妹がいなくなった

アズやっこ

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 いつの間にか夕方になっていた。


「なあ」

「何?」

「俺は本当に許されてもいいのか?」

「私が許すって言ってるの!」

「でも、不貞した男だ」

「なら癒してくれた恋人が居た時、他の人を好きになった?他の人と身体を繋げた?繋げたいと思った?」

「いや」

「愛する人が居たら他の人なんて目に入らなかったでしょ?」

「ああ」

「ならこれから愛する人が出来ても他の人なんて目に入らないくらい愛すわよ」

「ああ、そうだな」

「いつの間にか夕方ね」

「本当にな」

「今日は泊まっていってね」

「は?馬鹿か。帰るに決まってるだろ?」

「もう夜だよ?」

「なら商会に泊まるよ。エディーナ嬢とも話がしたいし」

「余りオススメしないけど、まぁ頑張って?」

「話すだけだぞ?何を頑張るんだ」

「ディーナが商会の上で住んでるのは知ってるわよね?」

「ああ。だから今から行って話そうと。あ!俺は商会の事務所で寝るからな?誤解するなよ?」

「ならギルが商会で寝泊まりしてるのは知らないの?」

「ギルは別の作業所で寝泊まりしてるだろ?」

「さっき言ったじゃない。ギルは今ディーナを口説き中って」

「え?」

「口説き中って言ってもあれよ?チャーリーと同じ。罪を償う身だからって断ってるけど、まぁあの二人の邪魔はしない事ね。ギルにへそを曲げられたくないなら」

「もしかして良い雰囲気なのか?」

「私からみても良い雰囲気よ」

「色恋に鈍いお前から見てもか。なら商会は明日だな」

「そうそう。それが良いわね」

「どこか安価の宿でも探すよ」

「もう!泊まれば良いじゃない。それか自分の家帰る?」

「元な元。帰れる訳ないだろ?」

「なら騎士達と一緒に寝たら?」

「そうだな。グレンさんに頼んでみるよ」


コンコン


「誰?」

「俺。入るぞ」


 グレンが入ってきて、いきなり私を抱き寄せた。


「グレン?」

「もう大丈夫か?」

「心配かけた?」

「ああ。心配した。エミーは俺の大事な妹だからな」

「うん」


 グレンは私の髪を優しく撫でた。


「ごめんな?」

「何が?」

「婚約者になれなくて」

「もう!馬鹿!」

「そうか?」

「そうよ。グレンなんてこっちからお断りよ!」

「いいぞ。俺は婚約者より兄貴としてエミーの側にずっと居たいからな」

「もしかしてジムの跡継がなかったのって私の為?」

「エミーの為だけど、執事より騎士として護りたかったからだな」

「そう。これからも護ってね?」

「当たり前だろ?誰がエミーの我儘を聞くんだよ。人使い荒いしな。俺以上にエミーもエミーの心も護れる奴が出てくるまでは俺のエミーは預けれないな」

「うん。私も私以上にグレンを好きでいてくれる人じゃなきゃグレンをあげれない」

「おう」

「それよりどうしたの?」

「そうそう。夕食の用意が出来ましたって伝えに来たんだった」

「分かった」


 グレンが部屋から出て行き、


「何か妬けるな~」

「何が?」

「二人の関係が」

「そう?」

「お互い考えてる事が分かるって言うか、塾年夫婦みたいな何も言わなくても通じるみたいなさ~」

「確かにね。まだお祖父様がここに住んでた時はグレンに遊んで貰った覚えが薄っすらあるし、お祖父様が出て行った時にグレンは平民が通う学校に入って騎士として訓練してたから会えなかったけど、騎士として戻って来てからはずっと一緒だから」

「グレンさんの愛情は受け取ってたんだ」

「うん。グレンだけは私と対等でいてくれたし、唯一我儘も弱音も吐けてたから。私を出せた唯一の人だからね。息抜きにも付き合ってくれたし」

「そうなんだ。俺だけと思ってたのにな」

「心の奥の本音はチャーリーだけよ?あんな醜い感情人に見せれないでしょ?」

「グレンさんにも?」

「見せるつもりは無いけど、見せてもグレンは変わらないと思う」

「確かにね」

「さあ夕食食べに行きましょ?」

「俺まで良いのか?」

「どうして?今日はお客様でしょ?」

「そうなのか?」

「なら、ミリー商会の経営者様、本日は我が侯爵家へようこそ。お出で頂き光栄ですわ。お口に合うか分かりませんが夕食でもいかがでしょうか。これなら良い?」

「くくくっ。そういう所俺好きだな~」

「お気に召したみたいで」

「ああ、気にいった。ではレディお手を」

「あら、エスコートして頂けますの?」

「はい」

「場所分かるの?」

「最後までやり通さない所も好きだわ~」

「疲れちゃうもの」

「なら手を繋ぐのは嫌?」

「手?嫌じゃない。チャーリーの手って温かくて優しい手なのよ。知ってた?」

「自分では気付かないものよ?」

「ふふっ。もうやめてよ」

「やっぱり笑った方が似合う。もっと笑いな、な」

「うん」

「じゃあ俺を案内してくれる?」

「ええ」


 私達は手を繋ぎゆっくり歩きながら食堂まで行った。


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