妹がいなくなった

アズやっこ

文字の大きさ
上 下
26 / 187

25 チャーリー視点

しおりを挟む
 俺は19歳になった。相変わらず我儘な婚約者に嫌気がさし、近頃は嫌悪感まで持つ様になった。心の癒やしを求めて平民の彼女に会いに行く。 彼女を手放す事が出来なくなった俺はいずれ彼女を愛人にし囲うつもりだ。彼女に俺の子を産んで貰い、そこで俺の本当の家族を作る。

 俺は卒業してからブラウニー侯爵家の領地を任されていた。次期宰相として父上の補佐に付くのは俺が婚姻してから。

 そんな時、父上から王宮に来るように言われ俺は父上の部屋へ向かった。そこには母上まで来ていて、俺達3人はそのまま国王陛下が待つ部屋へ向かった。

 部屋の中には国王陛下、王妃殿下、婚約者の父君の公爵、公爵夫人の王妹、そして婚約者が居た。


「お主、私の姪と婚姻するつもりがあるのか?」

「発言をお許し頂けますか?」

「許す」

「ありがとうございます。国王陛下。 勿論婚姻するつもりです」

「そうか。お主が次期宰相となり、私の息子の片腕になってくれると思っていた。だが、お主には他に心を寄せている者がおろう」

「はい?」

「正直に申せ。調べはついておる」

「はい。おります」

「その娘をどうするつもりなのだ?」

「いずれは囲うつもりです」

「愛人か?」

「はい」

「お主は私を騙す事も出来た。だが正直に話した。何故だ?」

「私も陛下の臣下。臣下たる者陛下に嘘を付くなど出来ません。それにいずれ父上の跡を継ぎ宰相と成るべく邁進しております。嘘を付く者を側に誰が置きましょう」

「その通りだ。だが婚約者ではない者へ現を抜かす者が信頼に値できるのか? お主は私の姪では不満か?」

「不満ですか…。不満とかではなく、私の心が折れたのです」

「やはりそうか。姪の事では他の者から色々聞いている。だが、私にとって可愛い姪なのだ。例え姪が悪くともな」

「はい。申し訳ありません」

「この婚約は白紙に戻そう。良いな」

「おじ様、お待ちになって」

「なんだ」

「白紙?わたくしは心を傷つけられましたのよ。白紙なんて甘いですわ。それに平民の女ですのよ。そんな家畜とお会いしてましたのよ。わたくし許せませんわ」

「それもお主が招いた結果だ」

「わたくしは何もしていませんわ。たかが貴族の癖にわたくしより家畜の女を相手にしてましたのよ」

「お主のその考え方だ」

「どうしてですの?わたくしは王族の血筋。わたくしは高貴な血筋ですのよ」

「お主は公爵令嬢だ。お主も貴族ではないか」

「ですが、だからと言ってわたくしと言う婚約者が居ながら他に心を寄せるなど。それも平民ですわよ。わたくしはこの男を許す事など出来ませんわ。それにその家畜と不貞をしていますのよ。汚らしい」

「うっ!」

「それも一度や二度ではありませんわ。もう一年以上も家畜相手に不貞をしてますのよ。わたくしもこんな汚らわしい男、嫌ですわ。もしこのまま婚姻したらわたくしまで穢れますわ。家畜を抱いた手でよくわたくしの側に寄れましたわね」

「うっ!」

「おじ様、家畜と不貞をしたこんな汚らわしい男を白紙ですか?」

「不貞を働いた事は罰だ。だが、お主のその考え方が招いた結果でもある。確かにお主の母は私の妹だ。だがもう貴族だ。王族ではない。血筋は王家の血を引いていてもだ。お主の貴族を見下す発言、平民を家畜と呼ぶその発言がいかに不況を買うか分かっておるのか」

「わたくしは本当の事を言ったまでですのよ。この男は貴族としても婚約者としてもしてはいけない事をしましたのよ。平民の女を家畜呼ばわりしたのもわたくしの婚約者を寝取ったからですわ」

「分かった。ではこの婚約は破棄にする。ブラウニー侯爵子息よ、不貞を働いたのはお主だ。良いな」

「はい」

「後は公爵家と侯爵家の話し合いだ。お互い成人した者同士だ。だが今回は両家で話し合え。良いな」

「はい。国王陛下」

「後、公爵、お主は娘の教育をし直せ。私からの命令だ。 不貞を働いた子息も悪いが、お主の娘の発言も至る所で耳にする。他の貴族からも反感が出ておるぞ」

「はい。国王陛下」

「妹よ。お主も一人娘とはいえ、甘やかし過ぎた。娘をもう一度教育し直せ。良いな」

「お兄様、娘は悪くありませんわ」

「婚約者を蔑ろにしていたのにか?」

「蔑ろにされたのはわたくしの娘ですわ」

「子息は婚約者としてきちんとしておった。お主の娘が文句ばかり言っておったのだろう」

「この娘は何も言ってませんわ」

「そうか?私が聞いた話では、一緒に出掛けてもつまらないと文句ばかり。お茶に誘えば待つのは嫌だ、他の者と一緒は嫌だと言い、ドレスや宝石を贈れば気にくわないと捨てる。違うか?」

