妹がいなくなった

１６

　ディーナを商会まで送り、私もドレスからワンピースに着替えて、デザイナーとお針子に指示をだし、ドレスに合わせたネックレスとイヤリングをギルに頼む様にお願いし、サラの彼への依頼の件もお願いし邸に戻って来た。

　邸に戻って来たら、ジムが慌てて迎えに出て来て、


「ジム、ただいま。どうしたの？慌てて」

「お嬢様お帰りなさいませ。それが…」


私はジムと一緒に執務室へ行った。


「それでどうしたの？」

「それが…旦那様からお手紙が届きまして…」

「見せて」


私はジムから手紙を受け取り、


「はぁぁ、あの人達は馬鹿なの？」


　手紙には、サラを探す途中で知り合った方と意気投合して暫く滞在すると書いてあった。


「今は何処の領地？」

「手紙の送り元から察するとヘイニー子爵の領地かと思います」

「ヘイニー子爵の領地ね。　意気投合したのってもしかしてヘイニー子爵じゃないわよね？」

「おそらくヘイニー子爵かと」

「はぁぁ」

「どうされますか？」

「ヘイニー子爵って違法賭博をしてるって噂の方よね？」

「はい。このままではお金は湯水の如く絞り取られます」

「そうね。お祖父様に直ぐに連絡して」


ジムがグレンに頼みお祖父様を直ぐに呼びに行った。

数時間後お祖父様が来て、


「グレンから話は聞いた。あの馬鹿共にこれ以上侯爵のお金を好きに使わせる事は出来ん。何とか陛下に謁見できる様に願い出て見るが」

「謁見してどうなさるのですか？」

「あの馬鹿の侯爵当主の権利を剥奪して貰い、エミリーを侯爵当主に願い出る。それが無理なら勘当してあ奴が侯爵のお金を使えなくさせるしかない」

「まだ違法賭博をしている訳ではありませんが」

「ヘイニー子爵と一緒にいるなら時間の問題だ。侯爵家が取潰しになる」

「それは困りますわ」

「ああ。ジムよ、急ぎ陛下へ謁見の申し出を出してくれ」

「はい。大旦那様」


　ジムがお祖父様がしたためた陛下への謁見の書類を持って王宮へ提出しに行った。


「暫く此方に滞在して王宮からの返事を待つ。グレン！おるか！」


グレンが執務室に入って来て、


「グレン、急ぎ儂の邸へ行き、謁見様の服と妻に事情を話し、暫く此方に滞在する旨を伝えて来て欲しい」

「承知しました」


グレンが慌てて邸を後にした。


「エミリー、すまぬな。エミリーには迷惑ばかり掛けて愚息の尻拭いばかりさせておる」

「お祖父様、私はこの侯爵家を護るだけですわ。領地も領民も護りたい、ただそれだけですわ」

「そうか。エミリーに継がせる事は正解だったな」

「お祖父様に相談がありましたの。領地からの手紙で隣国の公爵家が領地に視察に来たいと」

「で、どうした？」

「土壌を見る為にも此方から数人向かわせる事にしましたわ。此方の視察は３日だけ。まぁ後色々条件は付けましたが、あちらも条件は受け入れて頂けるそうです。今は返事待ちですが」

「エミリーの好きな様にやれば良い」

「はい。後、サラの事なのですが」

「どうした？」

「はい。知り合いの伝手を頼ったのですが、もしかしたら隣国へ行く事になるかもしれません」

「隣国か」

「はい。少し様子を見るようですが、隣国で修行させる可能性もあると返事がきましたの。どうされますか？」

「そうか。サラが付いていきたいと言うなら儂は何も言うつもりはない」

「そうですわね。ではその様に返事しますわ」

「ああ、すまないな」


　久しぶりにお祖父様と夕食を食べ、領地の話でお互いの意見を言い合い、とても有意義な時間を過ごす事が出来た。

　謁見を申し込みに行ったジムが、王宮で粘りに粘ったおかげで、一週間後にお目通り出来るとジムから報告されたのは、疲れた顔で帰って来た夜遅くだった。

　お祖父様はもう寝ていらしたので、明日報告する事にし、夜遅くまで王宮で頑張ってくれたジムに感謝した。