妹がいなくなった

アズやっこ

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 手を繋ぎ部屋の中に入った。


「チャーリー、エミリーヌちゃんを連れて行かないでよね。 エミリーヌちゃん早くこっちにいらっしゃい?」


 私はチャーリーに引かれさっき座った椅子に腰掛けようとしたら、何故かチャーリーが先に座り、私は膝の上に座らされ、後ろから抱き締められて…。


「チャーリー?」

「ん?何?」

「これはちょっと……」

「嫌?」

「嫌って言うか、皆いるし……」

「皆居るね」

「だから……」

「ちょっとチャーリーいい加減にしなさい。エミリーヌちゃん困ってるでしょ?」

「エミリーヌ、困る?」

「困るって言うか……恥ずかしい……」

「エミリーヌは恥ずかしいだけで困ってないって」

「はぁぁ。エミリーヌちゃんごめんなさいね。私が甘やかしすぎて育てたのよね。きっと……」

「違います。チャーリーは立派な方です」

「立派ね……。チャーリーで立派なら殆どの男性が立派だわ」

「あの……」

「母上、ドレスは決まったんですか?エミリーヌとお揃いにするのですよね?」

「はぁぁ。貴方ね……。もう良いわ。 そうなの。今、デザイナーの彼女と話してたのだけど、生地の色をお揃いにして、刺繍で刺す柄もお揃いにしようと思って。

生地は深い紫色でね、柄は私は薔薇をメインにダリアを散りばめて、エミリーヌちゃんはダリアをメインに薔薇を散りばめようかと」

「何故、エミリーヌがダリアなんですか?」

「知りたい?」

「はい」

「さっきね、一緒に庭を散歩したの。その時、目に止まった花がダリアだったの。ね?」

「はい。黄色のダリアが目に止まって。赤は凛としてて、ピンクは可愛いです。でも、ローラ母様の赤い薔薇も好きです」

「エミリーヌ、どうして黄色のダリアだったの?」

「元気に咲いてる様に見えたからかな?」

「そうなんだね」

「それでね、エミリーヌちゃんはどんなドレスの形が良い?」

「どんなと言われても……」

「なら一緒にデザイン画見て、これって思ったの教えて?」

「はい」


 私は並べてあるドレスのデザイン画を見比べて、


「エミリーヌ、気になるのはあった?」

「どれにしようか迷う。今迄はチャーリーが贈ってくれたドレスを着てただけだし、そもそもドレスを着て出掛けた事ないから」

「なら、似合う似合わないは気にしないでどれが気になる?」

「笑わない?」

「笑わない」

「なら、これ」

「どうしてこの形が良かったの?」

「小さい頃読んだ絵本のお姫様が着てたドレスに似てたから」

「お姫様が着てたドレス、着たかったの?」

「着たかったのか分からないけど、いつか自分も着るんだって思ってたから」

「でも着れなかった?」

「うん」

「なら着よう!」

「え?だってこの形は若い子達が着て可愛いのよ?」

「そうかな~?似合うと思うけどな~」

「こんなフリフリ似合わないよ」

「フリフリにしなければ着れる?」

「ここまでフリフリじゃなければ…」

「分かった」


 チャーリーはデザイナーの子と話をしていた。

 ローラ母様は優しい眼差しで見ていた。


「ドレスは大方決まったわね。なら次は私のドレスをエミリーヌちゃんが着れるようにサイズを調整して欲しいの。ついでに刺繍もお願いしようかしら」

「そんな頂けません」

「エミリーヌちゃん、母親はね、大事にしてるドレスを娘にも着て欲しいって思うものなの。ドレスは流行り廃りがあるから形が変わるけど、手直しして贈るのよ? だから贈らせて?」

「はい…」

「新しいドレスもこれから沢山作らないと。チャーリーお願いね」

「どうせなら本当に沢山作って下さい」

「ちょっと?チャーリー?」

「だって顧客は大事だろ?」

「そうだけど…」

「母上、ついでに母上の友達にも声かけて下さいね?」

「分かってるわ。沢山買うように言うわ」

「そんな、やめて下さい」

「チャーリーの力になれるもの」

「そうですが…」

「チャーリーが経営者になって売上が落ちたなんて言われたらエミリーヌちゃんに顔向け出来ないわ」


 ローラ母様の大事にしていたドレス。気にいってるデザインの物。友達とお揃いで作った物。チャーリーのお父様に贈られたドレス。数点をサイズ調整して刺繍を刺してから私に贈ってくれるそう。

 夕方近くになり私は邸に帰ろうと。

 玄関の扉の前、グレンが待っていた。


「グレン、かなり待たせちゃった。ごめんね?」

「楽しかったか?」

「うん。後で聞いてくれる?」

「ああ」


 グレンは私の頭をクシャクシャと撫でた。

 チャーリーに突然手を繋がれ、そのままチャーリーの胸の中に引っ張られた。


「なんか妬けるな~」

「え?」

「ううん。何でもないよ? 気をつけてね?」

「うん」

「また会いに行く」

「待ってる」

「エミリーヌちゃん」


 ローラ母様に声をかけられ、チャーリーから離れた。手は繋いだままだけど。


「エミリーヌちゃん、私はいつもこの邸に居るわ。いつでも気軽に遊びに来てね? この邸は貴女の家でもあるのよ? 寂しい時、悲しい時、逃げ出したい時、いつでも帰って来なさい。 私はここに居るから」

「はい。ローラ母様」

「今度は一緒に夕食も食べましょうね?」

「はい」


 チャーリーにエスコートされ馬車に乗り込む。馬車の窓からローラ母様に手を振った。

 グレンとチャーリーが何か話をしてて、暫くして馬車が動き出した。


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