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チャーリーが帰り、私室で寝る準備を手伝って貰ってるメイに、
「ねぇメイ、お願いがあるんだけど」
「何ですか?」
「一度抱き締めさせてくれない?」
「はい?」
「駄目?」
「分かりました。さあどうぞ」
メイは腕を広げて待っていた。 私はメイに近寄りメイを抱き締めた。
「メイも温かくて柔らかいのね」
「お嬢様、どうされました?」
「あのね、チャーリーのお母様に昨日抱き締められたの。 お祖父様やグレンやチャーリーと違って柔らかかった」
「男性は逞しい身体付きですから」
「そうね。グレンなんて硬いわ」
「グレンさんは騎士ですから」
「そうね。だけど温かいわ。抱き寄せられると温かいのね。 今迄もお祖父様に抱き寄せられたけど温かいって感じる事が出来なかった。 嬉しかったのよ?私を抱き締めてくれるのはお祖父様だけだったもの。けど私の心が見ようとも感じようともしなかった。お祖父様は私を可愛がり愛してくれた。だけど私が私の心がすべてを閉ざした。愛情が見えていたはずなのに、感じていたはずなのに……」
「身体で感じる温もりは人の体温ですが、抱き寄せる行為には愛しいと思う気持ちです」
「うん」
「抱き寄せられると温かいと感じるのは心が温かくなるからだと私は思います。全ての思いは心なのです」
「うん」
「抱き寄せると身体がくっつきますよね?」
「そうね」
「嫌いな人とくっつきたいですか?」
「嫌よ」
「心から安心する人なら抱き寄せられても嫌ではありませんよね?」
「うん」
「お互いの気持ちが愛しいと感じるから温もりを感じるんだと思います」
「うん。私、メイの事好きよ」
「はい。私もお嬢様の事好きです」
「メイ、今迄ありがとう。お母様の代わりに私の面倒を見てくれて、私を助けてくれて、私を見守ってくれて、ありがとう」
「私は大好きなお嬢様の世話が出来て、側にいれて幸せです」
「私も幸せよ」
私はメイからそっと「ありがとう」と言って身体を離した。
翌朝、メイと顔を合わすのが少し恥ずかしかったけど、メイの優しい眼差しが私の心を温かくした。
朝食を食べ終わるとジムから手紙を貰った。チャーリーのお母様から「昼から邸へ遊びに来て」って書いてあった。私はお邪魔する事を書いた手紙をジムに預けた。 午前中は片付けられる仕事を片付け、昼食を食べてからブラウニー侯爵家へ向かった。
ブラウニー侯爵家の玄関に付き、グレンに手を借り馬車から降りればチャーリーのお母様が既に待っていらして慌ててカーテシーをして挨拶をした。
「本日はお招き頂き……」
「もう!エミリーヌちゃん、私とエミリーヌちゃんの仲でしょ?遊びに来ちゃった~で良いの!」
「え?」
チャーリーのお母様は私を抱き寄せ、額に口付けをした。
「あ、あの…」
「嫌、だった?」
「いえ。嬉しいです」
「そうなの?エミリーヌちゃんは可愛いわ~」
と、今度は頬へ口付けされた。
「さあ、中へ入りましょ?」
と、手を繋がれ、花が咲いてるのが見えるサロンへ付いた。
「さあ座って」
と、椅子に案内され、メイドがお茶とお菓子を用意してサロンを出て行き、私はチャーリーのお母様と二人きりになった。
「突然ごめんなさいね」
「いえ」
「きちんとお礼も言ってなかったから。 エミリーヌちゃん、息子のチャーリーを救ってくれてありがとう。エミリーヌちゃんは我が家の命の恩人だわ。これからは何か困った事があれば私に言ってね。私はエミリーヌちゃんの味方だから。ね?」
「ありがとうございます」
「私ね、チャーリーにもう会えないと思っていたの」
夫人はポロポロと涙を流し、
「ハンカチ、使って下さい」
「ありがとう。 私ね、チャーリーがこの邸を出て行ってからあの人、旦那様ね。あの人と何度も喧嘩したの。今迄喧嘩する事もなかったのに。私達も親に決められた婚約だったのよ?でも結婚する前にはお互い愛してたわ。私を大事に大切にしてくれたし私もあの人を支えたいって思ったわ。
私達夫婦は二人目がなかなか出来なくてね。周りから色々言われたわ。それこそ愛人を作れって言われた事もあった。でもあの人は子供は一人で充分。子供が産まれたら私が自分を構ってくれなくなるって。だから自分が子供は一人しか要らないって。
だからね、チャーリーは一人息子だから余計に可愛くて仕方なかったの。きっとあの人は自分の跡を継いで宰相にしたいって思ってたから余計に辛かったと思うわ。でもね、許せなかったの。 相手が王女殿下って事もあったわ。それでも最後まで息子を護って欲しかったの。
チャーリーの元婚約者の事知ってる?」
「はい」
「ならチャーリーがした事も?」
「はい」
「そう。チャーリーは貴族としてしてはいけない事したわ。けど元婚約者も酷かった」
「はい」
「だからこそチャーリーだけが悪い訳ではないわ」
「そう思います」
「それでも相手は王女殿下。我が家が歯向かう事なんて出来なかった」
「そうですね」
「だからもうチャーリーに会う事はないと諦めていたの。 ご飯は食べれてるのか。住む所はあるのか。働く場所は見つかるのか。毎日思っていたわ。 元気に過ごしてくれてたら良い、好きな人を見つけて幸せになってくれれば良いって毎日願ったわ」
