妹がいなくなった

アズやっこ

文字の大きさ
上 下
11 / 187

11

しおりを挟む
グレンが帰って来たので報告を聞きます。


「サラの見張りは頼んで来た」

「ありがとう。ディーナはどうだった?」

「そっちな。そっちは良い報告と悪い報告とあるけど、どっちから聞く?」

「良い報告からお願い」

「分かった。アクセサリーを見たエディーナ嬢もエミーと大体同じ意見だった。センスは良いって」

「そう。なら悪い報告は何?」

「センスは良いけど、貴族には売れないと」

「確かに、平民には好まれるけど貴族にはもっと繊細に作らないと無理ね」

「それで良くギルに預けるって言ったな」

「ギルは貴族相手の商品しか作らないし、貴族もギルが作った商品を買いたがるものね。 ギルの腕は一流よ。だけど平民の作った物を買いたがる貴族はいないわ。お抱え宝石商で購入するもの。 ギル自ら宝石商に売り込みしても断られるわ。宝石商もお抱えの職人がいるもの。 だから私が雇えたのよ。ギルが失敗作を露店で売ってたのを見て即契約したわ」

「そうだったな」

「それからギルが作ったアクセサリーを見せて貰って、商会の宝石商に渡したら直ぐに全部売れたわ。ギルは元々手先が器用だし、発想力もあるもの」

「エディーナ嬢はギルを説得するには自分では無理だってさ」

「そう。私は平民に売れるアクセサリーが作れれば良いのだけど。ギルの技術を真似て欲しいわけではなく基礎だけ真似て欲しいのよね」

「ギルは自分にも厳しいけど他人にも厳しいぞ?基礎だけ教えるっていったって、ギルだって誰かに基礎を教えて貰った訳じゃないしな」

「そうね。ギルの場合は持って産まれた才能ね」

「だな」

「ディーナが無理なら無理ね」

「エミーが説得すれば良いじゃん」

「ディーナはギルの性格も分かった上で無理って言ってるのよ。私だってギルの性格は分かってるわ。ギルは他人を自分の空間に入れたくないでしょ? それにセンスはあってもギルを説得する程じゃないって言ってるのよ。ディーナも認めたなら何が何でもギルを説得するわ」

「じゃあどうすんの?」

「そうね。元々平民が使うアクセサリーを作って貰う予定だし、平民には好まれるデザインを作るもの。見様見真似で作ってるから作りが粗いだけで、基礎が身につけば粗さも取れるわ。それでも数をこなせば段々と粗さは取れるものよ。 そうね、同じ物を多く作らせて慣れる事ね。 グレン、これからまた商会に行ってくれる?」

「また!?」

「またよ。多少、質が落ちても良いから、材料とガラス玉の色違いを、そうね、50個分用意して欲しいの。ガラス玉は出来るだけ色々な色が欲しいわ。用意の手配を頼んで来て欲しいの」

「50個作らせてどうするつもり?」

「孤児院と教会に寄付するわ」

「あ~そっちね」

「売り物にはならないもの。それから材料が届いたら直ぐに知らせてって伝えて」

「分かった。じゃあ行ってくるよ」

「ごめんなさい。お願いするわね」

「はいはい」


グレンが出て行きました。


「お嬢様、どうするおつもりで?」

「隣国のアクセサリー職人に預けるにしても3ヶ月は無理だわ。ならその3ヶ月の間で試せそうな事をするしかないと思うの。材料支給なら誰だって飛びつくでしょ?それに賃金も出すもの」

