妹がいなくなった

アズやっこ

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 チャーリーと邸へ戻る途中、ようやく来た騎士団がジェフ様を捕縛し連れて行った。


「ちょっとチャーリー、何なの?」

「え?駄目だった?」

「婚約者のふりは助かったわ。でも…」

「だって雰囲気は必要じゃない?エミリーヌだって俺の頬に口付けしただろ?」

「そ、そうだけど…」

「これで諦めてくれると良いけどね?」

「まあね」

「そういえば、何でチャーリーから贈られたドレスや宝石や髪飾りがチャーリーの色の物なの?」

「ようやく気付いたんだ。だけど今はまだ内緒。それは自分で考えて」

「何でよ」

「俺今から商会に行って来るな」


 チャーリーは商会へ向かった。

 私は一応報告をマルボール伯爵家へ知らせた。

 夕食を食べ終わり暫くしてチャーリーがやって来て、


「遅くなってごめんな」

「こっちこそごめんなさい。夕食は食べた?」

「食べてきた。それで相談って何だ?」


 私はサラの彼が作った髪飾りを数個机の上に並べた。


「これか」

「え?」

「エディーナ嬢がエミリーヌに会いに行くならって伝言頼まれたけど、俺も見て考えて欲しいって。後、エミリーヌが決めた事なら協力するってさ」


 チャーリーは髪飾りを一つ一つ手に取り見て、


「エミリーヌは何を悩んでるんだ?」

「チャーリーの率直な感想を教えて?」

「俺はこの手はつといからな。まあしいて言うなら普通、かな?」

「やっぱりそう思うわよね? 確かに出来は普通。 慌てて作った事が分かるくらい雑。だけど細かい細部はとても丁寧。 細かい部分を雑に作るなら悩まないんだけど」

「リンがさ言ってた事なんだけど、見た目は良くても雑に刺す子はこれからも雑にしか刺せないし、綺麗に見えなくても丁寧に刺す子は上達すれば綺麗に刺せる子になるって言ってた事を今思い出したよ。結局職人って皆そうだろ? ギルのような才能を持った者は一握りだ。殆どが人より手先が器用なだけだろ? 手先が器用なだけでも売れる売れないは作り出す作品次第だ。 雑な作りは雑に見えるし、丁寧に作れば綺麗に見える」

「そうね」

「これを作ってる環境は?」

「朝から晩まで働いて、多分寝る間を惜しんで作ってると思う。 商会からの依頼だからね」

「まあ、ここで良い物作れば今後も商会から仕事が回ってくると思えば寝る間を惜しんででも作るだろうな。 確か妹の恋人だっけ?」

「そう」

「エミリーヌの悩みは私情か?」

「私情ね。正直言うと確かに少しは入ってるわ。どうして妹に力を貸さないといけないのかって。だけどそれだけじゃないわ。デザインのセンスとかはデザイナーにデザインを書いて貰えば済む話だわ。ただね…。 細部は丁寧でも作りが雑っていう所が引っかかるの。 時間がないから雑なのか、時間があれば全部丁寧に作れるのか。そこが分からなくて」

「エミリーヌが商会から依頼した理由があるだろ?それは何?」

「サラが、サラって妹ね。サラがまだこの邸で暮らしてた時、その恋人がサラへ贈った髪飾りをたまたま見かけたの。沢山ドレスや宝石を持ってるのに露店で売ってそうな髪飾りを大事にしてたから目に止まったのかもしれないわよ?だけどとても丁寧に作られてた髪飾りが印象的に残ってるのよ。 サラのドレスや宝石は覚えてないのに」

「確かに恋人へ贈るから丁寧に作ったのかもしれない。そこに愛情も入れただろうしな。でもエミリーヌが印象的に残る程の作品を作るなら一度かけて見るのも良いんじゃないか?」

「そうね。でもやっぱり癪ね」

「それは仕方ないさ。妹に手を貸したくないエミリーヌの気持ちも分かるしな」

「でも意地悪いじゃない」

「そうか?そうやって口に出す事も大事だよ。俺になら言えるから本音を言ったんだろ?」

「それは勿論よ」

「ならこれからも俺には本音を言えば良い。それでエミリーヌを見る目が変わる訳でも側から離れる訳でも無いしな」

「ありがとう」

「確かギルには断られたんだったな」

「そうなの。私も貴族が持つアクセサリーを作るには無理だと思ってるわよ?」

「それってギルのを見てるからだろ?」

「それはあるかも」

「なら平民向けに作ろうとしたのか?」

「そうなの。この国でのミリー商会は貴族か、平民でもお金持ちの家を対象だからね。でも隣国は貴族と平民と両方を対象にしてるでしょ?だからこの国でもそうしようかと思ったの。でも最悪本店に送ってチャーリーに頼むつもりだったのよ?」

「そうだったんだ。 本店でもミリー商会での売買は貴族だけだぞ。 初めに受け継いだ商店の家覚えてる?」

「あの空き家?」

「そう。あそこは平民が着る服を売る場所にしたんだよ。せっかく工事して路から見える側を一面ガラス張りにしたのに使わないのは勿体ないだろ? で、看板もミリー商店のまま使ってるんだよ。ミリー商会の中のミリー商店って感じでな。 隣国でも貴族は平民と同じ所で頼みたくないって所があるからな」

「そうなの?」

「貴族はどの国でも変わらない」

「そっか」

「本店の様に平民が住む近い所にミリー商店を作って平民が利用する服を売れば良いんじゃないか?そこにアクセサリーや髪飾りも平民が好むデザインの物を置けば良い」

「そうね。ならチャーリー頑張って?当分本店には帰れないわね」

「そうか。この国でも俺か」

「ディーナにやらせるつもり?」

「嫌、俺だな。仕方ない。本店から数人呼んでくるか」

「この国でも孤児院の子供達の雇用が出来れば良かったんだけど…」

「まあそこはボチボチだな」

「そうね」


 サラの彼の事はチャーリーに任せる事にし、チャーリーは宿へ帰って行った。


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