「はい」
「ねぇメイ、お願いがあるんだけど」
「何ですか?」
「一度抱き締めさせてくれない?」
「はい?」
「駄目?」
「分かりました。さあどうぞ」
メイは腕を広げて待っていた。 私はメイに近寄りメイを抱き締めた。
「メイも温かくて柔らかいのね」
「お嬢様、どうされました?」
「あのね、チャーリーのお母様に昨日抱き締められたの。 お祖父様やグレンやチャーリーと違って柔らかかった」
「男性は逞しい身体付きですから」
「そうね。グレンなんて硬いわ」
「グレンさんは騎士ですから」
「そうね。だけど温かいわ。抱き寄せられると温かいのね。 今迄もお祖父様に抱き寄せられたけど温かいって感じる事が出来なかった。 嬉しかったのよ?私を抱き締めてくれるのはお祖父様だけだったもの。けど私の心が見ようとも感じようともしなかった。お祖父様は私を可愛がり愛してくれた。だけど私が私の心がすべてを閉ざした。愛情が見えていたはずなのに、感じていたはずなのに……」
「身体で感じる温もりは人の体温ですが、抱き寄せる行為には愛しいと思う気持ちです」
「うん」
「抱き寄せられると温かいと感じるのは心が温かくなるからだと私は思います。全ての思いは心なのです」
「うん」
「抱き寄せると身体がくっつきますよね?」
「そうね」
「嫌いな人とくっつきたいですか?」
「嫌よ」
「心から安心する人なら抱き寄せられても嫌ではありませんよね?」
「うん」
「お互いの気持ちが愛しいと感じるから温もりを感じるんだと思います」
「うん。私、メイの事好きよ」
「はい。私もお嬢様の事好きです」
「メイ、今迄ありがとう。お母様の代わりに私の面倒を見てくれて、私を助けてくれて、私を見守ってくれて、ありがとう」
「私は大好きなお嬢様の世話が出来て、側にいれて幸せです」
「私も幸せよ」
私はメイからそっと「ありがとう」と言って身体を離した。
翌朝、メイと顔を合わすのが少し恥ずかしかったけど、メイの優しい眼差しが私の心を温かくした。
朝食を食べ終わるとジムから手紙を貰った。チャーリーのお母様から「昼から邸へ遊びに来て」って書いてあった。私はお邪魔する事を書いた手紙をジムに預けた。 午前中は片付けられる仕事を片付け、昼食を食べてからブラウニー侯爵家へ向かった。
ブラウニー侯爵家の玄関に付き、グレンに手を借り馬車から降りればチャーリーのお母様が既に待っていらして慌ててカーテシーをして挨拶をした。
「本日はお招き頂き……」
「もう!エミリーヌちゃん、私とエミリーヌちゃんの仲でしょ?遊びに来ちゃった~で良いの!」
「え?」
チャーリーのお母様は私を抱き寄せ、額に口付けをした。
「あ、あの…」
「嫌、だった?」
「いえ。嬉しいです」
「そうなの?エミリーヌちゃんは可愛いわ~」
と、今度は頬へ口付けされた。
「さあ、中へ入りましょ?」
と、手を繋がれ、花が咲いてるのが見えるサロンへ付いた。
「さあ座って」
と、椅子に案内され、メイドがお茶とお菓子を用意してサロンを出て行き、私はチャーリーのお母様と二人きりになった。
「突然ごめんなさいね」
「いえ」
「きちんとお礼も言ってなかったから。 エミリーヌちゃん、息子のチャーリーを救ってくれてありがとう。エミリーヌちゃんは我が家の命の恩人だわ。これからは何か困った事があれば私に言ってね。私はエミリーヌちゃんの味方だから。ね?」
「ありがとうございます」
「私ね、チャーリーにもう会えないと思っていたの」
夫人はポロポロと涙を流し、
「ハンカチ、使って下さい」
「ありがとう。 私ね、チャーリーがこの邸を出て行ってからあの人、旦那様ね。あの人と何度も喧嘩したの。今迄喧嘩する事もなかったのに。私達も親に決められた婚約だったのよ?でも結婚する前にはお互い愛してたわ。私を大事に大切にしてくれたし私もあの人を支えたいって思ったわ。
私達夫婦は二人目がなかなか出来なくてね。周りから色々言われたわ。それこそ愛人を作れって言われた事もあった。でもあの人は子供は一人で充分。子供が産まれたら私が自分を構ってくれなくなるって。だから自分が子供は一人しか要らないって。
だからね、チャーリーは一人息子だから余計に可愛くて仕方なかったの。きっとあの人は自分の跡を継いで宰相にしたいって思ってたから余計に辛かったと思うわ。でもね、許せなかったの。 相手が王女殿下って事もあったわ。それでも最後まで息子を護って欲しかったの。
チャーリーの元婚約者の事知ってる?」
「はい」
「ならチャーリーがした事も?」
「はい」
「そう。チャーリーは貴族としてしてはいけない事したわ。けど元婚約者も酷かった」
「はい」
「だからこそチャーリーだけが悪い訳ではないわ」
「そう思います」
「それでも相手は王女殿下。我が家が歯向かう事なんて出来なかった」
「そうですね」
「だからもうチャーリーに会う事はないと諦めていたの。 ご飯は食べれてるのか。住む所はあるのか。働く場所は見つかるのか。毎日思っていたわ。 元気に過ごしてくれてたら良い、好きな人を見つけて幸せになってくれれば良いって毎日願ったわ」
「はい」
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