辺境伯へ嫁ぎます。

アズやっこ

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「ねぇ、アリシア、どうして僕と婚約しなかったの?婚約してたらこんな事になっていなかったんだよ?

そりゃあ僕だって10歳年上は嫌だけどさ、それでも王妃の椅子は手に入ったんだよ?

僕が成長した頃にはアリシアはおばさんになってるから女としては見れないけど、僕が王になる為にはおばさんでも仕方がないって思っていたんだよ?

僕の跡を継ぐ子供は側妃や妾に産ませるけど、それは仕方ないよね?僕だって若い子の方が良いもん。それでも僕は婚約するつもりでいたのに。なのにさ、アリシアが断るんだもん。

だからね?このまま連れて帰るよ。生きてたら良いんだから、もし抵抗するなら多少傷つけるけどそれも仕方がないよね?」


笑顔で話す第二王子に向けてジル様は剣を鞘から抜いた。

病室の外にはボル様とノール様、数人の騎士達がいる。


「ジル様、子供だからと情けは無用です」

「分かっている」

「アリシアは少し黙ってて!」


背中に痛みが走った。


「ねぇ、そこの騎士さん、良いの?僕は他国の王子だよ?僕に何かしたら分かるよね?」

「だから何だ」

「仲間が死ぬのは嫌でしょ?アリシア一人か仲間か、どっちを取るの?

それに僕はアリシアを殺す気はないよ?一緒に国へ帰って婚約してくれれば良いだけなんだ」

「そうか」


ジル様の剣が第二王子を刺した。


「ど、どう、して……?」


私の手を繋いでいた手が離れ、第二王子はその場で蹲った。


「愛する人を護る為なら俺は悪にも無情にもなれる。それに仲間は俺の選択を認めてくれる。お前を刺して戦になれば皆俺と戦ってくれる。それだけの信頼関係は築いているからだ。

安心しろ、急所は外したからお前が死ぬ事はない。お前は自国の民の前で父親と一緒に処刑させる」

「第二王子、民は国の宝です。民がいなければ自分の国と言った貴方の国も出来上がっていないのですよ?

貴方には王子の資格はあり、ま………」


バタン!


「シアーーー!!」

「おい!ボル!こいつを違う部屋に連れて行け!」

「はい!」

「絶対に死なせるな!分かったな!」

「はい!」

「ハリス、シアを診てくれ!背中を刺されている!」

「背中を上にしてベットに寝かせて下さい!後、服を切るものを!」

「ノール!今すぐ持って来い!」

「はい!」

「ハリス、シアは、シアは助かるか!」

「隊長!私を誰だとお思いで!必ず助けます。隊長のようやく出来た奥様を死なせたりしません。お任せください」

「頼む、頼む……」


薄れゆく意識のなかでジル様の悲痛な声が聞こえた。


意識が朦朧とする中で私は夢をみていた。


「私の可愛い王子さま、愛しているわ、ジル」


優しい女性が産まれたばかりの子を抱き、


「さあ、ジルが貴女を呼んでるわ。私の愛しくて可愛い息子をお願いね?」


女性は私を抱きしめた。


その優しい温かい温もりに目が覚めた。


「シア、シア、愛してる。戻って来い、シア…」

「ジ、ル、さ、ま……」

「シア!シア!あぁ、良かった……本当に、良か…った……」


ジル様の目から涙がこぼれ落ちた…。



私は丸3日、目が覚めなかったらしく、ジル様は医師から「もしもの時は覚悟してください」と言われたらしい。第二王子に刺された傷が深くあとは私の生きる気力を信じる3日間だったと。それでも3日で目が覚めたのは早い方だと言われた。

背中の傷は痛いけど、その痛みは生きている証拠。


「シア、起き上がれるか」


ジル様は目が覚めてからずっと側にいてくれる。

ジル様に支えてもらい起き上がり、


「シア、口を開けろ」


私は口を開ける。


「少しずつで良いからな?今は食べて体力をつけよう」


ジル様はスープをひとさじすくっては私に食べさせる。


「ジル様、手は動きます」

「俺がやりたいんだ」


パンを一口大にちぎって私の口へ食べさせる。

何から何までジル様が率先して私を介抱してくれる。流石に体を拭く時だけはケイトがしてくれるけど…。

私の食事を食べさせ終わるとジル様は物凄い速さで食事を食べる。


「ジル様、私はもう大丈夫です。起き上がったりする時はまだ支えが必要ですが、その他は自分でできます。だからジル様もゆっくり食事をして下さい」

「騎士隊ではいつもこんなもんだぞ?食べれる時に食べるが基本だ」

「そんな訳ありませんよね?」

「王女様、ジルはいつもこんなだよ。忙しいのもあるけど、食べれないなら食べないで食事を抜く時もあるくらいだからね」

「キース様!ご無事でしたか!」

「俺より王女様だろ?人の心配より自分の心配しなよ」

「それを言われると…何も言えません」

「少しジルを借りて良い?」

「はい」

「ジル話がある」

「シアの側から離れたくない」

「お前は隊長だろ?」

「分かった。シア少し離れるが無理はするなよ」

「分かりました」

「ノール頼むぞ」

「はい!」


ジル様とキース様が部屋を出て行き、


「ノール様、少し窓を開けてもらっても良いですか?」


ノール様が窓を少し開けてくれ、窓から心地よい風が部屋の中に入ってきた。




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