妹がいなくなった

アズやっこ

文字の大きさ
上 下
12 / 187

12

しおりを挟む
数日後、領地に送った手紙の返事が返ってきて、


「厄介ね」

「どうされますか?」

「此方の条件は受け入れて貰えるけど、やっぱり此方の視察もしたいみたいね」

「あちらの国は不作が三年続いていますからね」

「天候だけではないって事?」

「勿論天候もあるでしょう。ですが不作続きだと天候以外もと考えているのでしょう」

「だと土壌の確認が必要ね。此方から出向きましょう。土壌の調査数人と指導を数人、人選はダンに任せるわ。期間が長期になる事も想定して、此方が手薄になる事がないようにお願いしましょう。後、護衛はあちらの公爵家に頼みましょう」

「承知しました。視察はどうされますか?」

「そうね。護衛を頼む以上、視察も致し方ないわ。但し視察は3日。早く土壌を調べて改善しないと来年度の種蒔きに間に合わないもの。あちらだって来年度まで不作だと困るでしょう?」

「ではそのように付け加えて公爵家に手紙を出す様手配します」

「お願いね。後、視察に来る予定の人数は把握したいわ。護衛の分も含めてね。その事もお願いね。迎える以上、準備があるもの」

「承知しました。後、此方も先程届きました」


一枚の手紙を受け取る。印を見て、


「国王陛下から?」

「その様です」

「ミリー商会宛ね」


私は封を開け手紙を読んだ。


「ディーナが私に送る訳だわ」

「手紙には何と」

「王妃様がミリー商会に依頼したいと。初めて依頼する為、陛下も同席して代表者と顔合わせをしたいと。ただ、私的な事の為、王妃様のサロンでの顔合わせになるみたいだわ」

「どうなさいますか?」

「行くしかないわね。サロンでもやっぱりドレス?」

「左様です」

「そう。仕方ないわね」


 私は返信の手紙と、商会にドレス2着用意する旨の手紙を書いた。


「ジム、これ急ぎでお願い」

「承知しました」

「明後日王宮に行くから、その間、此方は任せたわ。急ぎの書類はジムに任せるから」

「承知しました」

「後、当日グレンは私とディーナの護衛をして貰うからそのつもりでお願いするわ」

「承知しました」


私は目の前にある書類を片付けた。


王宮へ行く当日。
 
 私とグレンは商会へ行き、頼んであったドレスに着替えて、商会の所有する馬車にディーナと乗った。


「あの、エミリー様、私まで一緒に行かなくても良いのではないでしょうか」

「ディーナが代表なのよ?私はただの経営者。あちらは代表者をご指名なの。私は付き添い」

「ですが、経営者と言われますが、それって代表と言う事ですよね?」

「まぁそうなんだけど、私はいつも商会に居ないし、連絡取る為に侯爵家に連絡が来るのも困るもの」

「エミリー様の事情も充分存じておりますが…」

「ディーナ、貴女は商会の代表なの。堂々としてれば良いわ」

「それが出来たら良いのですが」

「それより材料は揃ったかしら」

「はい。ギル様の事、申し訳ありません」

「それは仕方ないわ」

「もし商会の職人にするのであれば手配しますが」

「ねぇ、ディーナ、正直に言って良い?」

「はい」

「正直、私は商会の職人にしたくないの。細々生活出来るだけの稼ぎがあれば良いと思っているのよ。その為に環境は整えるつもりだけど、その後は彼の頑張り次第だわ。 私が隣国でミリー商会を立ち上げたのも、自分の服を仕立て直す為だしね。 運良く腕の良いお針子さんやデザイナーを雇えた事はミリー商会が急成長出来た一因だわ」

「はい」

「だけどね、ミリー商会はあくまで私個人の商会なの。自分の為に立ち上げたね。 そこに侯爵家は関係ないの。 妹に対して家族の情もないしね。妹の為私が協力出来るのは細々生活できるだけの稼ぎを得る為の環境まで。その後にまで手を貸すつもりはないの。薄情な姉だけど」

「いえ。私や父に取ってエミリー様は薄情な方ではありません。温情のあるお方です」

「だけど商会の皆がお抱え職人にしたいと思ったら私は皆の意見に従うわ。あくまで個人的な意見なだけだから」

「はい。先ずは商品がどの様な出来か見てみませんと」

「そうね。商会からの依頼で相場の賃金の支払いもお願いね」

「承知しました。帰ったら直ぐに手配します」

「お願いね」


 私とディーナはその後も商会への依頼の話や、新商品の話を続けた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹に婚約者を奪われたけど、婚約者の兄に拾われて幸せになる

ワールド
恋愛
妹のリリアナは私より可愛い。それに才色兼備で姉である私は公爵家の中で落ちこぼれだった。 でも、愛する婚約者マルナールがいるからリリアナや家族からの視線に耐えられた。 しかし、ある日リリアナに婚約者を奪われてしまう。 「すまん、別れてくれ」 「私の方が好きなんですって? お姉さま」 「お前はもういらない」 様々な人からの裏切りと告白で私は公爵家を追放された。 それは終わりであり始まりだった。 路頭に迷っていると、とても爽やかな顔立ちをした公爵に。 「なんだ? この可愛い……女性は?」 私は拾われた。そして、ここから逆襲が始まった。

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました

ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。 このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。 そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。 ーーーー 若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。 作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。 完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。 第一章 無計画な婚約破棄 第二章 無計画な白い結婚 第三章 無計画な告白 第四章 無計画なプロポーズ 第五章 無計画な真実の愛 エピローグ

恋した殿下、あなたに捨てられることにします〜魔力を失ったのに、なかなか婚約解消にいきません〜

百門一新
恋愛
魔力量、国内第二位で王子様の婚約者になった私。けれど、恋をしたその人は、魔法を使う才能もなく幼い頃に大怪我をした私を認めておらず、――そして結婚できる年齢になった私を、運命はあざ笑うかのように、彼に相応しい可愛い伯爵令嬢を寄こした。想うことにも疲れ果てた私は、彼への想いを捨て、彼のいない国に嫁ぐべく。だから、この魔力を捨てます――。 ※「小説家になろう」、「カクヨム」でも掲載

【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。

曽根原ツタ
恋愛
 ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。  ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。  その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。  ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?  

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

処理中です...