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次の日グレンを執務室に呼んだ。
「グレン、悪いけど私の御使い頼まれてくれないかしら」
「御使い?」
私は一枚の手紙をグレンに渡した。
「これを届ければ良いんだな?」
「届けてディーナに伝言も。それからサラの監視を引き続きお願い出来るか聞いてきて欲しいわ」
「エディーナ嬢にも伝言ね。監視の件も分かった。で、伝言って何?」
「ギルの所にはディーナが行って欲しいと」
「あのギルに預けるのか?」
「気難しい人だけど腕は確かだわ」
「確かに腕は良いけどな」
「ギルを納得させるにはディーナの話術が一番だわ。でも先にアクセサリーをディーナに見せて、ディーナの意見が私と同じが条件だわ」
「エミーとエディーナ嬢の意見が違ったら?」
「その時はこの話は無しになるわね」
「サラの旦那はどうするつもりだ?」
「サラと二人で隣国に行くつもりがあるならチャーリーに任せるつもりだわ。あちらにもギル程では無いにしろ優秀なアクセサリー職人はいるもの」
「この際二人を隣国に送ったらどうだ?」
「それも考えたわ。あの人達から完全に離すには隣国へ行かせるのも手だもの。でも、今迄サラの持ってる物に目にも入らなかったのに、あの髪飾りだけは目に入ったの。 私の直感を信じたいだけよ」
「そっか。まぁエディーナ嬢の意見次第だな」
「そうね。もしディーナと意見が違ったら、チャーリーに手配をして欲しいと伝えて貰えるかしら。その時は私がサラとサラの彼を説得するわ」
グレンは手紙を持って執務室を出て行った。
私は領地からの報告書を読んでいます。
「お嬢様、差し出がましいのですが」
「何?」
「そこまでサラフィスお嬢様にお手を掛けなくてもよろしいのでは?」
「ねぇジム、確かにあの人達を両親なんて思ってないわ。物心ついた時からサラしか目に入って無かった人達だもの。この先どうなろうと手を貸すつもりは無いの。ジェフ様の言う通り私は薄情なのよ。
サラの事を、あの人達の愛情を独り占めして憎んだ事もあるわ。羨ましいとも思ったわ。 でもね、例え着ないドレスだったとしても嫌な顔せず私にくれたわ。 それまで私はメイの妹さんの着古したお下がりを貰って着てたわ。それでも勿論充分だったけど、サラから貰ったドレスをメイと一緒に仕立て直してワンピースにした事で外出する事も出来る様になったし、商会もそのおかげで急成長したわ。 情とかはないけど感謝はしてるわ」
「ですが…」
「私は感謝した分を返すだけよ。 働く場所を提供するだけ。その後の事には一切手を貸すつもりはないわ。 後はあの子達の頑張り次第だわ。 職人として花開くか、それとも落ちぶれるか、そこまでの責任は取れないわ」
「それがよろしいです」
「それより、この報告書見た?」
「はい。どうなさいますか?」
「どうしようかしら」
領地経営の殆どが小麦畑で、収穫し、粉にして流通している。パンが主食の我が国で小麦粉は欠かせないし、ケーキ等のデザートにも使用する為、経営難になる事はない。 天候によって出来不出来はあっても、備蓄している分もある為、納品先に迷惑をかける事はない。 お祖父様が基礎の地盤を作ってくれた為、信用もあり、私はそれ等を受け継いでいるだけ。ただ、細かい計算や書類にした際、膨大な量になるだけの事。
今回、領地からの報告書で、隣国から小麦の栽培を学ばせる為、数人預かって欲しいとの事。
「預かるのは良いのだけど、技術を盗まれるのは困るわ。指導というか助言はするけど」
「面倒事が増えますしね」
「そうなのよ。安い価格で此方に流通されても困るわ」
「ですが土壌が違う以上、質も変わりますよ」
「確かにそうだけど、安い小麦粉が手に入るならそっちを取るでしょ?」
「職人として誇りを持っている方なら質を選びます。質が落ちれば客が離れます。案に安いからだけで簡単に変えませんよ。 一流の職人ならば己の舌の納得する物しか使いません。 我が侯爵家の小麦粉をお渡ししているのも一流の職人が殆どです」
「そうだけど…」
「ですが、技術を盗まれるのはやはり困りますね」
「そうよね。うん。なら、此方から隣国へ指導に行きましょう。土壌を見ないと駄目な所も分からないものね。後、条件を付けるわ」
「条件、ですか?」
「そう。此方の国へ流通せず、国内だけの流通にする事。その条件で良ければ指導に行くと返事を書きましょう。ところで、この印は何処の貴族かしら?」
「この印は確かスティール公爵家の印かと。ですが、手紙自体は領主代行からですので、公爵家の指示か領主代行自身の判断かは分かりかねますが」
「先ずはそこを聞いてからにしましょう。スティール公爵家と言えば王族との繋がりも強いと聞くもの。慎重にいきましよう」
「それがよろしいですね」
私はジムの弟、領地の執事で領主代行として働いてくれてるダンに手紙を書いた。
