妹がいなくなった

アズやっこ

文字の大きさ
上 下
4 / 187

しおりを挟む
 ジムと書類を片付けていると、突然大きな音を立てて扉が開いた。


バタン!


「おい!エミリーヌ!お前は何をしているんだ!」

「見て分かりませんか?それよりも突然部屋に入るのはやめて下さいませ」

「おまっ!お前は!なんて奴だ!」

「ジェフ様こそ連絡も無しに急に来られてどうされたのですか?」

「なっ!お前は妹が居なくなって心配ではないのか!」

「心配してるから騎士隊に捜索をさせていますわ。今は連絡待ちですわ」

「お前は自分で探し回る事もしないのか!」

「では、私が数人の護衛を付けながら探し回れと?」

「妹が心配ならそうするべきだ!」

「私が数人護衛を使うより、護衛が探し回った方が早く見つかると思いますが」

「ならお前は護衛無しで探せば良いだけの話だろ!」

「サラが家出か誘拐か分からないこの状況で、侯爵家の娘である私が一人で街まで探しに行けと仰るのですね?」

「お前など誰が誘拐なんかするか!笑わせるな!」

「あら?私は次期侯爵家当主ですわよ?もし誘拐ならサラを人質に取るか、私を人質に取るか、どちらが人質になると思いますの?」

「ハッ、サラに決まってるだろ!あんなに可愛いいんだからな」

「可愛いだけでお金が出せますか?」

「出せる!それに父君も出すだろう」

「まぁお父様なら出しますわね。ですがお祖父様が許さない限りお父様ではお金の用意は出来ませんわよ?」

「は?何を言ってる!父君は侯爵当主だぞ!」

「では、貴方は毎回私を訪ねにこの執務室に来てますけど、この執務室は当主が当主の仕事をする部屋と言う事はご存知ですわよね?」

「あっ!そ、そうだな…」

「では、お父様とこの部屋で会った事はございます?」

「無い、が…」

「では、貴方がいつもこの部屋に来る時、私は何をしてる時です?」

「それは…」

「当主の仕事をしてます。そして今もですわ。サラが心配だけなら帰って下さいまし」

「こんな時に仕事か!」

「はぁぁ。では、貴方のお兄様は現伯爵当主ですわよね?お兄様はどんな事があろうと当主の仕事をなさってませんの?」

「兄上は兄上だろ!家族が誘拐されたら兄上とて探し回るに決まってる!」

「そうですか。ですが、お兄様は当主として騎士隊に指示を出し、毎日上がってくる書類に目を通し、騎士隊の報告を伯爵家の邸でお聞きすると思いますが?」

「兄上は当主だ!お前は次期当主で当主ではない!」

「そうですわね。当主が当主の仕事をしなければどうなります?」

「そんなの没落するだけだ」

「そうですわ。没落して領民はどうなります?貴族として、又、領主として領民を護るのが我々の使命ですわ。当主が仕事をしないから次期当主として私が代わりに仕事をしているのです。それぐらい貴方もお分かりになりますでしょ?」

「お前という奴は!妹よりも仕事がそんなに大事か!」

「だから、騎士隊に捜索させていますと申しました。報告を待つ間仕事をしているだけですわ」

「お前という奴は優しさの欠片もないのだな!心配してないのか!」

「私も心配しておりますわ。ですから騎士隊が捜索しておりますわ」

「騎士隊、騎士隊と!自分は探さず人任せか!なんと薄情な!サラが心配なら探しに行くはずだ!それを騎士隊任せにして! お前は冷たい女だ! 俺は兄上に止められて探しに行けない。だからお前が俺の代わりに探しに行け!」

「そんなに心配ならご自分で探しに行けば良いでしょう。 お兄様に止められてる?それは当たり前ですわ。当主としての判断ですわ。 貴方が危険にさらされるからですわ。第二の被害を出さない為に当主としての義務ですわ。私が探しに出て第二の被害にあったら貴方は責任が取れますの?」

「どうして俺が責任を取らされる!」

「貴方の代わりに探しに行くからですわ」

「お前は自分の意思で探しに行けんのか!」

「第二の被害を出さない為にも邸の中で待機するのが私の意志です」

「お前って奴は!本当に冷たい女だ。こんな冷たい女が婚約者とはな!こんな婚約、やめても良いのだぞ!」

「では、やめますか?良いですよ。解消します?」

「解消?こんなの破棄だ!破棄!こんな冷たい女などこちらから破棄してやる!」

「では破棄でよろしいのですね?」

「当たり前だ!」


 ジムが婚約破棄の書類を出して、ジェフ様がサインをして出て行かれました。私もサインをして、伯爵家にも婚約破棄の書類を送ります。ジムか速やかに手続きをしに役所に行ってくれました。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済み】妹に婚約者を奪われたので実家の事は全て任せます。あぁ、崩壊しても一切責任は取りませんからね?

