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私達の騒ぎを聞きつけ、
「サラフィス!お前と言う奴は!」
「お祖父様!」
お祖父様が執務室へ来た。お祖父様の後ろでジムが申し訳なさそうな顔をしていた。
「お祖父様、助けて!お姉様が虐めるの」
「エミリーは何も間違った事など言ってない」
「え?」
「お前は自分の意思で勝手に出て行ったんだ。それを何故お前が侯爵家の中に居る」
「お祖父様? 私は侯爵家の娘です」
「確かに元娘だ。今は他人だ」
「お祖父様まで酷いわ」
「酷いだと!当たり前だ! 侯爵令嬢としての責任を放棄した者に優しくする必要などない」
「私もお祖父様の孫だわ」
「孫?」
「ええ」
「なら儂の為に嫁に行ってくれるのか?」
「嫁ですか?何処に」
「伯爵の爺の後妻に入って、侯爵家と繋がりを持て。それなら侯爵令嬢として戻してやっても良いぞ」
「後妻?それもお爺さん? 嫌よ!どうして私がそんな人へ嫁がないといけないの! お姉様が嫁げば良いじゃない!」
「エミリーは侯爵家に取って大切な子だ。たがお前は別に良いだろう?」
「私も大切な子だわ!」
「お前が侯爵家に居て何が出来る! 領地経営か?書類の計算か? 他家との交渉か? お金を回せぬお前に何の価値がある」
「そんなの当主の仕事じゃない」
「そうだ。エミリーは当主。現当主として侯爵家の大切な子だ。 お前はそもそも次女。次女とは家と家を繋ぐ為他家へ嫁ぐ身。 侯爵家に取ってより良い縁を繋ぐ為の道具。お前の価値などそれくらいしか無い」
「そんな……」
「伯爵の爺の所へ嫁ぐと言うなら貴族籍を戻す事も考えよう。どうする」
「私には彼がいます。他の人に嫁ぐなんて出来ません」
「ならその彼とやらと仲良く暮せ。もう侯爵家とは関係ない」
「そんな……」
「お前は成人した大人だ。もう子供ではない。誰かの庇護下で護られる子供では無い。いつ迄も子供の真似をするな。 自分が起こした行動の責任を取れ。そして心を入れ替えて、自分の立場を理解しろ。
お前は自分の意思で男に付いて行った。男が勘当され平民になった事も知っていたはずだ。 それでも平民の男に付いて行った。 ならその男と暮らすには自分がどうしたら良いか考えろ。 人を頼るのではなく、自分で何をすれば良いか考えろ。 お前はもう平民だ。貴族ではない」
「お祖父様…」
「なぁ、サラ、お前だって爺さんになんか嫁ぎたくないだろ? 後妻と言っても自由に使えるお金もない。愛もない。そうだろ? だけど、男とは愛はある。お金はないかも知れないが愛はある。愛があればどんな困難にも二人で力を合わせて乗り越えられる。愛が無い生活は苦しいぞ? 愛があれば心は豊かになる。そうだろ?」
「うん」
「サラと男には愛はあるんだ。それ以外何を望む。そうだろ?」
「うん」
「平民になったのも男と愛を貫く為。男との愛の為に貴族という立場を捨て平民になった。物語みたいじゃないか。そうだろ?」
「そうね」
「二人の愛は誰にも引き離せない。そうだろ?」
「そうよ」
「サラは貴族という身分を自ら捨て、愛する男の元へ行った。平民になったサラは男と愛を貫いた。そう、サラは男と平民になって愛を貫くんだ。良いな?」
「お祖父様、分かったわ」
「お前は自ら貴族を捨てた。だからもう家には帰れない。悲劇のヒロインだ。悲劇のヒロインがいつ迄も貴族の家で騒いでいたら馬鹿なヒロインになるぞ?良いのか?嫌だよな?」
「嫌よ」
「お前は家に帰れない悲劇のヒロインで皆にも同情されるが、それでも愛を貫いた憧れの女性になるんだ」
