妹がいなくなった

アズやっこ

文字の大きさ
上 下
49 / 187

48

しおりを挟む
 いつの間にか夕方になっていた。


「なあ」

「何?」

「俺は本当に許されてもいいのか?」

「私が許すって言ってるの!」

「でも、不貞した男だ」

「なら癒してくれた恋人が居た時、他の人を好きになった?他の人と身体を繋げた?繋げたいと思った?」

「いや」

「愛する人が居たら他の人なんて目に入らなかったでしょ?」

「ああ」

「ならこれから愛する人が出来ても他の人なんて目に入らないくらい愛すわよ」

「ああ、そうだな」

「いつの間にか夕方ね」

「本当にな」

「今日は泊まっていってね」

「は?馬鹿か。帰るに決まってるだろ?」

「もう夜だよ?」

「なら商会に泊まるよ。エディーナ嬢とも話がしたいし」

「余りオススメしないけど、まぁ頑張って?」

「話すだけだぞ?何を頑張るんだ」

「ディーナが商会の上で住んでるのは知ってるわよね?」

「ああ。だから今から行って話そうと。あ!俺は商会の事務所で寝るからな?誤解するなよ?」

「ならギルが商会で寝泊まりしてるのは知らないの?」

「ギルは別の作業所で寝泊まりしてるだろ?」

「さっき言ったじゃない。ギルは今ディーナを口説き中って」

「え?」

「口説き中って言ってもあれよ?チャーリーと同じ。罪を償う身だからって断ってるけど、まぁあの二人の邪魔はしない事ね。ギルにへそを曲げられたくないなら」

「もしかして良い雰囲気なのか?」

「私からみても良い雰囲気よ」

「色恋に鈍いお前から見てもか。なら商会は明日だな」

「そうそう。それが良いわね」

「どこか安価の宿でも探すよ」

「もう!泊まれば良いじゃない。それか自分の家帰る?」

「元な元。帰れる訳ないだろ?」

「なら騎士達と一緒に寝たら?」

「そうだな。グレンさんに頼んでみるよ」


コンコン


「誰?」

「俺。入るぞ」


 グレンが入ってきて、いきなり私を抱き寄せた。


「グレン?」

「もう大丈夫か?」

「心配かけた?」

「ああ。心配した。エミーは俺の大事な妹だからな」

「うん」


 グレンは私の髪を優しく撫でた。


「ごめんな?」

「何が?」

「婚約者になれなくて」

「もう!馬鹿!」

「そうか?」

「そうよ。グレンなんてこっちからお断りよ!」

「いいぞ。俺は婚約者より兄貴としてエミーの側にずっと居たいからな」

「もしかしてジムの跡継がなかったのって私の為?」

「エミーの為だけど、執事より騎士として護りたかったからだな」

「そう。これからも護ってね?」

「当たり前だろ?誰がエミーの我儘を聞くんだよ。人使い荒いしな。俺以上にエミーもエミーの心も護れる奴が出てくるまでは俺のエミーは預けれないな」

「うん。私も私以上にグレンを好きでいてくれる人じゃなきゃグレンをあげれない」

「おう」

「それよりどうしたの?」

「そうそう。夕食の用意が出来ましたって伝えに来たんだった」

「分かった」


 グレンが部屋から出て行き、


「何か妬けるな~」

「何が?」

「二人の関係が」

「そう?」

「お互い考えてる事が分かるって言うか、塾年夫婦みたいな何も言わなくても通じるみたいなさ~」

「確かにね。まだお祖父様がここに住んでた時はグレンに遊んで貰った覚えが薄っすらあるし、お祖父様が出て行った時にグレンは平民が通う学校に入って騎士として訓練してたから会えなかったけど、騎士として戻って来てからはずっと一緒だから」

「グレンさんの愛情は受け取ってたんだ」

「うん。グレンだけは私と対等でいてくれたし、唯一我儘も弱音も吐けてたから。私を出せた唯一の人だからね。息抜きにも付き合ってくれたし」

「そうなんだ。俺だけと思ってたのにな」

「心の奥の本音はチャーリーだけよ?あんな醜い感情人に見せれないでしょ?」

「グレンさんにも?」

「見せるつもりは無いけど、見せてもグレンは変わらないと思う」

「確かにね」

「さあ夕食食べに行きましょ?」

「俺まで良いのか?」

「どうして?今日はお客様でしょ?」

「そうなのか?」

「なら、ミリー商会の経営者様、本日は我が侯爵家へようこそ。お出で頂き光栄ですわ。お口に合うか分かりませんが夕食でもいかがでしょうか。これなら良い?」

「くくくっ。そういう所俺好きだな~」

「お気に召したみたいで」

「ああ、気にいった。ではレディお手を」

「あら、エスコートして頂けますの?」

「はい」

「場所分かるの?」

「最後までやり通さない所も好きだわ~」

「疲れちゃうもの」

「なら手を繋ぐのは嫌?」

「手?嫌じゃない。チャーリーの手って温かくて優しい手なのよ。知ってた?」

「自分では気付かないものよ?」

「ふふっ。もうやめてよ」

「やっぱり笑った方が似合う。もっと笑いな、な」

「うん」

「じゃあ俺を案内してくれる?」

「ええ」


 私達は手を繋ぎゆっくり歩きながら食堂まで行った。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹に婚約者を奪われたけど、婚約者の兄に拾われて幸せになる

ワールド
恋愛
妹のリリアナは私より可愛い。それに才色兼備で姉である私は公爵家の中で落ちこぼれだった。 でも、愛する婚約者マルナールがいるからリリアナや家族からの視線に耐えられた。 しかし、ある日リリアナに婚約者を奪われてしまう。 「すまん、別れてくれ」 「私の方が好きなんですって? お姉さま」 「お前はもういらない」 様々な人からの裏切りと告白で私は公爵家を追放された。 それは終わりであり始まりだった。 路頭に迷っていると、とても爽やかな顔立ちをした公爵に。 「なんだ? この可愛い……女性は?」 私は拾われた。そして、ここから逆襲が始まった。

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました

ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。 このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。 そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。 ーーーー 若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。 作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。 完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。 第一章 無計画な婚約破棄 第二章 無計画な白い結婚 第三章 無計画な告白 第四章 無計画なプロポーズ 第五章 無計画な真実の愛 エピローグ

恋した殿下、あなたに捨てられることにします〜魔力を失ったのに、なかなか婚約解消にいきません〜

百門一新
恋愛
魔力量、国内第二位で王子様の婚約者になった私。けれど、恋をしたその人は、魔法を使う才能もなく幼い頃に大怪我をした私を認めておらず、――そして結婚できる年齢になった私を、運命はあざ笑うかのように、彼に相応しい可愛い伯爵令嬢を寄こした。想うことにも疲れ果てた私は、彼への想いを捨て、彼のいない国に嫁ぐべく。だから、この魔力を捨てます――。 ※「小説家になろう」、「カクヨム」でも掲載

【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。

曽根原ツタ
恋愛
 ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。  ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。  その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。  ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?  

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

処理中です...