妹がいなくなった

アズやっこ

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31 チャーリー視点

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 俺は今ホテルで過ごしている。嫌、俺は安価の宿で良いって言ったのに、連れて来られた所はホテル。入る時、ジロジロ見られ、居心地が悪かった。 

 部屋に散髪屋が来て、髪の毛を整えて貰い、髭は剃って貰った。 食事は部屋に運ばれ、久しぶりの肉を食べた。エミリーヌ嬢がお酒も用意してくれたが、もう飲む事はしない。飲んで忘れたい事は全部この国に置いて行く。 数日かけて隣国へ行く間に着る服も用意され、宿の手配も済んでるらしい。

手際が良すぎないか?

 馬車も貸し切りらしい。乗り合い馬車で良いと言ったが、贔屓にしてる馬車の業者だから気にするなと。確かに毎日俺の所に通って来た時も侯爵家の馬車では無かった。「私が侯爵家の馬車を使えると思う?」って。本来なら使える権利はエミリーヌ嬢だけだろう。

 当面の生活費としてお金も置いていった。有り難いがここまでして貰って良いのだろうか。 その分商店を頑張るしか恩は返せないな。

 朝、平民が着るには少し高価な服を着て、身支度を整え、ホテルの前に止まっていた馬車に乗り込んだ。乗る前に少し遠回りさせるが、ブラウニー侯爵家の前を通って欲しいと頼み、業者は快く返事をしてくれた。

 暫く走ると懐かしい風景が通り過ぎ、ブラウニー侯爵家の近くを通り過ぎる時、馬車がゆっくり、とてもゆっくり走ってくれた。そして自分が育った家の前、とてもゆっくり走ってくれたのでカーテンを少し開け、目に焼き付けた。

(もう戻ってくる事はない。父上、母上、親不孝者の息子を持ち、迷惑をかけ申し訳ありませんでした。今迄育てて頂きありがとうございます)

俺は馬車の中で頭を下げた。

 門を過ぎ、少ししたら馬車が止まった。侯爵家の護衛騎士が業者に声を掛けてる。業者は「馬車の調子が悪くて点検させて欲しい」と伝えている。騎士が去って、俺はもう一度カーテンを少し開けた。塀があり中を伺う事は出来ない。塀から飛び出た木の枝を見て懐かしく思い、目を瞑れば鮮明に思い出す。子供の頃走り回った庭。 木に登り降りれなくなった事。 母様と手を繋いで花壇を見て散歩した事。 学生の頃ベンチに座り本を読んだ事。 父様と庭を見ながら将来を語り合った事。 全て鮮明に覚えている。

俺は涙を流し、声を殺して泣いた。

 自分の心にケリをつけ業者にお礼を言った。 馬車はまたゆっくりと進む。俺は見えなくなるまで後ろを振り向き家を眺め続けた。 見えなくなった時、馬車はまた走り出し、数日かけて隣国のミリー商店へ着いた。 ミリー商店は見た目普通の家で商店をやってる等分からない様になっていた。
 
 業者はミリー商店に荷物を届け、荷物を受け取り帰って行った。



俺は商店の中に入り、女性2人と向き合う。


「今日からお世話になります、チャーリーです」

「私はデザイナーのアンネ。よろしく」

「私はお針子のリンです。よろしくお願いします」

「早速ですが、お2人の仕事を見学させて貰っても良いですか?」


 俺はアンネの仕事場を見せて貰った。ワンピースやスカートのデザイン画が何枚もあり、その中にドレスのデザイン画も数枚あった。


「ドレスも作るのですか?」

「いえ。これは私の趣味みたいなものよ」

「そうですか」


 次にリンの仕事場を見せて貰った。作りかけの服が台の上に置いてあり、


「今は何をしているんですか?」

「今は裾の部分に刺繍を刺してる所です」

「そうですか」


 アンネが先程受け取った箱を持って来て、箱からドレスを取り出し広げた。


「今から何をするんですか?」

「送られて来たドレスを見るのよ」


 アンネとリンはドレスを数枚見ている。


「破れてるドレスもありますよね?こっちはレースがボロボロだ」

「そうね。いつも送られてくるのはこんなドレスばかりよ」

「これをどうやって服にするんですか?」

「まずは私がデザインを考えるの。そのデザインでリンが服を作る。ただそれだけよ」

「破れてますよ?」

「そこはリンが上手くやってくれるわ」

「リンさん、破れてるドレスをどうやって作るのですか?」

「そうですね。破れてる箇所にもよりますが、裾部分なら切り短くしたり、上の部分なら下の方だけ使いスカートにします」

「はぁ…」

「リン、一度見せてあげたら?その方が早いわ」


 リンは洗濯し終わったドレスを持って来て、ドレス裏返し、糸を取っていった。糸を取り終わり、裏地と言われる薄い布とドレスの生地と分け、アンネがデザイン画した絵を見て、使える生地の所だけ、型紙と言われる紙を置いて生地を切っていった。


「あの、ドレスを切って出来上がるんですか?」

「ドレスも元は一枚の生地から作ります。前身頃、着る時に胸側になる方です。と後ろ身頃、着る時に背中側になる方です。前身頃と後ろ身頃を型紙で切り縫い合わせます。細かい作業はありますが、大まかに言えばと言う事です」

「はい」

「ドレスにしてもワンピースにしてもスカートにしても作り方は同じです。ドレスは腰の所がワンピースにすると窮屈です。なので別の生地を使い切り替えしなどで隠します」

「先程届いたドレスではレースがボロボロでしたが」

「レース部分の糸を取りレースを取れば問題ありません」

「確かにそうですね」

「破けてる箇所が切る事が出来ない時は、布地を花の様に作り破れを隠します」

「はい」

「後は刺繍を刺して終わりです」

「はい」


 刺繍が終わったワンピースを見せて貰い、母上が持っているドレスと変わりない、嫌、それよりも上手?な、刺繍がしてあった。


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