妹がいなくなった

アズやっこ

文字の大きさ
上 下
68 / 187

67

しおりを挟む
 チャーリーが帰り私は溜まっていた書類を片付けた。


「ねぇジム」

「何でしょうか」

「家とチャーリーの家の侯爵家を一つにする事はやっぱり難しい?」

「そうですね。領地が隣同士ならまだ可能性は僅かですがあったかもしれませんが」

「そうよね。離れ過ぎよね」

「はい」

「もしチャーリーが私のお婿さんになってブラウニー侯爵家の仕事をするなら一緒に暮らす事は出来ないの?」

「貴族は他家の者に自分の家の情報を渡したくない者が多いですので」

「でも私の補佐として家の情報は教えるわよね」

「婿になるのですから侯爵家の内情は教えます。婿としてこの侯爵家に入った段階で侯爵家の人間です。 内情が分からなければ補佐する事など出来ませんから」

「と言う事はブラウニー侯爵家の内情を私が知るのは余りよろしくないって事?」

「本来なら」

「本来ならって?」

「チャーリー殿が当主になれるかどうかは分かりませんが、当主同士と言いますか、跡取り同士で婚約はしません。家を護らないといけないからです。どちらかの家に片寄ってはいけない。 それにお互いが家の当主ならば邸を離れる事は出来ません」

「そうね」

「本来婚姻は当主の補佐です。婿なら領地経営の補佐。妻なら社交の補佐です。 補佐が出来る者と婚約し婚姻します。 もし当主同士ならば互いに補佐をする事は出来ません。一人でやるのであれば婚姻する意味がありません」

「確かに」

「仮に婚姻した場合、当主でありながら婿としてニ家分の領地を経営し手伝わないといけない。 当主でありながら嫁として領地を経営し積極的に社交場へ出掛け自領の豊かさを披露しなくてはならない。 では、どちらの領地の豊かさを披露するのか。自領か相手の領地か。 片寄れば互いの家の評価が下がります」

「身体がいくつ合っても足りないわ」

「はい。自領の領地経営しながら他領を手伝う。領地経営をしながら積極的に社交するなど不可能です。 チャーリー殿が婿に入るかお嬢様が嫁に嫁ぐかどちらかがよろしいかと」

「そうなると互いの家の存続よね? 家は小麦、チャーリーの家は何が主なの?」

「ブラウニー家は羊毛と薔薇です」

「両家共なくてはならない物ね。小麦は勿論だけど、羊毛が無ければ服は作れないわ。薔薇は?」

「薔薇の栽培は勿論ですが、香水や香油、石鹸など女性に支持を得てます」

「学園で女生徒達が話していた物かしらね」

「おそらく。 ブラウニー家はチャーリー殿が跡取りでしたが、チャーリー殿が国外追放になり、宰相であり当主の侯爵の代わりに執事が領地で領地経営しているのだと思われます」

「そうね。誰かが代わりに経営しないといけない。羊毛は勿論だけど、薔薇もなくせないわ。チャーリーが執事を手伝いたいと思う気持ちも分かるわね。今迄自分の代わりに経営し護ってくれてた訳だし」

「ですが、ブラウニー侯爵家が内情を開示すればこの邸でチャーリー殿がブラウニー侯爵家の仕事をする事は可能です」

「そう」

「開示出来ないのであれば侯爵家に仕事をしに帰り夜こちらへお戻りになれば良いかと。あちらは宰相であり御父上が邸には居られますから」

「そうね。それしか無いわね」

「はい」

「チャーリーが婿に入って、ブラウニー家の手伝いもするなら、ジムにはチャーリーの補佐も頼むけど大丈夫?何なら息子さんお祖父様の所から呼び戻す?」

「いえ。大旦那様に鍛えて頂くのが一番ですので、私一人で構いません」

「そう?ジムには迷惑をかけるけどお願いね」

「はい。それと私から言うのも差し出がましいのですが」

「何?」

「チャーリー殿が今後婚約者になれば少しづつ仕事を覚えて頂きたいと思います」

「そうね」

「その時この邸に泊まる事もあると思います」

「確かに無いとは言えないわね」

「前の様に騎士隊の宿舎と言う訳にはいきません」

「チャーリーは気にしないだろうけど駄目よね」

「はい。旦那様の一件が片付きましたら旦那様と奥様の部屋、当主の部屋ですが改装致しませんか?」

「改装?」

「いずれお嬢様が暮らす部屋です。ですがお嬢様には辛い記憶です」

「そうね」

「ですので思いきって改装して別の部屋に致しませんか?」

「そうね。私もいつまでもあの部屋で暮らす訳にはいかないものね。なら手配頼める?」

「はい。直ぐに取り掛かれる様に準備致します」

「ありがとう。ならよろしくね?」

「はい。それと今度隣国のスティール公爵家が領地に視察に見える際、チャーリー殿に領地の案内も兼ねて一緒に行かれてはどうですか?」

「そうね。ダンにも紹介しないとね」

「はい」

「分かった。今度チャーリーに聞いてみる。 ねぇジム、婚約者でも先触れは必要なのは分かってるわ。元婚約者の時に突然来られて困ったもの」

「そうですね」

「でも今朝みたいに突然来る事もあるわよね? 今日は大事な話だったけど、これからは私に会いたいから来たとか顔を見たかったとか、あるでしょ? 私だってチャーリーに会いたい時に会いたいし顔を見たい。 それに突然来ても私は嬉しい。

