 だが卒業パーティで第一王子とその仲間たちに冤罪をかけられ、弁解することも許されず、その場で斬り殺されてしまう。 気がつけば、アリシアは十歳の誕生日までタイムリープしていた。 「二度目の人生は|殺《や》られる前に|殺《や》ってやりますわ!」 アリシアはやり直す前の人生で、自分を殺した者たちへの復讐を誓う。 敵は第一王子のスタン、男爵令嬢のゲレ、義弟(いとこ)のルーウィー、騎士団長の息子のジェイ、宰相の息子のカスパーの五人。 アリシアは父親と信頼のおけるメイドを仲間につけ、一人づつ確実に報復していく。 前回の人生では出会うことのなかった隣国の第三皇子に好意を持たれ……。 ☆ ※ざまぁ有り(死ネタ有り) ※虫を潰すように、さくさく敵を抹殺していきます。 ※ヒロインのパパは味方です。 ※他サイトにも投稿しています。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 ※本編1〜14話。タイムリープしたヒロインが、タイムリープする前の人生で自分を殺した相手を、ぷちぷちと潰していく話です。 ※番外編15〜26話。タイムリープする前の時間軸で、娘を殺された公爵が、娘を殺した相手を捻り潰していく話です。 2022年3月8日HOTランキング7位! ありがとうございます!

待つわけないでしょ。新しい婚約者と幸せになります!

風見ゆうみ
恋愛
「1番愛しているのは君だ。だから、今から何が起こっても僕を信じて、僕が迎えに行くのを待っていてくれ」彼は、辺境伯の長女である私、リアラにそうお願いしたあと、パーティー会場に戻るなり「僕、タントス・ミゲルはここにいる、リアラ・フセラブルとの婚約を破棄し、公爵令嬢であるビアンカ・エッジホールとの婚約を宣言する」と叫んだ。 婚約破棄した上に公爵令嬢と婚約? 憤慨した私が婚約破棄を受けて、新しい婚約者を探していると、婚約者を奪った公爵令嬢の元婚約者であるルーザー・クレミナルが私の元へ訪ねてくる。 アグリタ国の第5王子である彼は整った顔立ちだけれど、戦好きで女性嫌い、直属の傭兵部隊を持ち、冷酷な人間だと貴族の中では有名な人物。そんな彼が私との婚約を持ちかけてくる。話してみると、そう悪い人でもなさそうだし、白い結婚を前提に婚約する事にしたのだけど、違うところから待ったがかかり…。 ※暴力表現が多いです。喧嘩が強い令嬢です。 ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。魔法も存在します。 格闘シーンがお好きでない方、浮気男に過剰に反応される方は読む事をお控え下さい。感想をいただけるのは大変嬉しいのですが、感想欄での感情的な批判、暴言などはご遠慮願います。

両親も義両親も婚約者も妹に奪われましたが、評判はわたしのものでした

朝山みどり
恋愛
婚約者のおじいさまの看病をやっている間に妹と婚約者が仲良くなった。子供ができたという妹を両親も義両親も大事にしてわたしを放り出した。 わたしはひとりで家を町を出た。すると彼らの生活は一変した。

処理中です...