辺境伯へ嫁ぎます。

アズやっこ

文字の大きさ
上 下
59 / 60

59.

しおりを挟む

お父様達が帰り2ヶ月後、王城からメイドのメリーとミアが辺境へ着きました。


「メリー、ミア」

「「奥様」」

「なんか二人に言われると変な感じね」

「クレアさんが寂しがっていましたよ?」

「それでも一人でも未婚の女性が多い方が良いもの」

「私とミアは辺境に骨を埋める覚悟で来ました」

「メリー、ミア、ありがとう」

「奥様、騎士の方を紹介して下さいね?」

「ミア、ごめんなさいね。紹介出来るほど話した事がないのよ」

「それなら自分で見つけても良いですか?」

「そうね」


メリーとミアは邸に一緒に住む事になり、ケイトとも直ぐに打ち解けていました。


「シア」

「ジル様」


ジル様は私を抱きしめ口付けをしました。


「ジル様、メイドのメリーとミアです」

「遠い所にわざわざすまない。シアを支えてほしい」

「「はい」」

「それから副隊長のキースだ。なにかと会う機会が多いと思う」

「キース様はジル様の従兄弟なの」

「「よろしくお願いします」」

「こちらこそよろしく」


キース様とメリー、ミアは3人で話しています。


「キース様はお兄さんって感じですね。私の恋人ではないかな?」

「ミア!申し訳ありません。後できつく言い聞かせますので」

「すみません…」

「いやいや、お兄さんか、おじさんじゃなくて良かったよ」


メリーとミアもキース様と打ち解けたみたいです。まだ若いミアを叱るのはいつも先輩メイドのメリーでした。王城の時と変わらない二人を見て落ち着きます。

ミアは17歳、メリーは22歳です。


ジル様は私を膝の上に座らせ髪を撫でています。時折髪の毛へ口付けします。

私は3人からジル様へ目線を向けます。


「今日は終わりですか?」

「後はキースがやるだろう」

「では、「「お茶でも」」、ふふっ」

「フッ、しないか?」

「はい」


ジル様は私の唇に口付けし、膝の上に座らせていた私を抱き上げました。お互い見つめ合う私とジル様。私はジル様の首に腕を回し抱きつきます。


「あの、キース様」

「メリーだったよね?何かな?」

「私は何を見せられているのでしょう」

「気にしたら負けだよ。見てみぬふりをする、が辺境では当たり前だからね。騎士隊の騎士達を見たらジルは可愛い方だって分かるから」

「分かりました。壁になり空気に徹しろですね」

「仲が良い夫婦の方が良いだろ?」

「はい。アリシアお嬢様が愛されているのが分かり嬉しいです」

「そうだよね、辺境に来た時に出迎えもしなかったジルを信じられないよね」

「そういう訳ではありませんが…」

「ジルは王女様から愛を貰い愛を返してかけがえのない愛になった」

「それは見て分かります」


私はメリーに、


「メリー、早速で悪いんだけど庭にお茶をお願い」

「分かりました奥様。ミアはこのままケイトさんに付かせますが」

「任せるわ」


メリーはお茶の準備に行き、キース様は一緒に部屋を出て、


「ジル、俺は騎士隊へ戻るぞ」

「悪いな」


キース様を見送ります。

メリーが準備してくれたお茶を飲んで、


「シア、俺に愛を与え教えてくれてありがとう」

「私もジル様から愛をたくさん貰いました。私こそありがとうございます」


ジル様が私の手を握り手の甲に口付けをし、


「愛しい妻が側にいるだけで贅沢か…本当だな」


ジル様にお父様の事を話しました。


「私もお父様の気持ちが分かります。愛しい人が側にいる、それがどんな高価な宝石よりも癒やされ最高の贅沢品だと思います」

「愛を注ぎ、より大切により大事にする。愛でて癒やされる、確かに最高の贅沢品だな。

義父上の足りない所を義母上が補う、流石おしどり夫婦と言われるだけあるな」

「そうなのですか?」

「貴族の間では有名だぞ?」

「でも分かります。国王と王妃という立場の時でも国王を献身的に支える王妃でしたから」

「俺達も義父上達のような夫婦になろうな」

「はい」


私はお茶を飲み、


「メリー、茶葉変えた?」

「ケイトさんからはいつもの茶葉を受け取りましたが」

「そう。少し味が変わったと思ったけど間違いね」

「奥様、それは…」

「なに?」

「その…、子が出来る行為をしてますよね?」

「やだ、メリー、恥ずかしい事聞かないで」

「してるが」

「ジル様!」

「恥ずかしい事じゃないだろ?新婚夫婦なら毎日して当然だ。新婚夫婦じゃなくても俺はシアを抱くぞ?」

「そうですが」

「で、メリーどうした」

「王太子妃殿下がご懐妊した時に食の好みが変わったと聞いたので、もしかしたらと思いまして」

「毎日しているから子が出来てもおかしくはない」

「ジル様!」

「そうだろ?毎日俺はシアの中に子種を何度も出してるだろ?」

「そうですが、メリーに言わなくても……」

「いや、メリーも気づいていると思うが。毎日シーツを変えるのはメリーだぞ?シアの湯浴みの世話をするのもメリーだ、な?そうだろ?」

「はい、そうですね、旦那様はとても情熱的な方で何よりです」

「こうしてはいられないな!早速ハリスを呼ぼう!シア、部屋に戻るぞ」


ジル様に抱き上げられ部屋に戻り、しばらくして騎士隊からハリス様が来て診察をされ、


「間違いなくご懐妊です。隊長、奥様、おめでとうございます」


ハリス様に優しい笑顔を向けられ、


「シア!」


ジル様は私を抱きしめました。ジル様の体が震えていて、私はジル様の背中を優しく撫で、


「ジル様、私を母にしてくれありがとうございます」

「礼を言うのは俺の方だ。ありがとうシア、俺に子を家族を作ってくれてありがとう」


私達は抱き合いました。



しおりを挟む
感想 59

あなたにおすすめの小説

余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~

流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。 しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。 けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

【完結】私の婚約者は、いつも誰かの想い人

キムラましゅろう
恋愛
私の婚約者はとても素敵な人。 だから彼に想いを寄せる女性は沢山いるけど、私はべつに気にしない。 だって婚約者は私なのだから。 いつも通りのご都合主義、ノーリアリティなお話です。 不知の誤字脱字病に罹患しております。ごめんあそばせ。(泣) 小説家になろうさんにも時差投稿します。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

婚約者が私にだけ冷たい理由を、実は私は知っている

恋愛
一見クールな公爵令息ユリアンは、婚約者のシャルロッテにも大変クールで素っ気ない。しかし最初からそうだったわけではなく、貴族学院に入学してある親しい友人ができて以来、シャルロッテへの態度が豹変した。

婚約者様は大変お素敵でございます

ましろ
恋愛
私シェリーが婚約したのは16の頃。相手はまだ13歳のベンジャミン様。当時の彼は、声変わりすらしていない天使の様に美しく可愛らしい少年だった。 あれから2年。天使様は素敵な男性へと成長した。彼が18歳になり学園を卒業したら結婚する。 それまで、侯爵家で花嫁修業としてお父上であるカーティス様から仕事を学びながら、嫁ぐ日を指折り数えて待っていた── 設定はゆるゆるご都合主義です。

【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。

美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯? 

私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました

山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。 ※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。 コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。 ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。 トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。 クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。 シモン・ノアイユ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。 ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。 シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。 〈あらすじ〉  コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。  ジレジレ、すれ違いラブストーリー

処理中です...