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チャーリーが帰り私は夜遅くまで当主の仕事をした。 ジムにも付き合わせて申し訳なかったけど、全部の書類が終わったのは日付が変わってからだった。
翌朝、目が覚めずゆっくり起きた私は、ベッドから起き上がり時計を見たら11時を過ぎていて慌てて顔を洗いワンピースに着替えて部屋を出ようとした所で部屋の前に騎士が1人立っていて、
「どうしたの?」
「副隊長から部屋から出すなと言われています」
「何で?」
「それは俺にも分かりません」
「ならグレンかメイを呼んでほしいの」
「俺はここを離れる訳にはいきません」
「そうよね。なら私が行くわ」
「駄目です」
「なら私、絶対にこの部屋から出ない。だからグレンかメイを呼んで来て?」
「ですが」
「私も貴方がグレンに怒られる様な事はしない。だからお願い」
「本当に部屋から出ないで下さい」
「分かってる」
騎士はメイを連れて戻って来た。メイが部屋に入って来て、
「メイ、どうして私の部屋の前に騎士が居るの?それに部屋から出ちゃ駄目ってどう言う事?」
「お嬢様…それは……」
「もしかしてついにあの人達帰って来たの?」
「はい。今朝」
「だから私を起こさなかった?」
「はい」
「そう……。お祖父様には知らせた?」
「はい。大旦那様の邸に騎士が向かい一緒に戻ってくる予定です」
「まだお祖父様は来てないのね?」
「はい」
「今はあの人達どうしてるの?」
「門の所で足止めをしていたのですけど…」
「あの人達の護衛に隊長がいるものね」
「はい。見習いの騎士が門を開けてしまい」
「見習いの子が悪いんじゃないわ。見習いの子だって隊長に言われたら開けるしかないもの。それで?」
「部屋が整うまで馬車の中でお待ちして頂く様に伝え、隊長さんに事情を説明しました」
「隊長は知らなかったの?」
「知っていましたが、まさかと思われていたそうです」
「そうよね。当主の護衛で連れて行かされて、途中から当主じゃないなんて信じられなくても仕方ないわ。反対に当主じゃない人達を此処まで護衛してくれただけでも助かるわ。隊長と騎士達に休暇が必要ね。それと特別手当を出さないと」
「はい」
「あの人達の相手をしてるのはジム?」
「はい。朝食を召し上がり今はお茶を召し上がってます」
「そう。でも時間の問題ね。部屋には入れないしまた騒ぎだすわね」
「はい。ですからお嬢様は大旦那様が見えるまで部屋の中に居て下さい」
「分かったわ。その変わりメイドを一人寄越してくれない?」
「メイドですか?」
「メイはジムの補佐をお願い。騎士も動けないって言うし、私も部屋から出れないならメイドが居て貰わないと私が困るわ」
「分かりました」
メイが部屋から出て行き、暫くしてメイドが入って来た。 私は本を読んで静かにしていた。
部屋の外が騒がしく、怒鳴ってる声が聞こえた。
(きっと部屋に入れなくて怒鳴ってるのね。ジムの事だから鍵はお祖父様が持ってるとでも言ってそうね)
「おい!エミリーヌ!居るんだろ!出て来い!」
お父様の怒鳴り声。
バン
「おい!エミリーヌ!」
バン
「何処だ!」
バン
「此処にも居ない!」
バン
「早く出て来い!」
バン
「何処に居る!」
(一つづつ部屋を確認してるのね。出て行くしか仕方ないわね)
私は部屋の前に居る騎士に、
「私が出て行かないと収まらないみたいだから直ぐにグレンを呼んで来てくれる?」
「ですが」
「大丈夫よ。お願いね」
私は部屋を出てお父様の元へ向かった。目の前から怒りの表情で此方に向かって来ているお父様と目が合い、
「おい!エミリーヌ!何処に居た!」
「おと……」
パシン
頬がジンジンして、お父様の顔を見た。
パシン
ジンジンしていた頬がズキズキしだし、私はそのまま座りこんだ。
「お前と言う奴はいつ見ても胸くそ悪い顔をしおって」
私はお父様を見上げた。
「もう一度叩かれんと分からんか!」
お父様が手を振り上げ、私はギュッと目を瞑った。私の目の前が薄暗くなり、
「あんた娘に何手を上げてんだよ!」
「騎士如きが俺に指図するな。手を離せ!俺は出来損ないの娘を躾けてるだけだ!手を離せ!」
「ぐ、グレン?」
「お前も何で部屋を出た!出て来るなって言っただろ!」
「ご、ごめんなさい…」
ジムのお嬢様と慌てた声が聞こえた。
グレンはお父様の手を離さない。
ジムが側に来て、私を抱きかかえながら立ち上がらせてくれ、
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「え?何が?」
「いえ。部屋で大旦那様が見えるまでお待ち下さい」
「でも……」
「いえ、お待ち下さい」
「おい!ジム!お前まで勝手にしやがって!お前はクビだ!クビ!」
「旦那様にはその様な権限は御座いません」
「何だと!」
「当主でない貴方様に私をクビになど出来ません」
「俺が当主だ!」
「いえ当主ではありません」
「当主の俺が当主って言ってるんだ!お前はクビだ。お前の息子もクビだ!クビ! 早く手を離さんか!」
「あんた馬鹿か。当主はエミリーヌだ」
「何だと!俺の跡にはサラフィスだ!」
「サラ?あんたの大事なサラフィスは恋人と駆け落ちしたよ。残念だったな」