「そうね、私、頑張るわ」
「そうか、頑張るか。ならもう我々とサラは他人だ。他人に迷惑かけたら迷惑ヒロインだぞ?嫌だよな?」
「ええ」
「ならもうここへは来てはいけない。エミリーにも迷惑をかけてはいけない。サラが迷惑ヒロインになりたくないならな」
「分かったわ。お姉様にも迷惑かけない。私、愛する彼と一緒に頑張るわ。お姉様も見てて、私頑張るから」
「サラ、良く言った。流石物語のヒロインだ」
「へへっ、そう?」
「サラ、私も貴女が愛を貫く姿を応援してるわ」
「お姉様、ありがとう。なら私は愛する彼の元へ帰るわ」
「そうね。早く帰って彼を安心させてあげなきゃ。貴女の顔が見れなくて心配してるわよ?」
「そうね」
サラはルンルン気分で帰って行った。部屋に残された私は、
「お祖父様凄いわね」
「何がだ?」
「どれだけ説明しても理解しなかったのに」
「今でも少しも理解してないだろうな。だがサラみたいなタイプには自分が物語のヒロインになれれば良いんだ。これからお金が無くて食事に困っても悲劇のヒロインとして何とかやっていくだろう」
「でも良くヒロインとか知ってましたね?」
「今、ヘレンがそういう小説に嵌っててな。儂も読まされる」
「お祖母様が?」
「何が楽しいのか儂にはさっぱり分からんがな」
「私もさっぱり分かりませんが」
「読んだのか?」
「一応。学園でも流行っていましたし。ですが何処の世界に文字が書けない頭の悪い平民の方が王妃になれるのか。さっぱりでしたわ。王妃になるにはまず賢くなくてはなれませんもの」
「物語とは夢物語だ。空想の中で楽しむ物だ。それが分からぬ者は馬鹿だな」
「そうですわね」
という事はサラは馬鹿だ!と言ってる様な物。お祖父様は流石ね。切れ者侯爵と言われていたのは本当ね。 これがお祖父様の交渉術?なのかしら。
「サラフィス!お前と言う奴は!」
「お祖父様!」
お祖父様が執務室へ来た。お祖父様の後ろでジムが申し訳なさそうな顔をしていた。
「お祖父様、助けて!お姉様が虐めるの」
「エミリーは何も間違った事など言ってない」
「え?」
「お前は自分の意思で勝手に出て行ったんだ。それを何故お前が侯爵家の中に居る」
「お祖父様? 私は侯爵家の娘です」
「確かに元娘だ。今は他人だ」
「お祖父様まで酷いわ」
「酷いだと!当たり前だ! 侯爵令嬢としての責任を放棄した者に優しくする必要などない」
「私もお祖父様の孫だわ」
「孫?」
「ええ」
「なら儂の為に嫁に行ってくれるのか?」
「嫁ですか?何処に」
「伯爵の爺の後妻に入って、侯爵家と繋がりを持て。それなら侯爵令嬢として戻してやっても良いぞ」
「後妻?それもお爺さん? 嫌よ!どうして私がそんな人へ嫁がないといけないの! お姉様が嫁げば良いじゃない!」
「エミリーは侯爵家に取って大切な子だ。たがお前は別に良いだろう?」
「私も大切な子だわ!」
「お前が侯爵家に居て何が出来る! 領地経営か?書類の計算か? 他家との交渉か? お金を回せぬお前に何の価値がある」
「そんなの当主の仕事じゃない」
「そうだ。エミリーは当主。現当主として侯爵家の大切な子だ。 お前はそもそも次女。次女とは家と家を繋ぐ為他家へ嫁ぐ身。 侯爵家に取ってより良い縁を繋ぐ為の道具。お前の価値などそれくらいしか無い」
「そんな……」
「伯爵の爺の所へ嫁ぐと言うなら貴族籍を戻す事も考えよう。どうする」
「私には彼がいます。他の人に嫁ぐなんて出来ません」
「ならその彼とやらと仲良く暮せ。もう侯爵家とは関係ない」
「そんな……」
