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「ある事件というのはね、前侯爵様が夫人のヘレン様と婚姻した後の事なの。 お二人は婚約中から仲睦まじく前侯爵様はヘレン様をとても愛してらした。婚姻してからもヘレン様を大事に大切になさってとても愛してらしたわ。それこそ皆が憧れる程の夫婦で憧れる旦那様の姿だった。 私も幼い頃に一度お二人を見かけた時はお二人の様な夫婦になりたいと幼心に思ったわ。 お腹の大きいヘレン様を気遣い側に寄り添って庭園を散歩されてたの。 その時のお腹の中の子がエミリーヌちゃんのお父様よ。
だけどね、ヘレン様は以前にも妊娠なさっていたの。前侯爵様と婚姻して直ぐに懐妊なさってね。悪阻が酷くて横になっていた方が多かったらしいけど安定期に入り体調も良くなってお腹も目立ち出し、出産まで後何ヶ月ときった頃、侯爵家で一緒に住んでいた弟さんが朝までお酒を飲んで帰って来た所に出くわしたらしいの。前侯爵様は王宮に出掛けてて留守でね、ヘレン様は部屋に戻ろうとした。階段の上に居たヘレン様が足を滑らして階段から転がる様に落ちたらしいの。邸の執事が直ぐに気付き医師を呼んだ。
だけどね、本当の話は違うのよ。階段の上に居たヘレン様を弟さんが突き落とした。突然背中を押され身構える事が出来なかったヘレン様はお腹を打ち付けながら階段を転がり落ちたの。悲鳴に気付いた執事が慌てて駆け付けた時、ヘレン様のお腹周りは血の海だったらしいわ。医師を直ぐ呼んで旦那様の前侯爵様を王宮から呼び戻し、前侯爵様が邸に着いた時にはもうお子様はお腹の中で亡くなられていた。男児だったらしいわ。死産として国へ届け、ヘレン様を療養の為に今住んでる邸に移した。信頼のおけるメイド数人と執事、護衛騎士を連れてね。
弟さんはヘレン様が勝手に自分で足を滑らして転んだと言った。だけど弟さんがヘレン様の背中を押す所を二階の廊下を掃除していたメイドが見ていた。悲鳴をあげたのはメイドだったの。
弟さんは街に住む悪友にお酒を飲んでは言ってたらしいわ。兄貴の子供が産まれたら自分が遊ぶお金が減るって。何とか子供を始末しないとって」
私はチャーリーと繋がる手に力が入った。チャーリーの私を抱き寄せる肩に置かれた手に力が入り、強く抱き寄せられた。
「前侯爵様は弟さんを容赦なく平民に落とした。 周りは、遅過ぎだ、とか、やっとだ、と影で言っていたらしいの。 前侯爵様はとても厚く深い情をお持ちの方だけど、この事件があってから容赦もしなくなった。 家族を蔑ろにする者や、使用人に手を上げる者、女性を大切にしない者には一切手助けをしなくなった」
「はい。お祖父様が決めた貴族やお店にしか小麦は卸せない事になっています。新しく声が掛かる場合でもお祖父様の許しが出てからしか取引出来ません」
「そうなの。前侯爵様は取引を切った貴族も居るわ。お店もそうよ? でもね、心を入れ替えた者には許しまた手助けする情の深い方なの」
「はい」
「エミリーヌちゃん、貴女のご両親が貴女を蔑ろにしていた事に前侯爵様は気付かなかった訳ではないのよ? 貴女がどの様に思ってるのかは分からないけど、貴女が幼い頃、前侯爵様とヘレン様は侯爵家から今住んでる邸に移り住んだわよね?」
「はい」
「当主を息子さんに任せたのも責任を持たせたかったから。貴女のお父様とお母様が学園時代から婚約者で学園を卒業と同時に婚姻したのは知ってる?」
「いえ」
「貴女のお父様とお母様は学園の時から仲が良い婚約者だったわ。婚約者でも婚姻するまで身体は繋げない事は知ってる?」
「はい。貴族としてのルールですよね」
「そうね。でも恋人や愛人と同じよ?暗黙のルールがあるの。見て見ぬ振りをするって言うね。 婚約者で婚姻が決まってる者達が身体を繋げる事はあるのよ。褒められた事で無いのは確かだけど、皆隠れて身体を繋げてるわ。
愛する人と繋がりたい一つになりたいと思う気持ちは男性だけではないわ。女性だって思う気持ちなの。 手を繋ぎ口付けする。愛しい、愛してるって気持ちが口付けだけでは満たされなくなる。相手に触れたい触れられたいっていう気持ちが生まれる。 貴族の令嬢が身持ちが堅いって言われるのは何も初夜まで身体を繋げないからではないの。確かに初夜まで身体を繋げない者は居るわよ? 王族は初夜の後破瓜を確認するしね。 でもね、貴族は初夜をしたかしてないかを確認するだけなの。 だからね、貴族の令嬢は婚姻が決まってる婚約者以外と身体を繋げる事をしないからなの。一生涯婚約者だけだからなの。 身体を繋げる行為は褒められた事ではないけど恥ずべき事ではないのよ? ただ隠れてしてるだけ。誰にも言わなければ分からないわ。愛し合ってる二人だけの秘密なの」
「はい」
