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「お嬢様、ダンから急ぎだそうです」
私は手紙を受け取り、
「何と?」
「3ヶ月後に決まったそうよ」
「視察ですか?」
「そう。視察して帰る時に侯爵家の者達を連れて帰るみたい」
「では調整を致します」
「そうね。あちらの公爵が来る前の2週間前には領地へ入りたいわね。 部屋や料理の確認と視察する場所、警備も確認したいから。その後数週間滞在したいの。 サフェム様の所に顔も出したいし」
「分かりました。急ぎ調整します」
「お願いね。私は陛下へ手紙を書くわ。報告の手紙と侯爵家を空ける事、領地へ行く事の報告も一緒に。ジムからも国へ報告してくれる?」
「分かりました」
「あ!後、午後から商会に行くから出来るだけ昼までに書類持って来て。急ぎの書類は帰って来てから見るわ」
「分かりました」
午前中である程度書類の決済を終わらせ、軽く昼食を食べてから商会へ向かった。
商会へ着くと、
「エミリー様、急いで下さい」
「ディーナどうしたの?」
「早く着替えて下さい。皆準備してますから」
私は試着室へ入らされ、ドレスを着せられ、髪をセットされ、アクセサリーを付けた。
「良くお似合いです」
「ありがとう」
「この前、チャーリー様から送られて来たドレスです」
「これだったのね」
「はい。こちらはお茶会用のドレスです」
「お茶会用って何?」
「夜会用も送られて来ましたから」
「え?そうなの?」
「知りませんでした?」
「ドレスを贈ったとは書かれていたけど、お茶会用と夜会用二着なんて聞いて無かったから」
「ドレスだけではありませんよ?」
「え?」
「今付けてるイヤリングもネックレスもお茶会用と夜会用とセットですよ? それに髪飾りもですよ?」
「髪飾りってお茶会用と夜会用で違う物なの?」
「当たり前です」
「そうなのね。お礼の手紙を書かないと。ここまで贈られてたなんて知らなかったから」
「そうですね。それに…」
「何?」
「いえ、何でもありません。では行きましょうか」
「そうよ!何処に行くの?」
「王妃様から御注文頂いたドレスの刺繍が全て終わりましたので、今から納品に」
「箱に詰めて送るなんて出来ないわよね?」
「当たり前じゃないですか。本日は女性の従業員もお供します。馬車も3台用意しました」
「3台も?」
「1人数枚手に持ちますので」
「そうね。何か疲れそうね」
「ですが流石に王妃様のドレスを布で被せてあるとは言え馬車の座席に置く事も荷馬車で運ぶ事も出来ませんし」
「そうよね。仕方ないわね」
「はい。王妃様の予定を確認して、先触れも出してあります」
「分かったわ。向かいましょう」
馬車3台に女性の従業員が2名づつ乗り、手にはドレスを3枚づつ持ち、侯爵家の馬車には私とディーナが乗り込み王宮へ出発した。
「エミリー様、今着てるお茶会用のドレスは淡い紫色ですが、夜会用は深い紫色でスカート部分に銀色の糸で総刺繍されてましたよ? やはり本店のお針子さんの刺繍は素晴らしいです。リン様が刺繍されたのですか?」
「多分そうね。チャーリーが私に贈ってくれるドレスは全てリンの手作りだから。 邸で着てるワンピースは見習いの子達が作ってくれてるの。 デザインもお針子もね。 私に出来を見せる為ね。 別に私は何も言うつもりは無いのよ? チャーリーやアンネやリンにその辺は任せてあるし、任せられるもの」
「信頼されてるんですね」
「そうね。チャーリーの努力のお陰でこの国にも支店を出せたんだもの」
「そうですね」
「ねぇ、ディーナ、ここだけの話よ?」
「はい」
「私、チャーリーに商会を譲ろうと思うの。チャーリーを勧誘に行った時にも本人には伝えたんだけど、断られたのよね。権利は持ってろって。 でもここまで商会を大きくしたのは私ではなくてチャーリーよ? 私は小さな商店を任せただけ。 支店も作り、この国にも隣国にも金銭面で協力してるわ」
「そうですね」
「商会の経営者になったらこの国にも帰って来れない? もうそろそろ許されても良いと思うの」
「はい」
「確かに婚約者が居たのにも関わらず恋人を作り不貞をしたのは罰せられても仕方ないわ。でももう罪は償ったと思うの。 それにその婚約者には何も罰が無かったのが、私未だに許せないのよ」
「チャーリー様の婚約者、元ですが、王女殿下が降下した公爵家のご令嬢でしたよね?」
「そうよ。人を人として扱わない令嬢よ。人を尊重する事も出来ず軽く見てる人よ。 婚約者を下僕の様に奴隷の様に扱って心を壊しても罰せられなかった人」
「公爵令嬢ですよね? 公爵令嬢とは貴族の見本になるべく人ですよ」
「本来ならね。 でもあの令嬢は違うの。母親が元王女だからだと思うけど自分だけは敬う価値があり、その他は価値のない者。そう思ってるの」
「それはチャーリー様もお気の毒でしたね。もし他の令嬢が婚約者でしたら今頃は宰相様になられていたかもしれませんね」
「そうね。でも、宰相は無理でも商会の経営者にはなれるわ。ねぇディーナ、私からチャーリーへ譲渡して経営者になっても構わない? ディーナは支店の代表だから意見を聞きたいの」
「私は構いません。確かにエミリー様が商会から退かれるのは残念ですが、共同経営者とか相談役とかで商会に席を置く事は可能ですし、チャーリー様がこの国へ戻れる手段として経営者になるのであれば私が反対する事はありません」
