妹がいなくなった

アズやっこ

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後日、グレンがアクセサリーを購入してきた。


「どう?」

「そうね。まだ作りが粗いけど、センスは良いと思うわ」

「俺には分からんけどな」

「アクセサリー職人に弟子入りさせて基礎を学べば売れる様になると思う」

「エミーには伝手もあるしな」

「まぁ伝手はあるけど」

「で、どうすんの?」

「そうね…。お祖父様に相談ね。グレン、お祖父様呼んで来て」

「ほいほい」


 グレンがお祖父様を呼びに行った間に仕事を終わらせ、お祖父様とグレンが帰って来たので、


「お祖父様、サラの事なんですが」

「居場所が分かったのか?」

「まぁ」

「そうか。で、何処にいた」

「街の奥の長屋で生活してます」

「長屋だと。一人でか?」

「いえ。学園時代からお付き合いしてた恋人とですわ」

「恋人がいたのか」

「そうみたいです。私も知りませんでしたが」

「なら家出よりは駆け落ちか」

「そうです」

「相手は平民か?」

「今は勘当されて平民です。元は男爵令息ですが」

「そうか。エミリーはどうするつもりだ?」

「当主ではない以上、今の所は様子見するしかありません」

「それしかないな」

「はい。長屋の周りの奥様方と上手くいってるみたいなので、危険がない以上は手を出すつもりはありません。ですが、早く平民にした方が良いとは思いますが」

「そうだな。サラは楽しく暮らせてるのだな」

「はい。幸せに暮らしているそうです」

「そうか」

「はい。だからこそ早く貴族籍から抜かないと、とは思いますが」

「そうだな」

「今の所は見張らせておりますが」

「そうか。男の方はどんな奴だ」

「アクセサリー職人を夢見て、作ったアクセサリーを露天商に売って、夜は酒場で働いているそうです」

「職人か」

「ご覧になります?」

「買ったのか?」

「一応」

「見せてみろ」

「これですわ」


髪飾りとイヤリングとネックレスを見せた。


「儂にはさっぱり分からんが」

「そうですわね。作りは粗いですわ。ですがセンスは良いかと」

「売れそうなのか?」

「露天商には似通った物が多く並べられますから、目に止まれば売れますわね」

「そうか。エミリーはどうするつもりだ?」

「その相談で今日はお呼びしましたのよ」

「そうなのか?」

「はい。厳しい様ですがこのままでは売れませんわ。但し基礎を学べば売れるかと」

「で、基礎を学ばせるのか?」

「そのつもりです」

「伝手は?」

「伝手はあります」

「そうか。なら学ばせろ」

「よろしいのですか?」

「どうしてだ?」

「サラを平民にしますのよ」

「サラがその男と幸せなら問題はなかろう」

「ですがお父様とお母様が何と言うか」

「あ奴等の事は儂に任せろ」

「それなら手配しますわ」

「それよりあ奴等は?」

「楽しく旅行を楽しんでおいでですわよ」

「旅行だと!サラを探しに行ったのだろ?」

「探してはいると思いますわよ。見当違いな所を探してるだけで」

「報告が来たのか?」

「あの二人が報告なんてすると思います?」

「思わんな」

「これですわ」


お祖父様にも請求書を見せ、


「何だこれは!」

「請求書ですわね」

「この額は何だ!毎日観光地の高級ホテルに泊まりよって!」

「ですから旅行だと申したではありませんか」

「あの馬鹿ども達が!」

「家出した子が観光地にいる訳ありませんのに。ご丁寧にお土産まで購入して」

「頭が痛くなる」

「あら、お祖父様、私もですわ。これが後何ヶ月続くかと思ったら頭痛の種ですわ」

「3ヶ月は他っておけ」

「そのつもりですわ。今帰って来られても困りますもの。サラを平民にしてから呼び戻しますわ」

「それが良い。エミリーには苦労かける」

「仕方ありませんわ」

「すまぬな」

「帰って来たらショックを受けますもの。大事に大事に育てた可愛い娘が男と駆け落ちして平民になったなんて知ったら。あの二人に取って大事な娘が自分達を捨てたなんて信じたくないでしょうしね」

「エミリー…」

「お祖父様、私には両親はおりませんわ」

「エミリー、儂はお前にも幸せになって欲しいと思っとる」

「分かってますわ。あんな両親よりジムやメイ、グレンが私にはおりますもの。それにお祖父様もお祖母様も私を大事にして下さいますわ」


お祖父様は私を抱き寄せ、


「エミリー、儂の大事な可愛い孫娘」


そう言って、額に口付けをしてくれました。


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