妹がいなくなった

アズやっこ

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「俺に心を隠して誰なら心を見せれるの?グレンさん?」

「何でそんな事言うの?」

「エミリーヌをエミリーヌの心を支え護ってきたのはグレンさんだよ?」

「うん」

「もしエミリーヌが俺ではなくグレンさんなら心を許せて見せれるのなら今のエミリーヌを救えるのはグレンさんだけだよ?悔しいけどね。 でもね、グレンさんがエミリーヌを助けれるなら今はグレンさんに俺は頼るよ。 このままエミリーヌの心を傷付けたままにしたくないから」

「うん」

「俺は無理に心を見せて欲しい訳じゃない」

「うん」

「エミリーヌが大事で大切だ」

「うん」

「だからエミリーヌの心を護りたい」

「うん」

「グレンさんなら見せられるならグレンさんに俺の愛する人を救って欲しい」

「うん」

「グレンさんの所に行く?」

「嫌!」

「エミリーヌ、心の傷は自分では見えない。そうだろ? 放おっておけばいつか重石になって動けなくする。怪我をして傷を作っても傷付いた時に処置をすれば早く治る。だけど放おっておくと膿んで化膿して治りがどんどん遅くなる。分かるよね?」

「うん」

「心の傷も一緒だよ?」

「うん…」

「グレンさんの所に行こう。俺はずっとエミリーヌの側に居る。離れない」

「嫌、嫌、嫌……」

「エミリーヌ」

「グレンも大事。大切な家族なの。だけど違う」

「グレンさんもエミリーヌを愛してる」

「分かってる。私もグレンの事愛してる。だけど違う。家族なの」

「エミリーヌ、俺はエミリーヌを離さないよ?グレンさんにエミリーヌを渡さないよ? グレンさんがエミリーヌを家族の様に妹の様に思ってるのも愛してるのも知ってる。 今のエミリーヌに恋人としての愛情より家族としての愛情が必要だと思ったからだよ?」

「それでもチャーリーが良いの。今側に居て欲しいのはチャーリー」

「分かった。側に居る」


 チャーリーは私を優しく包み込む様に抱き締めた。 何も言わず優しく背中を撫でる。

 暫くして、私はポツリポツリと話出した。


「私は…愛して…欲しかった…。どうして…愛して…くれない…のか…見て…くれない…のか…、自分…が…何を…して…何が…気にくわない…のか…考えても…考えても…分からなくて。辛…かった…。悲し…かった…。

お父様の…気持ち…お母様の…気持ち

ようやく…知れて………」

「うん」

「身体を繋げて宿った子を……」

「うん」

「どうして…自分の子だと…思えないの?」

「うん」

「どうして自分以外の…男性…だと思うの?」

「うん」

「自分の子だと思えないのなら…堕胎させれば良かったのよ」

「うん」

「そうすれば私は産まれなかった」

「うん」

「堕胎せず産ませたのに」

「うん」

「産まれても自分の子として認めなかった」

「うん」

「自分と同じ髪も瞳を持って産まれてきても」

「うん」

「認められず……」

「うん」

「…………他人…の…子…だと…」

「うん」

「ねぇチャーリー、前にローラ母様が言ってたでしょ? お父様とお母様は私を宿した時、産んだ時、まだ子供だったって」

「うん」

「現実から目を背けて見ようとしなかった。ううん、見たくなかった。 身体を繋げれば子が出来ると知ってても、まさか自分が失敗するとは思ってなかった。自分の失態を認められず目を背けて…」

「うん」

「宿った子のせいにした」

「うん」

「そうする事で自分の失態を隠したの。自分は悪くない。悪いのは宿った子だって。自分を護る為に」

「うん」

「だから憎んだ。だから初めから居ない者として扱った」

「うん」

「自分の快楽を優先して、嫌がる婚約者を言葉巧みに言い包めて快楽を楽しんだ」

「うん」

「お母様も嫌なら拒否すれば良かったのよ。それで離れる人ならそんな人やめれば良かったの。嫌と言いながら受け入れたなら…」

「うん」

「それはもう同じだわ。受け入れ身体を繋げたのはお母様。快楽を優先したのは自分もなのよ」

「うん」

「宿した子を堕胎せず産んだのもお母様」

「うん」

「赤子が居るのに身体を繋げたのもお父様とお母様」

「うん」

「子が出来ると知っていても欲に負け身体を繋げた」

「うん」

「それで子が宿れば自分の身体を優先した」

「うん」

「子を宿しても赤子を抱きあやす事は出来るわ。おしめを替える事だって。育てる事は出来る。接する事は出来る。顔を見るだけでも、撫でるだけでも出来たはず」

「うん」

「それをしなかったのはお母様」

「うん」

「しなかった事を出来なかったと言い、出来ない自分は悪くないと、出来なくても仕方ないと言って逃げたの」

「うん」

「私から先に逃げたのはお母様」

「うん」

「逃げたお母様はきっと心の中で罪悪感がうまれた。罪悪感を隠す為にサラを愛した」

「うん」

「サラを愛する事で自分を正当化したの。自分は子供を自分の手で育てた子供は愛する事が出来る母親なのだと」

「うん」

「サラを愛し大事に大切に育てる事で自分を護った」

「うん」

「初めから私を居ない者とする事で自分を護ったの」

「うん」

「産み落とし育児を放棄した自分を」

「うん」


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