「賃金もお出しするのですか?材料費だけでなく?」

「勿論。寄付するとはいえ商会から依頼するのだもの、賃金は出すわ。商会の信用にもかかわるもの」

「そうですね」

「50個作っても上達しないなら、その時は弟子入りして学んで貰うわ」

「商会で雇うつもりですか?」

「それは迷い中よ。一応私が商会を経営してる事は侯爵家の中でジムとメイとグレンしか知らないし、これからも言うつもりはないの。もし雇うとなるとサラから漏れる可能性もあるしね。 それに、お抱え職人は勿論いるけど、それでも職人も選んで良いと思うの。 商会で雇うと商会以外では仕事は出来ないわ。うちの職人は皆それでもうちに残ってくれてるわ。 ただ、サラの彼は雇わず仕事だけ依頼する形にしたいとは個人的には思うけどね。 それでも雇う雇わないは商会が決める事だから」

「ですが、代表はお嬢様ですよ」

「私は代表に過ぎないわ。経営はしてるけど、決定権は従業員全員にあるわ。私が雇うつもりがなくても、商会として雇った方が良いと言われたら雇うわ。でもそれも品を見て見ないと。それからよ」

「そうですね」


 サラの彼を雇いたいかと言われれば雇いたいとは思わない。家族、姉妹を出されても嫌だから。売上がなければ賃金は支払えないし、経営者と職人、そこに一線がある。 家族として一線を越えてこられても困る。あくまで立場は経営者と職人。だからこそ身内は余り商会の中に入れたくないのよね。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました

ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。 このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。 そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。 ーーーー 若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。 作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。 完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。 第一章 無計画な婚約破棄 第二章 無計画な白い結婚 第三章 無計画な告白 第四章 無計画なプロポーズ 第五章 無計画な真実の愛 エピローグ

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った

Mimi
恋愛
 声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。  わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。    今日まで身近だったふたりは。  今日から一番遠いふたりになった。    *****  伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。  徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。  シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。  お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……  * 無自覚の上から目線  * 幼馴染みという特別感  * 失くしてからの後悔   幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。 中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。 本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。 ご了承下さいませ。 他サイトにも公開中です

愛のない貴方からの婚約破棄は受け入れますが、その不貞の代償は大きいですよ?

日々埋没。
恋愛
 公爵令嬢アズールサは隣国の男爵令嬢による嘘のイジメ被害告発のせいで、婚約者の王太子から婚約破棄を告げられる。 「どうぞご自由に。私なら傲慢な殿下にも王太子妃の地位にも未練はございませんので」  しかし愛のない政略結婚でこれまで冷遇されてきたアズールサは二つ返事で了承し、晴れて邪魔な婚約者を男爵令嬢に押し付けることに成功する。 「――ああそうそう、殿下が入れ込んでいるそちらの彼女って実は〇〇ですよ? まあ独り言ですが」  嘘つき男爵令嬢に騙された王太子は取り返しのつかない最期を迎えることになり……。    ※この作品は過去に公開したことのある作品に修正を加えたものです。  またこの作品とは別に、他サイトでも本作を元にしたリメイク作を別のペンネー厶で公開していますがそのことをあらかじめご了承ください。

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます

結城芙由奈 
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】 私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。 もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。 ※マークは残酷シーン有り ※(他サイトでも投稿中)

【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?

仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。 そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。 「出来の悪い妹で恥ずかしい」 「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」 そう言ってましたよね? ある日、聖王国に神のお告げがあった。 この世界のどこかに聖女が誕生していたと。 「うちの娘のどちらかに違いない」 喜ぶ両親と姉妹。 しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。 因果応報なお話(笑) 今回は、一人称です。

田舎者とバカにされたけど、都会に染まった婚約者様は破滅しました

さこの
恋愛
田舎の子爵家の令嬢セイラと男爵家のレオは幼馴染。両家とも仲が良く、領地が隣り合わせで小さい頃から結婚の約束をしていた。 時が経ちセイラより一つ上のレオが王立学園に入学することになった。 手紙のやり取りが少なくなってきて不安になるセイラ。 ようやく学園に入学することになるのだが、そこには変わり果てたレオの姿が…… 「田舎の色気のない女より、都会の洗練された女はいい」と友人に吹聴していた ホットランキング入りありがとうございます 2021/06/17

処理中です...