妹がいなくなった

アズやっこ

文字の大きさ
上 下
15 / 187

15

しおりを挟む
 サロンには王妃様とディーナと私と王妃様付きの侍女だけが残った。 王妃様が侍女にお茶の準備を頼み、


「わたくしがミリー商会を呼んだのに、陛下ったらご自分の話ばかり。ようやく、わたくしが二人を独占できるわ。エミリーちゃんとエディーちゃんで良いかしら?」

「「はい。王妃様」」


私とディーナは二人で返事をした。


「今回、ミリー商会を呼んだのはね、キティ、ブラウザー侯爵の奥方のキャンティス、分かるわよね?キティのドレスを見たからなの。わたくしとキティは学園からの友人でね、仲の良い友人数人と毎月わたくしのサロンでお茶をするのよ。その時に着てきたドレスがとても素敵でキティにミリー商会を教えて貰ったの」

「ブラウザー侯爵の奥様のキャンティス様は存じ上げておりますわ。確かドレスの裾の総刺繍の依頼を受けましたわ」

「仲の良い友人とはいえ、同じドレスを着るのは気が引けて手持ちのドレスを数枚仕立て直したって言ってたわ」

「私共、ミリー商会は元は仕立て直しの専門でしたの。私が商会、元は商店ですが、商店を始めたのも妹のドレスを仕立て直して着る為です」

「エミリーちゃんの家の事情はわたくしの耳にも入っていたわ」

「お恥ずかしい話ですが、私は両親から服を与えられませんでしたから。妹の着なくなったドレスを貰い、私とメイドで仕立て直して着ておりました。ですが、諸事情で仕立て直す事が出来なくなり、隣国で商店を立ち上げたのです。 隣国では商店を立ち上げるのは成人していれば平民でも簡単に立ち上げる事が出来ますし」

「そうね。隣国は立ち上げるのは簡単でも維持するのが難しいと聞くわ」

「はい。ですが、私の服を作るだけの為ですので売上とかは関係無かったのです。知人に隣国へ行って貰い、商店の立ち上げ、お針子さんを探して貰い、作って貰う。本来それだけで良かったのですが、雇ったお針子さんがとても腕の良い方で私の服を縫うだけでは勿体無いと思い、デザイナーを雇い、商店として仕立て直しの商売をしました。それからチャーリーを雇い経営をお願いしましたの。優秀なチャーリーが入り、手広く商売をした結果、ミリー商会と急成長しましたの」

「そうなのね」

「勿論、職人の腕は私が確認し納得した者だけですので、ミリー商会の信用の部分でも腕は確かですわ。それにキャンティス様のドレスの総刺繍をしたのはエディーナですわ」

「あの見事な刺繍を一人で?」

「はい、王妃様」

「エディーちゃん凄いわ」

「いえ、刺繍は幼い頃よりしていたから出来ただけですので…」

「エディーちゃんは元公爵令嬢だものね。それでも凄いわ」

「ありがとうございます」

「それでね、エミリーちゃん、わたくしもミリー商会に依頼をしたいの。良いかしら」

「はい。喜んでお受けしますわ」

「良かった。ドレスを数点持って帰って貰って刺繍をして欲しいの。後、仕立て直しして新たなドレスを作って欲しいのよ」

「分かりました。後でドレスを見せて頂けますか?出来れば着れなくなった物や着ない物を仕立て直したいと思います。数点預かりデザイナーと相談してからになりますが、私共にお任せ頂ければと思います」

「全てお任せするわ」

「ありがとうございます」

「それでね、ミリー商会って新しいドレスも作ってるわよね?」

「はい。元は仕立て直しでしたが、デザイナーもお針子も優秀な方々ですので、今はご要望に合ったドレスを一から手掛けておりますわ」

「良かった。王太子妃にわたくしからドレスを贈りたいの。お願い出来るかしら」

「はい。王太子妃殿下のサイズも分かりますし大丈夫ですわ。ご要望などありますか?」

「そうね、あえて言うなら、王太子妃に似合うドレスかしら。あの子いつも王太子の瞳の色のドレスしか着なくて、若いのに暗い色ばかりなの」

「そうですね。陛下もですが、王太子殿下も瞳の色は深い青色ですものね」

「わたくしは若い頃なら明るい青色も着ていたわ。深い青色でも外だと明るくなるのよ。でもあの子はいつも深い青色ばかり。だからねわたくしが贈ったら着てくれるでしょ?」

「分かりました。デザイナーに要望を伝え早速取り掛かりますわ」

「お願いね」

「はい。ではドレスを拝見させて頂いてもよろしいですか?」

「ええ」


 私とディーナは王妃様の着なくなったドレスを見て意見を言いながら数枚手に取り、馬車で商会まで帰った。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】お世話になりました

こな
恋愛
わたしがいなくなっても、きっとあなたは気付きもしないでしょう。 ✴︎書き上げ済み。 お話が合わない場合は静かに閉じてください。

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】 私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。 もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。 ※マークは残酷シーン有り ※(他サイトでも投稿中)

あなたに未練などありません

風見ゆうみ
恋愛
「本当は前から知っていたんだ。君がキャロをいじめていた事」 初恋であり、ずっと思いを寄せていた婚約者からありえない事を言われ、侯爵令嬢であるわたし、アニエス・ロロアルの頭の中は真っ白になった。 わたしの婚約者はクォント国の第2王子ヘイスト殿下、幼馴染で親友のキャロラインは他の友人達と結託して嘘をつき、私から婚約者を奪おうと考えたようだった。 数日後の王家主催のパーティーでヘイスト殿下に婚約破棄されると知った父は激怒し、元々、わたしを憎んでいた事もあり、婚約破棄後はわたしとの縁を切り、わたしを家から追い出すと告げ、それを承認する書面にサインまでさせられてしまう。 そして、予告通り出席したパーティーで婚約破棄を告げられ絶望していたわたしに、その場で求婚してきたのは、ヘイスト殿下の兄であり病弱だという事で有名なジェレミー王太子殿下だった…。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

私は家のことにはもう関わりませんから、どうか可愛い妹の面倒を見てあげてください。

木山楽斗
恋愛
侯爵家の令嬢であるアルティアは、家で冷遇されていた。 彼女の父親は、妾とその娘である妹に熱を上げており、アルティアのことは邪魔とさえ思っていたのである。 しかし妾の子である意網を婿に迎える立場にすることは、父親も躊躇っていた。周囲からの体裁を気にした結果、アルティアがその立場となったのだ。 だが、彼女は婚約者から拒絶されることになった。彼曰くアルティアは面白味がなく、多少わがままな妹の方が可愛げがあるそうなのだ。 父親もその判断を支持したことによって、アルティアは家に居場所がないことを悟った。 そこで彼女は、母親が懇意にしている伯爵家を頼り、新たな生活をすることを選んだ。それはアルティアにとって、悪いことという訳ではなかった。家の呪縛から解放された彼女は、伸び伸びと暮らすことにするのだった。 程なくして彼女の元に、婚約者が訪ねて来た。 彼はアルティアの妹のわがままさに辟易としており、さらには社交界において侯爵家が厳しい立場となったことを伝えてきた。妾の子であるということを差し引いても、甘やかされて育ってきた妹の評価というものは、高いものではなかったのだ。 戻って来て欲しいと懇願する婚約者だったが、アルティアはそれを拒絶する。 彼女にとって、婚約者も侯爵家も既に助ける義理はないものだったのだ。

処理中です...