「それは。ですが、娘の気に入る物を贈れば良いだけの事ですわ」

「そうか?子息は有名なデザイナーに頼んだり、流行りの物を贈っていたのではないのか?子息も婚約者を大事にしていたのだ。だがその度に文句を言われ捨てられたら誰でも心が折れよう」

「誰が言ってましたの?」

「お主の娘は外で大声でいつも言っておるぞ?知らぬのか? 私も一度夜会で聞いたぞ? 高貴の血の子なのに子息が贈ったドレスや宝石を身に付けたら身体が穢れるとな」

「それは不貞を知った後ですわ」

「嫌、聞いたのは学園に入学した直ぐの時だ。その時からその様に言われ続けておれば心も折れよう。不貞をしたのは許せんが、お主の娘だけが傷つけられたのではない。子息も傷ついたのだ。お主の娘が婚約者を思い言葉を掛けておれば子息とて心を他に寄せる事も不貞を働く事もなかったであろう」

「お兄様は姪が可愛くないのですか?」

「可愛いからこそ、次の婚約者とはこの様になって欲しくないのだ。もう一度教育し直せ。姪の考え方が変わらぬ以上、婚約など出来ん。誰も相手になりたがらないだろう。良いな」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】お世話になりました

こな
恋愛
わたしがいなくなっても、きっとあなたは気付きもしないでしょう。 ✴︎書き上げ済み。 お話が合わない場合は静かに閉じてください。

【完結保証】ご自慢の聖女がいるのだから、私は失礼しますわ

ネコ
恋愛
伯爵令嬢ユリアは、幼い頃から第二王子アレクサンドルの婚約者。だが、留学から戻ってきたアレクサンドルは「聖女が僕の真実の花嫁だ」と堂々宣言。周囲は“奇跡の力を持つ聖女”と王子の恋を応援し、ユリアを貶める噂まで広まった。婚約者の座を奪われるより先に、ユリアは自分から破棄を申し出る。「お好きにどうぞ。もう私には関係ありません」そう言った途端、王宮では聖女の力が何かとおかしな騒ぎを起こし始めるのだった。

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。 ※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31

婚約破棄は別にいいですけど、優秀な姉と無能な妹なんて噂、本気で信じてるんですか?

リオール
恋愛
侯爵家の執務を汗水流してこなしていた私──バルバラ。 だがある日突然、婚約者に婚約破棄を告げられ、父に次期当主は姉だと宣言され。出て行けと言われるのだった。 世間では姉が優秀、妹は駄目だと思われてるようですが、だから何? せいぜい束の間の贅沢を楽しめばいいです。 貴方達が遊んでる間に、私は──侯爵家、乗っ取らせていただきます! ===== いつもの勢いで書いた小説です。 前作とは逆に妹が主人公。優秀では無いけど努力する人。 妹、頑張ります! ※全41話完結。短編としておきながら読みの甘さが露呈…

私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました

新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。

あなたの姿をもう追う事はありません

彩華(あやはな)
恋愛
幼馴染で二つ年上のカイルと婚約していたわたしは、彼のために頑張っていた。 王立学園に先に入ってカイルは最初は手紙をくれていたのに、次第に少なくなっていった。二年になってからはまったくこなくなる。でも、信じていた。だから、わたしはわたしなりに頑張っていた。  なのに、彼は恋人を作っていた。わたしは婚約を解消したがらない悪役令嬢?どう言うこと?  わたしはカイルの姿を見て追っていく。  ずっと、ずっと・・・。  でも、もういいのかもしれない。

我慢するだけの日々はもう終わりにします

風見ゆうみ
恋愛
「レンウィル公爵も素敵だけれど、あなたの婚約者も素敵ね」伯爵の爵位を持つ父の後妻の連れ子であるロザンヌは、私、アリカ・ルージーの婚約者シーロンをうっとりとした目で見つめて言った――。 学園でのパーティーに出席した際、シーロンからパーティー会場の入口で「今日はロザンヌと出席するから、君は1人で中に入ってほしい」と言われた挙げ句、ロザンヌからは「あなたにはお似合いの相手を用意しておいた」と言われ、複数人の男子生徒にどこかへ連れ去られそうになってしまう。 そんな私を助けてくれたのは、ロザンヌが想いを寄せている相手、若き公爵ギルバート・レンウィルだった。 ※本編完結しましたが、番外編を更新中です。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※独特の世界観です。 ※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

愛せないですか。それなら別れましょう

黒木 楓
恋愛
「俺はお前を愛せないが、王妃にはしてやろう」  婚約者バラド王子の発言に、 侯爵令嬢フロンは唖然としてしまう。  バラド王子は、フロンよりも平民のラミカを愛している。  そしてフロンはこれから王妃となり、側妃となるラミカに従わなければならない。  王子の命令を聞き、フロンは我慢の限界がきた。 「愛せないですか。それなら別れましょう」  この時バラド王子は、ラミカの本性を知らなかった。

処理中です...