妹がいなくなった

アズやっこ

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執務室で、


「グレン、あの子をどう説明すれば良いの?私分からないわ。言葉が通じるなんて思えないんだけど」

「あ~諦めるしか無いかもな」

「毎日騒がれても煩いじゃない」

「違う違う。理解させる事を諦めるしかないって事だ」

「そっちね」

「一応忠告もしたんだ。あまりに騒がしくする様なら容赦なく騎士団に連れて行っても貰えば良い。
彼奴等だってサラが平民になった事ぐらい知ってる。だけど一度は目を瞑った。 だけど次は彼奴等だって容赦なく捕らえるさ」

「そうね。侯爵家の恥を晒す様で嫌だけど、仕方ないわね」


 グレンが出て行き、私は書類に目を通していた。暫くしてジムが来て、


「サラお嬢様の件ですが、大旦那様がお怒りの様で。どうされますか」

「侯爵家の評判も悪くなるわね。あそこまで馬鹿な子とは思わなかったんだけど」

「甘やかされてお育ちになりましたから」

「そうね」

「どうされますか?」

「何度話しても理解しない子と話すと本当に疲れるの。でも仕方ないわね」


私は門で騒ぐサラの元へ行った。


「お姉様~早く入れてよ~」


サラは私の姿を見ると大声で話し掛けてきた。


「騒がないでって何度言えば分かるの?」

「門を開けてくれたら騒がないわよ!」

「貴女は今、侯爵家の恥を晒してるのよ? 門の前で騒ぎ大声を出して叫ぶ。分かってるの!」

「分かってるわよ。でも仕方ないでしょ?門を開けてくれないんだから」

「平民に門を開ける騎士がどこに居るのよ。いる訳ないでしょ!」

「平民じゃないわ」

「もう貴女は平民!平民が邸の中に入りたいなら使用人になりなさい!」

「使用人になったら入れてくれるの?」

「メイドとしてきちんと働くと言うのなら雇うわ。どうするの?」

「メイドでも何でも良いわ。だから入れてよ」

「きちんと働きなさい。働かない時は私も容赦はしない。分かった!」


私は強めの言葉でサラに言った。 


「分かったわ」

「使用人として働くならまずその言葉使いを直しなさい。 主は私、貴女は使用人。その立場を守りなさい。分かった?」

「分かったわ」

「はぁぁ。 なら裏門から入って来なさい」

「どうして裏門なの?」

「どこの邸に使用人が表門から入るのよ。少しは無い頭で考えなさい! 裏門から入って来なさい」


私は邸に戻り、メイを呼んだ。


「メイ、サラをメイドとして雇ったわ。きちんとメイドとして厳しく働かせてね。メイにも迷惑かけるけど、よろしくね」


 メイは裏門でサラが来るのを待ち、サラが来てからメイド服を着せて、洗濯からやらせた。

 メイが報告に来て、


「どう?」

「駄目ですね。他のメイドに代わりにやらせてました。「これは貴女の仕事よ?貴女がやりなさい。私は令嬢なの。水仕事で手が荒れても貴女責任取れるの?」だそうです。あと「私はこの邸の令嬢なのよ。何で使用人と一緒なのよ」とも」

「あの子自分も使用人って事を忘れてるのかしら」

「とりあえず邸の中に入れればこの際使用人でも何でも良いと思ったのでしょうね」

「やっぱりそう思う?私もそう思った」

「なら何故使用人に?」

「理由は2つ。1つは侯爵家の恥を晒さない為。というか、侯爵家の評判を落とさない為ね。 もう1つは自分は使用人と同じ平民だと思い知らせようと思って。 言葉では理解出来ないから、身を持って理解して貰おうと思ったんだけど、無理みたいね」

「そうですね」



バタン!!



 メイと話していたら突然大きな音をたて扉が開いた。


「お姉様、どうして私の部屋に鍵がかかってるの?中に入れないじゃない。お父様とお母様の部屋ま鍵がかかってたわ。どういう事なの!」

「貴女!主の部屋に勝手に入って良いと思ってるの!」

「だって」

「言葉使いを直しなさい!貴女は使用人。言葉使いも禄に出来ない使用人など侯爵家では入りません!出て行きなさい!」

「お姉様?」

「お姉様では無い!キャメル侯爵様と言いなさい!それが出来ないなら話など聞きません!早く出て行きなさい!護衛を呼んで頂戴」

「こ、侯爵様、ごめんなさい」

「ごめんなさいでは無いわ」

「すみません」

「そうよ。で何?」

「私の部屋を開けて下さい」

「使用人が部屋に入って盗みでもするつもり?」

「違うわ。違います」

「では何?」

「自分の部屋で少し休もうと」

「自分の部屋? 使用人があんな良い部屋を与えられると思う? 休む程働いてないでしょ!」

「働きました」

「そう。では使用人部屋に案内して貰いなさい」

「使用人部屋?」

「当たり前でしょ。使用人なんだから使用人部屋に決まってるでしょ」

「自分の部屋があるのに?」

「もうあの部屋は貴女の部屋では無い」

「え?私の部屋です」

「元貴女の部屋なだけ。もう貴女の部屋では無い」

「私のドレスと宝石は?」

「元貴女の部屋の中にあるドレスと宝石は侯爵家の物。もう貴女の物では無い」

「私が買って貰った物だわ」

「確かに貴女に与えられたドレスと宝石。だけど貴女は全て捨てて侯爵家を出て行った。捨てて出て行った者に侯爵家の物を渡す権利は無い。そして貴女は何一つ自分のお金で買った物では無い。侯爵家のお金で買った物」

「確かにそうだけど、私に与えられた物だわ」

「それも侯爵家を出て行った段階で権利は無くなった」

「そんな…酷いわ!」


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