妹がいなくなった

２２

「お父様が壺や絵画を買うのもお母様や貴女がドレスや宝石を買うのも、自領が栄えてるって宣伝する為に別に間違ってないのよ。　貴族として認められたら確かに女性は宣伝の為にドレスを着飾って夜会に行くわ。その間男性は繋がりを求める為に交流する。今は当主を女性が継ぐ事も出来るから、当主になった女性は男性に混ざって交流するけどね。　自領を栄えさせる事も貴族の義務なの」

「うん」

「自領を栄えさせる為には取引する相手を見る目がないと駄目なの。騙される事もあるからよ？　それから先を見る目も必要なの。　他家と繋がるだけが自領を栄えさせる事ではないから。他家と繋がるのは一つの手段に過ぎないの。　自領を自分達でどれだけ栄えさせるかが大事なの。　侯爵家は小麦が主なのは知ってるわね？」

「うん」

「小麦だけでも今は充分に栄えてるけど、小麦だけって決めると小麦が駄目になったらそのまま皆んなで共倒れよ？　小麦以外にも栄えさせる物が必要になるの。　それが当たるか外れるかそれ等を見極める事も大事なの。常に情報を手に入れ、見極め、発展させる。当主になってからそれ等をしても遅いのよ？」

「うん」

「学園の時、周りの子達が投資や商売を始めてた子居なかった？　その殆どが当主になる子だと思うけど、学園の間にその目を鍛えるの。投資や商売をして上手くいけば良いけど失敗する事もあるわ。

この国の成人の年齢が他国より遅いのは、貴族の令息令嬢が学園の間に当主の監視下でその目を鍛えさせる為。　投資や商売なんて博打の様なものよ。　良い時もあれば悪い時もある。　それ等を当主の監視下で行い学ぶの。　成人してない子供がサイン出来ないのは勝手に投資や商売を出来なくさせる為なの。当主のサインがないとお金を動かせなくする為ね。　当主が家の中で一番偉いのもその為よ。当主の決定は家の決定だから。　例え端金でも当主のサインが無ければ勝手に買えないのは分かった？」

「分かったわ。でも私はこの前買えたわよ？」

「それは貴女が成人したからでしょ？学園を卒業した段階で成人として国へ報告されるわ。だからサインで買う事が出来たの。　成人する前は負債も当主の責任になる。　成人する前の子供は当主に護られる庇護下なの。だから博打も打てるのよ。　でも成人したら一個人。責任も己が払わないといけないの。それが代償ね」

「………………」

「良い？貴女が考え無しに起こした行動は、貴族としても成人した一個人としても軽率な行動をした。　その代償が平民になる事。　貴族籍から抜けたと言う事は侯爵家からも抜けたと言う事。貴女がこれから起こす行動に侯爵家は一切関係ないって事よ。　貴女は彼と共に歩く道を選んだ。　貴女に残された道は働いてお金を稼いで生活をする事。分かった？」

「お姉様、お願い。お金の援助だけして。お願いよ」

「貴女にお金の援助をして、その見返りは？」

「見返り？」

「私と貴女は姉妹だったけど、今は関係ない他人。貴女は他人にお金をタダで貸せる？」

「他人には貸せないわ。でも私達は他人じゃないわ」

「侯爵家から抹消されたって事は他人と同じよ？」

「他人って…。血の繋がった姉妹じゃないの」

「確かに血の繋がった姉妹よ。でもそれは侯爵家の令嬢で居たらの話よ。貴女が侯爵令嬢として他家へ婚姻して、婚姻先がお金を援助してと言われれば援助するわよ？　その家と繋がってる家と懇意に出来るって見返りがあるから。それに自領が栄えれば返金して貰えるでしょ？　でも平民の貴女にお金を援助して返せる予定は？　見返りは？　そんなの無いでしょ？」

「お姉様は冷たいわ！」

「冷たい、そうね。冷たいわ。当主は冷静に判断しないといけないの。　今迄もそうだけど、今も私には使用人と領民達と自領を護る義務があるもの。　貴女みたいに感情で物事を言っていたら、直ぐに潰されるか乗っ取られるわ」

「何で？私の何処かいけないのよ！」

「はぁぁ。そういう所なんだけど。　とりあえず貴女に伝える事は終わったわ。私はこれで失礼するわね」

「お姉様待って！私を捨てるの？」

「先に家族を捨てたのは貴女よ」

「そんな…………」


　後ろでサラが叫んでるのを無視して私はサラの家を出た。


「凄かったな～」

「ね？　あの子何しに学園に通ってたのかしら。私、途中から小さい子供相手に話してると思ったわ」

「確かにな。多分サラは理解してないと思うぞ」

「でしょうね。邸の警備よろしくね」

「そうだな」

「あ～、疲れた～」

「ご苦労様」