「貴女のお父様とお母様も隠れて身体を繋げてた。そして卒業間近、貴女を身籠った。身籠れば身体を繋げていたと知られるわ。だから卒業して直ぐに婚姻した。貴女と妹さんが産まれ、そして当主として一家の大黒柱として責任を持たせる為に当主にした。前侯爵様は一緒に暮らし当主の仕事を教えた。だけどね、ヘレン様が体調を崩された」
「知ってます。お祖母様の療養の為に邸に移ったと」
「そう。移った本当の理由は知らない?」
「療養の為としか」
「そう」
だけどね、ヘレン様は以前にも妊娠なさっていたの。前侯爵様と婚姻して直ぐに懐妊なさってね。悪阻が酷くて横になっていた方が多かったらしいけど安定期に入り体調も良くなってお腹も目立ち出し、出産まで後何ヶ月ときった頃、侯爵家で一緒に住んでいた弟さんが朝までお酒を飲んで帰って来た所に出くわしたらしいの。前侯爵様は王宮に出掛けてて留守でね、ヘレン様は部屋に戻ろうとした。階段の上に居たヘレン様が足を滑らして階段から転がる様に落ちたらしいの。邸の執事が直ぐに気付き医師を呼んだ。
だけどね、本当の話は違うのよ。階段の上に居たヘレン様を弟さんが突き落とした。突然背中を押され身構える事が出来なかったヘレン様はお腹を打ち付けながら階段を転がり落ちたの。悲鳴に気付いた執事が慌てて駆け付けた時、ヘレン様のお腹周りは血の海だったらしいわ。医師を直ぐ呼んで旦那様の前侯爵様を王宮から呼び戻し、前侯爵様が邸に着いた時にはもうお子様はお腹の中で亡くなられていた。男児だったらしいわ。死産として国へ届け、ヘレン様を療養の為に今住んでる邸に移した。信頼のおけるメイド数人と執事、護衛騎士を連れてね。
弟さんはヘレン様が勝手に自分で足を滑らして転んだと言った。だけど弟さんがヘレン様の背中を押す所を二階の廊下を掃除していたメイドが見ていた。悲鳴をあげたのはメイドだったの。
弟さんは街に住む悪友にお酒を飲んでは言ってたらしいわ。兄貴の子供が産まれたら自分が遊ぶお金が減るって。何とか子供を始末しないとって」
私はチャーリーと繋がる手に力が入った。チャーリーの私を抱き寄せる肩に置かれた手に力が入り、強く抱き寄せられた。
「前侯爵様は弟さんを容赦なく平民に落とした。 周りは、遅過ぎだ、とか、やっとだ、と影で言っていたらしいの。 前侯爵様はとても厚く深い情をお持ちの方だけど、この事件があってから容赦もしなくなった。 家族を蔑ろにする者や、使用人に手を上げる者、女性を大切にしない者には一切手助けをしなくなった」
「はい。お祖父様が決めた貴族やお店にしか小麦は卸せない事になっています。新しく声が掛かる場合でもお祖父様の許しが出てからしか取引出来ません」
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「はい」
「エミリーヌちゃん、貴女のご両親が貴女を蔑ろにしていた事に前侯爵様は気付かなかった訳ではないのよ? 貴女がどの様に思ってるのかは分からないけど、貴女が幼い頃、前侯爵様とヘレン様は侯爵家から今住んでる邸に移り住んだわよね?」
「はい」
「当主を息子さんに任せたのも責任を持たせたかったから。貴女のお父様とお母様が学園時代から婚約者で学園を卒業と同時に婚姻したのは知ってる?」
「いえ」
「貴女のお父様とお母様は学園の時から仲が良い婚約者だったわ。婚約者でも婚姻するまで身体は繋げない事は知ってる?」
「はい。貴族としてのルールですよね」
「そうね。でも恋人や愛人と同じよ?暗黙のルールがあるの。見て見ぬ振りをするって言うね。 婚約者で婚姻が決まってる者達が身体を繋げる事はあるのよ。褒められた事で無いのは確かだけど、皆隠れて身体を繋げてるわ。
愛する人と繋がりたい一つになりたいと思う気持ちは男性だけではないわ。女性だって思う気持ちなの。 手を繋ぎ口付けする。愛しい、愛してるって気持ちが口付けだけでは満たされなくなる。相手に触れたい触れられたいっていう気持ちが生まれる。 貴族の令嬢が身持ちが堅いって言われるのは何も初夜まで身体を繋げないからではないの。確かに初夜まで身体を繋げない者は居るわよ? 王族は初夜の後破瓜を確認するしね。 でもね、貴族は初夜をしたかしてないかを確認するだけなの。 だからね、貴族の令嬢は婚姻が決まってる婚約者以外と身体を繋げる事をしないからなの。一生涯婚約者だけだからなの。 身体を繋げる行為は褒められた事ではないけど恥ずべき事ではないのよ? ただ隠れてしてるだけ。誰にも言わなければ分からないわ。愛し合ってる二人だけの秘密なの」
「はい」
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「知ってます。お祖母様の療養の為に邸に移ったと」
「そう。移った本当の理由は知らない?」
「療養の為としか」
「そう」
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