早乙女らいか
恋愛
当主であり伯爵令嬢のカチュアはいつも妹のネメスにいじめられていた。 物も、立場も、そして婚約者も……全てネメスに奪われてしまう。 度重なる災難に心が崩壊したカチュアは、妹のネメアに言い放つ。 「実家の事はすべて任せます。ただし、責任は一切取りません」 そして彼女は自らの命を絶とうとする。もう生きる気力もない。 全てを終わらせようと覚悟を決めた時、カチュアに優しくしてくれた王子が現れて……

父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる

兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

裏切りの代償

志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。 家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。 連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。 しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。 他サイトでも掲載しています。 R15を保険で追加しました。 表紙は写真AC様よりダウンロードしました。

一番悪いのは誰

jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。 ようやく帰れたのは三か月後。 愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。 出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、 「ローラ様は先日亡くなられました」と。 何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・

【完結】お世話になりました

こな
恋愛
わたしがいなくなっても、きっとあなたは気付きもしないでしょう。 ✴︎書き上げ済み。 お話が合わない場合は静かに閉じてください。

【完結】「冤罪で処刑された公爵令嬢はタイムリープする〜二度目の人生は殺(や)られる前に殺(や)ってやりますわ!」

まほりろ
恋愛
【完結しました】 アリシア・フォスターは第一王子の婚約者だった。 だが卒業パーティで第一王子とその仲間たちに冤罪をかけられ、弁解することも許されず、その場で斬り殺されてしまう。 気がつけば、アリシアは十歳の誕生日までタイムリープしていた。 「二度目の人生は|殺《や》られる前に|殺《や》ってやりますわ!」 アリシアはやり直す前の人生で、自分を殺した者たちへの復讐を誓う。 敵は第一王子のスタン、男爵令嬢のゲレ、義弟(いとこ)のルーウィー、騎士団長の息子のジェイ、宰相の息子のカスパーの五人。 アリシアは父親と信頼のおけるメイドを仲間につけ、一人づつ確実に報復していく。 前回の人生では出会うことのなかった隣国の第三皇子に好意を持たれ……。 ☆ ※ざまぁ有り(死ネタ有り) ※虫を潰すように、さくさく敵を抹殺していきます。 ※ヒロインのパパは味方です。 ※他サイトにも投稿しています。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 ※本編1〜14話。タイムリープしたヒロインが、タイムリープする前の人生で自分を殺した相手を、ぷちぷちと潰していく話です。 ※番外編15〜26話。タイムリープする前の時間軸で、娘を殺された公爵が、娘を殺した相手を捻り潰していく話です。 2022年3月8日HOTランキング7位! ありがとうございます!

待つわけないでしょ。新しい婚約者と幸せになります!

風見ゆうみ
恋愛
「1番愛しているのは君だ。だから、今から何が起こっても僕を信じて、僕が迎えに行くのを待っていてくれ」彼は、辺境伯の長女である私、リアラにそうお願いしたあと、パーティー会場に戻るなり「僕、タントス・ミゲルはここにいる、リアラ・フセラブルとの婚約を破棄し、公爵令嬢であるビアンカ・エッジホールとの婚約を宣言する」と叫んだ。 婚約破棄した上に公爵令嬢と婚約? 憤慨した私が婚約破棄を受けて、新しい婚約者を探していると、婚約者を奪った公爵令嬢の元婚約者であるルーザー・クレミナルが私の元へ訪ねてくる。 アグリタ国の第5王子である彼は整った顔立ちだけれど、戦好きで女性嫌い、直属の傭兵部隊を持ち、冷酷な人間だと貴族の中では有名な人物。そんな彼が私との婚約を持ちかけてくる。話してみると、そう悪い人でもなさそうだし、白い結婚を前提に婚約する事にしたのだけど、違うところから待ったがかかり…。 ※暴力表現が多いです。喧嘩が強い令嬢です。 ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。魔法も存在します。 格闘シーンがお好きでない方、浮気男に過剰に反応される方は読む事をお控え下さい。感想をいただけるのは大変嬉しいのですが、感想欄での感情的な批判、暴言などはご遠慮願います。

処理中です...