「お前は成人した大人だ。もう子供ではない。誰かの庇護下で護られる子供では無い。いつ迄も子供の真似をするな。 自分が起こした行動の責任を取れ。そして心を入れ替えて、自分の立場を理解しろ。
お前は自分の意思で男に付いて行った。男が勘当され平民になった事も知っていたはずだ。 それでも平民の男に付いて行った。 ならその男と暮らすには自分がどうしたら良いか考えろ。 人を頼るのではなく、自分で何をすれば良いか考えろ。 お前はもう平民だ。貴族ではない」
「お祖父様…」
「なぁ、サラ、お前だって爺さんになんか嫁ぎたくないだろ? 後妻と言っても自由に使えるお金もない。愛もない。そうだろ? だけど、男とは愛はある。お金はないかも知れないが愛はある。愛があればどんな困難にも二人で力を合わせて乗り越えられる。愛が無い生活は苦しいぞ? 愛があれば心は豊かになる。そうだろ?」
「うん」
「サラと男には愛はあるんだ。それ以外何を望む。そうだろ?」
「うん」
「平民になったのも男と愛を貫く為。男との愛の為に貴族という立場を捨て平民になった。物語みたいじゃないか。そうだろ?」
「そうね」
「二人の愛は誰にも引き離せない。そうだろ?」
「そうよ」
「サラは貴族という身分を自ら捨て、愛する男の元へ行った。平民になったサラは男と愛を貫いた。そう、サラは男と平民になって愛を貫くんだ。良いな?」
「お祖父様、分かったわ」
「お前は自ら貴族を捨てた。だからもう家には帰れない。悲劇のヒロインだ。悲劇のヒロインがいつ迄も貴族の家で騒いでいたら馬鹿なヒロインになるぞ?良いのか?嫌だよな?」
「嫌よ」
「お前は家に帰れない悲劇のヒロインで皆にも同情されるが、それでも愛を貫いた憧れの女性になるんだ」
「そうね、私、頑張るわ」
「そうか、頑張るか。ならもう我々とサラは他人だ。他人に迷惑かけたら迷惑ヒロインだぞ?嫌だよな?」
「ええ」
「ならもうここへは来てはいけない。エミリーにも迷惑をかけてはいけない。サラが迷惑ヒロインになりたくないならな」
「分かったわ。お姉様にも迷惑かけない。私、愛する彼と一緒に頑張るわ。お姉様も見てて、私頑張るから」
「サラ、良く言った。流石物語のヒロインだ」
「へへっ、そう?」
「サラ、私も貴女が愛を貫く姿を応援してるわ」
「お姉様、ありがとう。なら私は愛する彼の元へ帰るわ」
「そうね。早く帰って彼を安心させてあげなきゃ。貴女の顔が見れなくて心配してるわよ?」
「そうね」
サラはルンルン気分で帰って行った。部屋に残された私は、
「お祖父様凄いわね」
「何がだ?」
「どれだけ説明しても理解しなかったのに」
「今でも少しも理解してないだろうな。だがサラみたいなタイプには自分が物語のヒロインになれれば良いんだ。これからお金が無くて食事に困っても悲劇のヒロインとして何とかやっていくだろう」
「でも良くヒロインとか知ってましたね?」
「今、ヘレンがそういう小説に嵌っててな。儂も読まされる」
「お祖母様が?」
「何が楽しいのか儂にはさっぱり分からんがな」
「私もさっぱり分かりませんが」
「読んだのか?」
「一応。学園でも流行っていましたし。ですが何処の世界に文字が書けない頭の悪い平民の方が王妃になれるのか。さっぱりでしたわ。王妃になるにはまず賢くなくてはなれませんもの」
「物語とは夢物語だ。空想の中で楽しむ物だ。それが分からぬ者は馬鹿だな」
「そうですわね」
という事はサラは馬鹿だ!と言ってる様な物。お祖父様は流石ね。切れ者侯爵と言われていたのは本当ね。 これがお祖父様の交渉術?なのかしら。
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