妹がいなくなった

アズやっこ

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81 書斎の中の会話2

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「お前は何故当主の仕事をしなかった」

「それは…」

「お前も貴族学園を卒業した貴族だ。学園でも習ったはずだ。当主とは何だ」

「当主とは家の長です」

「家の長な」

「はい」

「家の長なら家の長らしく何をしないといけない」

「え?」

「自分達だけ欲しい物を買い、自分達だけ美味しい物を食べ、自分達だけ着飾れば良いのか?」

「ですが我々は貴族です」

「貴族なら働かなくてもお金が入ると思うのか?」

「領地の平民が我々の代わりに働きお金を稼ぎます」

「領地の平民は働きお金を稼ぐ。それなら平民は自分達で稼いだお金を自分達で使えば良いと思わないか?」

「侯爵家の領地です。そこで暮らす以上侯爵へ尽くすのが道理ではありませんか」

「それなら他領へ行った方が良い。働くだけ働かせて何も恩恵がなければ侯爵領にいる意味はない。平民は自由だ。侯爵領が嫌なら出て行く」

「それでは侯爵領が回りません」

「なら平民に交渉する術があるか? 平民が作るのは小麦。そして小麦を粉にする迄だ。粉にして領地に置いておいてお金が稼げるのか?」

「それは…」

「お前が当主の仕事をしていたら結局没落していたな。お前は当主として失格だ」

「どうしてですか」

「貴族だから、我々は自領の平民が稼ぐお金を受け取るだけと思っているからだ」

「当たり前です」

「お金が勝手に貯まるのか?」

「貯まります。現に貯まっていた。だから没落してない」

「お前の代わりにエミリーが当主の仕事をしていたからだ。勝手に貯まるお金なんてない」

「そもそもエミリーヌが当主なのがおかしい。エミリーヌが俺の子供だったとしても俺はサラフィスを当主にするつもりだった」

「お前が当主の権限でサラを当主にしたくでも出来ん」

「侯爵家の中で一番偉く権限があるのは当主です」

「確かに当主が一番偉い。だがな、我々は国の貴族だ。一番偉いのは国の長の陛下だ。 貴族はな、第一子が産まれた時に家の第一子として国へ届け出を出す。 いずれ次期当主が代わるかもしれなくても第一子が産まれた段階で次期当主として届け出を出す。国が家の次期当主は誰か把握する為にな。受理された段階で次期当主は第一子になる。 子が何人産まれるか、子の中で誰が当主と相応しいかそれ等は子が成人するまでに決めれば良い。 届け出た時期当主が相応しくないと決まれば次期当主の変更届けを出す。 変更されなければ届け出た者が次期当主になる。

お前は当主をサラにすると変更届けを出したのか?」

「それは、出してませんが。ですが俺が当主です」

「ならお前は陛下より偉いのか?」

「それは、陛下の方が偉いです」

「なら陛下が把握している次期当主はエミリーだ。サラではない。お前は一貴族の当主と言うだけだ」

「なら当主の権限は何ですか」

「お前がサラが良いと決めた事が権限だ。だが、この侯爵家の中だけの権限だ」

「それなら…」

「お前は侯爵家の中だけでサラに次期当主と言っただけ。本当にサラを次期当主にするならば国へ届け出ないといけない。当主としてな。届け出を国が受理すればサラが本当の次期当主になれる」

「それなら今から変更すれば間に合いますよね?」

「サラは平民だぞ?貴族籍を抜けた者に次期当主はなれん。それにお前も当主ではない」

「エミリーヌも先程言っていましたが、どうして俺が当主ではないんですか」

「陛下が王命を下したからだ。お前は当主として失格とな。だから次期当主のエミリーが当主に侯爵になった」

「どうして当主の俺が居ない間に決まるんです」

「お前が居ない間に陛下から当主へ参上し侯爵領を報告せよと書簡が届いた」

「それならまず俺に知らせるべきだ」

「確かにお前に知らせるべきだが、何処に居るか分からない者にどうやって知らせる?」

「それは…」

「お前に侯爵領の事が分かるのか?」

「分かります」

「なら今年侯爵領で何があった」

「何?不作ですか?」

「違う。不作になっても良い用に備蓄してある」

「では虫の発生」

「違う。発生する前に駆除する」

「では領地で流行り病が流行った」

「違う。領地に住む平民の健康管理はしておる」

「なら平民が働かない」

「違う。皆元気に働いている」

「じゃあ何ですか」

「お前は領地を何も把握してない。領地を知らない者が当主か? 当主として毎日仕事をしていれば分かる事だ。 当主でないお前に今更当主の仕事を把握しろと言っても遅い。 エミリーは当主の仕事を把握している。お前の代わりに当主としてしてきたからな。 お金だけ使う当主の代わりに、社交にばかり出掛ける当主夫人の代わりにな」

「父上はいつもエミリーヌの肩ばかり持つ」

「当たり前だ。お前に当主を譲り暫くお前に儂の補佐をさせたがお前はサラがサラがと禄に補佐をせず、一通り教えたが侯爵家には優秀な執事のジムが居る。だから儂はお前とジムに任せた。だがどうだ。お前は当主の仕事をせず、壺や絵画を買い、嫁にはドレス宝石を買い、サラには欲しい物を何でも買い与えた。その結果、儂が蓄えたお金は底を付いた。 

幼い頃から次期当主のエミリーに少しづつ領地経営を教えていたが、お前が働かないからエミリーに当主代理をさせた。侯爵家が没落すれば侯爵領も共倒れだ。小麦が主なこの国で小麦が採れなくなったらどうなる。

エミリーがお前の代わりに仕事をしたのは10歳だぞ!まだ子供のエミリーに託すしか侯爵家を存続出来ないとはどう言う事だ!

お前は当主だ当主だとえばるだけ。侯爵家を支えて来たのはエミリーだ!お前ではない!

エミリーの肩を持つ?当たり前だ。侯爵家の使用人、侯爵領の平民を護り、侯爵家、侯爵領を護って来たのもエミリー。当主代理としてお金を管理して来たのもエミリー。他家と交渉、取引、売買をして来たのもエミリー。

お前とエミリー、どちらが侯爵家にとって価値がある者だ。馬鹿なお前でも分かるだろ」

「うっ!」


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