妹がいなくなった

アズやっこ

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 お祖父様と夕食を一緒に食べて、私は今、急ぎの書類に目を通している。


 あれから王妃様と王太子妃様のドレスを着た姿を見せて貰い、その場で補正し王宮を後にし夕方に邸に戻って来た。


「ねぇジム、お願いがあるんだけど」

「何でしょうか」

「侯爵家とは関係ない事なんだけど、頼みたい事があるの」

「よろしいですよ」

「ミリー商会の権利をチャーリーに譲渡する手続きをして貰う専門家を紹介して欲しいの」

「では、侯爵家とは関係のない者の方がよろしいですね」

「そうね。その方がいいわ。お願い出来るかしら」

「分かりました。早急に探します」

「お願いね。ジムに迷惑かけるけど」

「お嬢様、差し出がましい様ですが、お聞きしても?」

「何?」

「どうしてチャーリー殿に権利を譲渡なさるのです?」

「ジムに相談も無く勝手に決めて悪いと思ってるわ」

「私は名前と身分を貸しただけですので」

「それでもジムが協力してくれなかったらミリー商店は作れ無かったわ」

「そうですが」

「商店をここまで大きくしてミリー商会と言う名を広めたのも全てチャーリーの努力の賜物なの。私の力じゃないわ。それもたった4年でよ? この国にも支店を出して二国に渡り国へ貢献してるわ」

「そうですね」

「私は名だけの経営者として功績を出したチャーリーへ、その対価を渡すだけ」

「チャーリー殿が受け取りますでしょうか」

「受け取らないわね。だから勝手に経営者にするの」

「文句を言われますね」

「言うわね。でも見合うだけの事をしてるわ。今着てるワンピースもそう。チャーリーに任せてから新品のワンピースしか送られて来ない。それに年に一度ドレスを贈ってくれるわ。私、人から新しい物を贈られたの初めてだったの。いつもお古ばかりだったから」

「そうですね」

「お祖父様がこの邸に居た時は買って貰っていたかも知れないけど、物心付く時にはお祖父様は邸を出た後だったし。 私嬉しかったの。 新しい物が着れる事じゃなくて、私を思って贈ってくれた気持ちが、私の事を考えて作ってくれた気持ちが、とても嬉しかったの」

「はい。そうですね」

「勿論、経営者としての私に感謝の気持ちだとしても、それでも私の為に作り贈ってくれた気持ちでしょ? 人から自分だけの為に贈られるって事がこんなに嬉しくて幸せだと初めて知ったわ」

「はい…」

「それに名だけの経営者なのに毎月、給金が振り込まれてるわ。チャーリーやディーナよりも多くね。働いてないのに貰うのは違うでしょ? それなら働いてる者達へ渡した方がよっぽど為になるわ」

「ですが感謝の気持ちでは?」

「感謝の気持ちはもう沢山貰ってるわ。貰いすぎぐらいよ?」

「そうですが。 一応チャーリー殿は罪を犯した。その罪はどうなさるおつもりで?」

「それだってただ不貞をしただけでしょ?婚約者が居ながら不貞をするのは駄目な事よ?でも国外追放にするまでの事?平民に落とせば済む話だわ」

「相手が元王女殿下の娘様でしたから」

「そうね。でも元婚約者には罪は無いの? 陛下も身内だから罪を見て見ぬ振りするの? 相手が悪かった確かにそうよ?それでも元婚約者も自分の婚約者を下僕の様に奴隷の様に扱って良いの? それを許してたらこの国の未来は無いわね」

「確かにそうですね」

「確かに不貞を許したら秩序が乱れるわ。平民が貴族に護られる様に貴族も国に護られてる。 だけどチャーリーは元々不貞をする様な人じゃないわ。婚約者に誠実に接する事が出来る真面目な人よ? 相手が悪かったで済ませるのは申し訳ないけど相手が悪かっただけの話。 私の元婚約者と大違いよ」

「お嬢様のお相手は何と言うか」

「いいのいいの。 最低限のマナーも出来ない頭の弱い人だっただけよ」

「確かにそうですね」

「チャーリーは充分罰は受けたわ。家族に縁を切られ、恋人には捨てられ、宰相としての将来も無くなった。 平民に落とされ自暴自棄になった時もあったけど、今は国へ貢献してるわ。

税や寄付以外にも孤児院の子供達の職の雇用。 それに孤児院に金銭の寄付と物資の寄付。 孤児院の子達が働ける様に最低限の文字書きや手に職を付けさせてる。

引退した騎士を雇い子供達に剣を教えて貰い、刺繍の刺し方を教える為にリンをはじめお針子達が定期的に孤児院で教えてる。 平民の中でも立場の弱い孤児院の子達を護ってる。 本来なら国が率先してそれ等をやらないといけないの。

チャーリーのお陰で何十人の子供達が飢える事なく、職に付けた? 税や寄付でどれだけ国が助かってる? 職に就けない平民を鉱山で雇う事で治安も良くなったわ。

もう罰は受けた。平民に落とされ国外追放された段階でね。 罪も償った。国を支える地盤の人達を救ってね。 もう良いじゃない。これから先は罪を償う生き方ではなくて、彼の人生を生きても」

「そうですね。チャーリー殿のお陰で平民は職を得た。 分かっていても手を差し伸べる人は少ないです。褒められる事です」

「そうよね」


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