確かに仕事の邪魔されるって言われればそうなんだけど、こういう時ってどうすれば良いの?」

「確かに元婚約者の方は突然来て文句を言うだけでしたので迷惑でしたが、チャーリー殿なら急ぎの仕事の時は待っていてくれそうですし、婚約者になれば手伝う事も可能です」

「そうね」

「先触れを必要としないと思うならそう伝えればよろしいかと」

「良いの?」

「確かにマナーですが、本来婚約者とは、いずれ婚姻し夫婦になると言う事です。夫婦の事は夫婦で決めれば良いだけの事。お二人が必要無いと思うならそれでよろしいかと」

「そうね」

「それにこの邸でチャーリー殿を良く思ってない者は居ません。突然来られても皆気にしないと思います」

「皆が迷惑にならないなら一度話してみる」

「はい。それがよろしいかと」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済み】妹に婚約者を奪われたので実家の事は全て任せます。あぁ、崩壊しても一切責任は取りませんからね?

早乙女らいか
恋愛
当主であり伯爵令嬢のカチュアはいつも妹のネメスにいじめられていた。 物も、立場も、そして婚約者も……全てネメスに奪われてしまう。 度重なる災難に心が崩壊したカチュアは、妹のネメアに言い放つ。 「実家の事はすべて任せます。ただし、責任は一切取りません」 そして彼女は自らの命を絶とうとする。もう生きる気力もない。 全てを終わらせようと覚悟を決めた時、カチュアに優しくしてくれた王子が現れて……

父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる

兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

裏切りの代償

志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。 家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。 連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。 しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。 他サイトでも掲載しています。 R15を保険で追加しました。 表紙は写真AC様よりダウンロードしました。

一番悪いのは誰

jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。 ようやく帰れたのは三か月後。 愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。 出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、 「ローラ様は先日亡くなられました」と。 何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・

【完結】「冤罪で処刑された公爵令嬢はタイムリープする〜二度目の人生は殺(や)られる前に殺(や)ってやりますわ!」

まほりろ
恋愛
【完結しました】 アリシア・フォスターは第一王子の婚約者だった。 だが卒業パーティで第一王子とその仲間たちに冤罪をかけられ、弁解することも許されず、その場で斬り殺されてしまう。 気がつけば、アリシアは十歳の誕生日までタイムリープしていた。 「二度目の人生は|殺《や》られる前に|殺《や》ってやりますわ!」 アリシアはやり直す前の人生で、自分を殺した者たちへの復讐を誓う。 敵は第一王子のスタン、男爵令嬢のゲレ、義弟(いとこ)のルーウィー、騎士団長の息子のジェイ、宰相の息子のカスパーの五人。 アリシアは父親と信頼のおけるメイドを仲間につけ、一人づつ確実に報復していく。 前回の人生では出会うことのなかった隣国の第三皇子に好意を持たれ……。 ☆ ※ざまぁ有り(死ネタ有り) ※虫を潰すように、さくさく敵を抹殺していきます。 ※ヒロインのパパは味方です。 ※他サイトにも投稿しています。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 ※本編1〜14話。タイムリープしたヒロインが、タイムリープする前の人生で自分を殺した相手を、ぷちぷちと潰していく話です。 ※番外編15〜26話。タイムリープする前の時間軸で、娘を殺された公爵が、娘を殺した相手を捻り潰していく話です。 2022年3月8日HOTランキング7位! ありがとうございます!

待つわけないでしょ。新しい婚約者と幸せになります!

風見ゆうみ
恋愛
「1番愛しているのは君だ。だから、今から何が起こっても僕を信じて、僕が迎えに行くのを待っていてくれ」彼は、辺境伯の長女である私、リアラにそうお願いしたあと、パーティー会場に戻るなり「僕、タントス・ミゲルはここにいる、リアラ・フセラブルとの婚約を破棄し、公爵令嬢であるビアンカ・エッジホールとの婚約を宣言する」と叫んだ。 婚約破棄した上に公爵令嬢と婚約? 憤慨した私が婚約破棄を受けて、新しい婚約者を探していると、婚約者を奪った公爵令嬢の元婚約者であるルーザー・クレミナルが私の元へ訪ねてくる。 アグリタ国の第5王子である彼は整った顔立ちだけれど、戦好きで女性嫌い、直属の傭兵部隊を持ち、冷酷な人間だと貴族の中では有名な人物。そんな彼が私との婚約を持ちかけてくる。話してみると、そう悪い人でもなさそうだし、白い結婚を前提に婚約する事にしたのだけど、違うところから待ったがかかり…。 ※暴力表現が多いです。喧嘩が強い令嬢です。 ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。魔法も存在します。 格闘シーンがお好きでない方、浮気男に過剰に反応される方は読む事をお控え下さい。感想をいただけるのは大変嬉しいのですが、感想欄での感情的な批判、暴言などはご遠慮願います。

両親も義両親も婚約者も妹に奪われましたが、評判はわたしのものでした

朝山みどり
恋愛
婚約者のおじいさまの看病をやっている間に妹と婚約者が仲良くなった。子供ができたという妹を両親も義両親も大事にしてわたしを放り出した。 わたしはひとりで家を町を出た。すると彼らの生活は一変した。

処理中です...