「何?」
「あんたさ……」
「グレン、もう…ありがとう。お父様、書斎でお話します」
翌朝、目が覚めずゆっくり起きた私は、ベッドから起き上がり時計を見たら11時を過ぎていて慌てて顔を洗いワンピースに着替えて部屋を出ようとした所で部屋の前に騎士が1人立っていて、
「どうしたの?」
「副隊長から部屋から出すなと言われています」
「何で?」
「それは俺にも分かりません」
「ならグレンかメイを呼んでほしいの」
「俺はここを離れる訳にはいきません」
「そうよね。なら私が行くわ」
「駄目です」
「なら私、絶対にこの部屋から出ない。だからグレンかメイを呼んで来て?」
「ですが」
「私も貴方がグレンに怒られる様な事はしない。だからお願い」
「本当に部屋から出ないで下さい」
「分かってる」
騎士はメイを連れて戻って来た。メイが部屋に入って来て、
「メイ、どうして私の部屋の前に騎士が居るの?それに部屋から出ちゃ駄目ってどう言う事?」
「お嬢様…それは……」
「もしかしてついにあの人達帰って来たの?」
「はい。今朝」
「だから私を起こさなかった?」
「はい」
「そう……。お祖父様には知らせた?」
「はい。大旦那様の邸に騎士が向かい一緒に戻ってくる予定です」
「まだお祖父様は来てないのね?」
「はい」
「今はあの人達どうしてるの?」
「門の所で足止めをしていたのですけど…」
「あの人達の護衛に隊長がいるものね」
「はい。見習いの騎士が門を開けてしまい」
「見習いの子が悪いんじゃないわ。見習いの子だって隊長に言われたら開けるしかないもの。それで?」
「部屋が整うまで馬車の中でお待ちして頂く様に伝え、隊長さんに事情を説明しました」
「隊長は知らなかったの?」
「知っていましたが、まさかと思われていたそうです」
「そうよね。当主の護衛で連れて行かされて、途中から当主じゃないなんて信じられなくても仕方ないわ。反対に当主じゃない人達を此処まで護衛してくれただけでも助かるわ。隊長と騎士達に休暇が必要ね。それと特別手当を出さないと」
「はい」
「あの人達の相手をしてるのはジム?」
「はい。朝食を召し上がり今はお茶を召し上がってます」
「そう。でも時間の問題ね。部屋には入れないしまた騒ぎだすわね」
「はい。ですからお嬢様は大旦那様が見えるまで部屋の中に居て下さい」
「分かったわ。その変わりメイドを一人寄越してくれない?」
「メイドですか?」
「メイはジムの補佐をお願い。騎士も動けないって言うし、私も部屋から出れないならメイドが居て貰わないと私が困るわ」
「分かりました」
メイが部屋から出て行き、暫くしてメイドが入って来た。 私は本を読んで静かにしていた。
部屋の外が騒がしく、怒鳴ってる声が聞こえた。
(きっと部屋に入れなくて怒鳴ってるのね。ジムの事だから鍵はお祖父様が持ってるとでも言ってそうね)
「おい!エミリーヌ!居るんだろ!出て来い!」
お父様の怒鳴り声。
バン
「おい!エミリーヌ!」
バン
「何処だ!」
バン
「此処にも居ない!」
バン
「早く出て来い!」
バン
「何処に居る!」
(一つづつ部屋を確認してるのね。出て行くしか仕方ないわね)
私は部屋の前に居る騎士に、
「私が出て行かないと収まらないみたいだから直ぐにグレンを呼んで来てくれる?」
「ですが」
「大丈夫よ。お願いね」
私は部屋を出てお父様の元へ向かった。目の前から怒りの表情で此方に向かって来ているお父様と目が合い、
「おい!エミリーヌ!何処に居た!」
「おと……」
パシン
頬がジンジンして、お父様の顔を見た。
パシン
ジンジンしていた頬がズキズキしだし、私はそのまま座りこんだ。
「お前と言う奴はいつ見ても胸くそ悪い顔をしおって」
私はお父様を見上げた。
「もう一度叩かれんと分からんか!」
お父様が手を振り上げ、私はギュッと目を瞑った。私の目の前が薄暗くなり、
「あんた娘に何手を上げてんだよ!」
「騎士如きが俺に指図するな。手を離せ!俺は出来損ないの娘を躾けてるだけだ!手を離せ!」
「ぐ、グレン?」
「お前も何で部屋を出た!出て来るなって言っただろ!」
「ご、ごめんなさい…」
ジムのお嬢様と慌てた声が聞こえた。
グレンはお父様の手を離さない。
ジムが側に来て、私を抱きかかえながら立ち上がらせてくれ、
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「え?何が?」
「いえ。部屋で大旦那様が見えるまでお待ち下さい」
「でも……」
「いえ、お待ち下さい」
「おい!ジム!お前まで勝手にしやがって!お前はクビだ!クビ!」
「旦那様にはその様な権限は御座いません」
「何だと!」
「当主でない貴方様に私をクビになど出来ません」
「俺が当主だ!」
「いえ当主ではありません」
「当主の俺が当主って言ってるんだ!お前はクビだ。お前の息子もクビだ!クビ! 早く手を離さんか!」
「あんた馬鹿か。当主はエミリーヌだ」
「何だと!俺の跡にはサラフィスだ!」
「サラ?あんたの大事なサラフィスは恋人と駆け落ちしたよ。残念だったな」
「何?」
「あんたさ……」
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