「グレン、悪いけど私の御使い頼まれてくれないかしら」
「御使い?」
私は一枚の手紙をグレンに渡した。
「これを届ければ良いんだな?」
「届けてディーナに伝言も。それからサラの監視を引き続きお願い出来るか聞いてきて欲しいわ」
「エディーナ嬢にも伝言ね。監視の件も分かった。で、伝言って何?」
「ギルの所にはディーナが行って欲しいと」
「あのギルに預けるのか?」
「気難しい人だけど腕は確かだわ」
「確かに腕は良いけどな」
「ギルを納得させるにはディーナの話術が一番だわ。でも先にアクセサリーをディーナに見せて、ディーナの意見が私と同じが条件だわ」
「エミーとエディーナ嬢の意見が違ったら?」
「その時はこの話は無しになるわね」
「サラの旦那はどうするつもりだ?」
「サラと二人で隣国に行くつもりがあるならチャーリーに任せるつもりだわ。あちらにもギル程では無いにしろ優秀なアクセサリー職人はいるもの」
「この際二人を隣国に送ったらどうだ?」
「それも考えたわ。あの人達から完全に離すには隣国へ行かせるのも手だもの。でも、今迄サラの持ってる物に目にも入らなかったのに、あの髪飾りだけは目に入ったの。 私の直感を信じたいだけよ」
「そっか。まぁエディーナ嬢の意見次第だな」
「そうね。もしディーナと意見が違ったら、チャーリーに手配をして欲しいと伝えて貰えるかしら。その時は私がサラとサラの彼を説得するわ」
グレンは手紙を持って執務室を出て行った。
私は領地からの報告書を読んでいます。
「お嬢様、差し出がましいのですが」
「何?」
「そこまでサラフィスお嬢様にお手を掛けなくてもよろしいのでは?」
「ねぇジム、確かにあの人達を両親なんて思ってないわ。物心ついた時からサラしか目に入って無かった人達だもの。この先どうなろうと手を貸すつもりは無いの。ジェフ様の言う通り私は薄情なのよ。
サラの事を、あの人達の愛情を独り占めして憎んだ事もあるわ。羨ましいとも思ったわ。 でもね、例え着ないドレスだったとしても嫌な顔せず私にくれたわ。 それまで私はメイの妹さんの着古したお下がりを貰って着てたわ。それでも勿論充分だったけど、サラから貰ったドレスをメイと一緒に仕立て直してワンピースにした事で外出する事も出来る様になったし、商会もそのおかげで急成長したわ。 情とかはないけど感謝はしてるわ」
「ですが…」
「私は感謝した分を返すだけよ。 働く場所を提供するだけ。その後の事には一切手を貸すつもりはないわ。 後はあの子達の頑張り次第だわ。 職人として花開くか、それとも落ちぶれるか、そこまでの責任は取れないわ」
「それがよろしいです」
「それより、この報告書見た?」
「はい。どうなさいますか?」
「どうしようかしら」
領地経営の殆どが小麦畑で、収穫し、粉にして流通している。パンが主食の我が国で小麦粉は欠かせないし、ケーキ等のデザートにも使用する為、経営難になる事はない。 天候によって出来不出来はあっても、備蓄している分もある為、納品先に迷惑をかける事はない。 お祖父様が基礎の地盤を作ってくれた為、信用もあり、私はそれ等を受け継いでいるだけ。ただ、細かい計算や書類にした際、膨大な量になるだけの事。
今回、領地からの報告書で、隣国から小麦の栽培を学ばせる為、数人預かって欲しいとの事。
「預かるのは良いのだけど、技術を盗まれるのは困るわ。指導というか助言はするけど」
「面倒事が増えますしね」
「そうなのよ。安い価格で此方に流通されても困るわ」
「ですが土壌が違う以上、質も変わりますよ」
「確かにそうだけど、安い小麦粉が手に入るならそっちを取るでしょ?」
「職人として誇りを持っている方なら質を選びます。質が落ちれば客が離れます。案に安いからだけで簡単に変えませんよ。 一流の職人ならば己の舌の納得する物しか使いません。 我が侯爵家の小麦粉をお渡ししているのも一流の職人が殆どです」
「そうだけど…」
「ですが、技術を盗まれるのはやはり困りますね」
「そうよね。うん。なら、此方から隣国へ指導に行きましょう。土壌を見ないと駄目な所も分からないものね。後、条件を付けるわ」
「条件、ですか?」
「そう。此方の国へ流通せず、国内だけの流通にする事。その条件で良ければ指導に行くと返事を書きましょう。ところで、この印は何処の貴族かしら?」
「この印は確かスティール公爵家の印かと。ですが、手紙自体は領主代行からですので、公爵家の指示か領主代行自身の判断かは分かりかねますが」
「先ずはそこを聞いてからにしましょう。スティール公爵家と言えば王族との繋がりも強いと聞くもの。慎重にいきましよう」
「それがよろしいですね」
私はジムの弟、領地の執事で領主代行として働いてくれてるダンに手紙を書いた。
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