妹がいなくなった

アズやっこ

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「エミリーヌちゃん、ローラから聞いたわ。私からもお礼を言わせて?ありがとう。チャーリーを救ってくれて、それに隣国で生きていける様に手助けしてくれて。おまけに経営者まで。経営者になれたからこの国へ帰る事が出来たの。チャーリーの命の恩人は私の恩人よ?エミリーヌちゃん本当にありがとう」

「いえ。ミリー商会があるのはチャーリーのお陰なんです。チャーリーの努力の結果です。経営者として相応しいです。もう少し早く譲渡すれば良かったのですが」

「それでもエミリーヌちゃんが手助けしてくれなかったらそもそも経営者になんてなれなかったのよ?この国へ出入りする事も一生出来なかったわ」

「はい」

「ありがとう」

「はい」

「チャーリーもお帰り」

「まだ帰ってきた訳ではありませんがありがとうございます」

「そもそも貴方が知られたのがいけないのよ?隠れてやりなさい。隠れて」

「隠れてしてましたよ。周りも気にしてましたし。どうして知られたのか未だに分かりませんよ」

「そんなの貴方を良く思わない人に決まってるでしょ? 貴方は元王女の娘の婚約者、そして時期宰相だったのよ?気にくわないと思う人が居てもおかしくないわ。きっと今のあの娘の旦那ら辺じゃない?」

「旦那って誰何です?」

「多少王族の血が入った没落寸前の伯爵家の次男よ」

「同級生に居たかもですが。仲が良かった訳ではないので余り覚えてませんが」

「その男が公爵家に教えたんでしょ。自分の方が婚約者として相応しいとか言って」

「はあ…」

「貴方と婚約破棄してその男と婚約したけど、あの娘の性格よ?多少王族の血が入ってるって言っても所詮多少なのよ。あの娘の性格が変わる訳でもないしね。 婚約を取り消したかったみたいだけど公爵家に無理矢理婚姻させられたわ。まあ自業自得よね。 結婚して一年は社交にも出て来てたけど、どんどん顔が変わっていってね。二年目から一切社交もしないし顔も出さないわ。 今は心を病んで公爵家の離れで監視されながら生活してるわ。それでも自業自得なのよ。他人の不幸を望んで自分だけ幸せになれる訳ないの」

「エミリーヌ、どうしたの?そんな暗い顔して」

「うん……」

「ちょっと誤解しないでよ?エミリーヌに隠れて恋人を作ったり愛人を作ったりしようなんて全く思ってないからね! 俺がこの先も好きなのも愛してるのもエミリーヌだけだから。他の人に目がいく事なんて絶対にないから!エミリーヌが離してって言っても離してあげられないから!信じて?」

「貴方の方が愛人でしょうに」

「キティ姉様は黙ってて!」

「あら」

「エミリーヌ信じて?俺はエミリーヌと離れたくない。エミリーヌ愛してる」


 チャーリーは私を抱き締め、額に口付けした。


「チャーリーの事信じてるから大丈夫。チャーリーの気持ちを疑った事も無いわ」

「ならどうして暗い顔してるの?」

「私、不幸になるかも…」

「どうして?俺が幸せにするよ?」

「チャーリーまで不幸にしちゃうかも…」

「俺はエミリーヌと一緒なら不幸とは思わないよ?」

「だって、私サラの人生を奪ったわ。それに両親の人生も奪うわ。人を不幸にしたら自分に返ってくるわ」

「元婚約者の旦那とエミリーヌは違うよ?」

「同じよ」

「あっちは俺を蹴落とし自分が優位に立ちたかったんだろうね。元王女の娘が婚約者、妻になれば貴族での立ち位置は上だ。俺にどんな恨み妬みがあったのか知らないけどね。 でもエミリーヌは違うよ。両親や妹さんは自分で不幸になっていったんだ。エミリーヌがしたんじゃない。

何も言わず勝手に邸を出て行き恋人と駆け落ちした妹さんを平民にするのは当たり前だろ? 両親だって父上は当主なんだよ?当主が当主の仕事を放おり投げて邸を留守にする事は陛下に楯突く事と同じだよ? 陛下に臣下として忠誠しないって言ってるものだからね。 貴族として陛下に忠誠を誓えない者を養えばその家は反逆と見なされる。だから前侯爵は子息と嫁を平民にし侯爵家とは関係ない者としたんだ。

確かにエミリーヌを当主にするのに絶好の機会だったかも知れない。だからエミリーヌは余計に自分のせいって思うのかも知れないけど、10歳の頃から当主の代わりに侯爵家を護ってたのはエミリーヌだ。それでも当主でない以上自由になる物はない。侯爵家の物を使う事も出来なかった。そうだろ?」

「うん」

「お金だって、馬車だって、食事も使用人と一緒。服は誰かのお古。部屋だって隅に追いやられて。それでも当主の代わりに侯爵家を護ってきた。

両親や妹さんはただ自分勝手に行動した結果なんだ。 エミリーヌが不幸にしたんじゃない。勝手に自分から不幸になりにいっただけだ。 エミリーヌこそ今迄不幸だったんだ。だからこれからは幸せになる権利がある。分かった?」

「うん」


 チャーリーはもう一度私を抱き締め、額に口付けした。


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