「ありがとう」
私は手紙を受け取り、
「何と?」
「3ヶ月後に決まったそうよ」
「視察ですか?」
「そう。視察して帰る時に侯爵家の者達を連れて帰るみたい」
「では調整を致します」
「そうね。あちらの公爵が来る前の2週間前には領地へ入りたいわね。 部屋や料理の確認と視察する場所、警備も確認したいから。その後数週間滞在したいの。 サフェム様の所に顔も出したいし」
「分かりました。急ぎ調整します」
「お願いね。私は陛下へ手紙を書くわ。報告の手紙と侯爵家を空ける事、領地へ行く事の報告も一緒に。ジムからも国へ報告してくれる?」
「分かりました」
「あ!後、午後から商会に行くから出来るだけ昼までに書類持って来て。急ぎの書類は帰って来てから見るわ」
「分かりました」
午前中である程度書類の決済を終わらせ、軽く昼食を食べてから商会へ向かった。
商会へ着くと、
「エミリー様、急いで下さい」
「ディーナどうしたの?」
「早く着替えて下さい。皆準備してますから」
私は試着室へ入らされ、ドレスを着せられ、髪をセットされ、アクセサリーを付けた。
「良くお似合いです」
「ありがとう」
「この前、チャーリー様から送られて来たドレスです」
「これだったのね」
「はい。こちらはお茶会用のドレスです」
「お茶会用って何?」
「夜会用も送られて来ましたから」
「え?そうなの?」
「知りませんでした?」
「ドレスを贈ったとは書かれていたけど、お茶会用と夜会用二着なんて聞いて無かったから」
「ドレスだけではありませんよ?」
「え?」
「今付けてるイヤリングもネックレスもお茶会用と夜会用とセットですよ? それに髪飾りもですよ?」
「髪飾りってお茶会用と夜会用で違う物なの?」
「当たり前です」
「そうなのね。お礼の手紙を書かないと。ここまで贈られてたなんて知らなかったから」
「そうですね。それに…」
「何?」
「いえ、何でもありません。では行きましょうか」
「そうよ!何処に行くの?」
「王妃様から御注文頂いたドレスの刺繍が全て終わりましたので、今から納品に」
「箱に詰めて送るなんて出来ないわよね?」
「当たり前じゃないですか。本日は女性の従業員もお供します。馬車も3台用意しました」
「3台も?」
「1人数枚手に持ちますので」
「そうね。何か疲れそうね」
「ですが流石に王妃様のドレスを布で被せてあるとは言え馬車の座席に置く事も荷馬車で運ぶ事も出来ませんし」
「そうよね。仕方ないわね」
「はい。王妃様の予定を確認して、先触れも出してあります」
「分かったわ。向かいましょう」
馬車3台に女性の従業員が2名づつ乗り、手にはドレスを3枚づつ持ち、侯爵家の馬車には私とディーナが乗り込み王宮へ出発した。
「エミリー様、今着てるお茶会用のドレスは淡い紫色ですが、夜会用は深い紫色でスカート部分に銀色の糸で総刺繍されてましたよ? やはり本店のお針子さんの刺繍は素晴らしいです。リン様が刺繍されたのですか?」
「多分そうね。チャーリーが私に贈ってくれるドレスは全てリンの手作りだから。 邸で着てるワンピースは見習いの子達が作ってくれてるの。 デザインもお針子もね。 私に出来を見せる為ね。 別に私は何も言うつもりは無いのよ? チャーリーやアンネやリンにその辺は任せてあるし、任せられるもの」
「信頼されてるんですね」
「そうね。チャーリーの努力のお陰でこの国にも支店を出せたんだもの」
「そうですね」
「ねぇ、ディーナ、ここだけの話よ?」
「はい」
「私、チャーリーに商会を譲ろうと思うの。チャーリーを勧誘に行った時にも本人には伝えたんだけど、断られたのよね。権利は持ってろって。 でもここまで商会を大きくしたのは私ではなくてチャーリーよ? 私は小さな商店を任せただけ。 支店も作り、この国にも隣国にも金銭面で協力してるわ」
「そうですね」
「商会の経営者になったらこの国にも帰って来れない? もうそろそろ許されても良いと思うの」
「はい」
「確かに婚約者が居たのにも関わらず恋人を作り不貞をしたのは罰せられても仕方ないわ。でももう罪は償ったと思うの。 それにその婚約者には何も罰が無かったのが、私未だに許せないのよ」
「チャーリー様の婚約者、元ですが、王女殿下が降下した公爵家のご令嬢でしたよね?」
「そうよ。人を人として扱わない令嬢よ。人を尊重する事も出来ず軽く見てる人よ。 婚約者を下僕の様に奴隷の様に扱って心を壊しても罰せられなかった人」
「公爵令嬢ですよね? 公爵令嬢とは貴族の見本になるべく人ですよ」
「本来ならね。 でもあの令嬢は違うの。母親が元王女だからだと思うけど自分だけは敬う価値があり、その他は価値のない者。そう思ってるの」
「それはチャーリー様もお気の毒でしたね。もし他の令嬢が婚約者でしたら今頃は宰相様になられていたかもしれませんね」
「そうね。でも、宰相は無理でも商会の経営者にはなれるわ。ねぇディーナ、私からチャーリーへ譲渡して経営者になっても構わない? ディーナは支店の代表だから意見を聞きたいの」
「私は構いません。確かにエミリー様が商会から退かれるのは残念ですが、共同経営者とか相談役とかで商会に席を置く事は可能ですし、チャーリー様がこの国へ戻れる手段として経営者になるのであれば私が反対する事はありません」
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