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しおりを挟むキース様が国境へ行かれて数日、
「シア、王弟が動いた」
「分かりました」
「今は国境で捕らえる事ができてるが王弟が仕掛けた事で帝国も動いた。これから逃げてくる者が増える。勿論こぼれた者がここに来る可能性はある」
「私は騎士の指示通りに動きます」
「そうしてくれ。今日から俺がシアの側にいるがどうしても俺が離れる時はある。その時はノールに任せるが」
「はい」
「ノールも良いな」
「はい!」
ジル様は私の横に座り、ノール様は部屋の外で護衛をしています。
「シア、婚姻式の事を話そうか」
「こんな時にですか?」
「こんな時だからだ。いつ来るか、もしかしたら来ないかもしれない者を待ち続け気を張っていては疲れる。緊張感を持つ事は大事だが、四六時中持つ必要はない」
「ですが…」
「キースを俺は信じてる。キースならやる、そう言い切れる」
「私もそう思います」
「だろ?だからこそ俺達は日常を過ごそう」
「はい…」
「シアは辺境の教会が良いと言ったが」
「はい、辺境の教会が良いです」
「教会にこだわるか?」
「別に教会にこだわるつもりはありませんが」
「シアが前に花壇を例えて俺達や騎士達は大きな家族だと言っただろ?」
「はい」
「それを聞いた時から考えていたんだが、騎士隊の本部で婚姻式をしないか?」
「騎士隊でですか?」
「神父を呼んで家族皆に見守られながら式を挙げれたらと思っていたんだ。教会だと皆は無理だからな」
「まだ教会を見ていないので広さは分かりませんが、騎士全員となるとどこも無理ですものね」
「それに俺は辺境には武神がいると思っている。武神が見守る地だから今日まで辺境を護ってこれた」
「そうですね、私も武神はいると思います。騎士の妻になるのですから私も武神に認められたいです」
「婚姻式の時だけ国境警備も引き上げ全員でシアが俺の元へ嫁いでくるのを見届ける。どうだ?」
「300人近くいるのですよね?」
「全員でそのくらいだ」
「家族に見守られながら嫁げるなんて、私は幸せ者です。辺境伯夫人として最高の婚姻式です」
「ならそれで進めるか」
「はい。とても素敵な婚姻式になりますね」
「全員が見届人だな」
「はい。ですが国境警備は大丈夫ですか?」
「隣国が落ち着けば1日2日くらい隣国の辺境の騎士がなんとかしてくれるだろ。それに今回の事で貸しもできたしな」
「そうですね、最悪お兄様の護衛で付いてくる騎士達に国境警備してもらえば良いですもの。お兄様の護衛ならここに何百人といますから」
「フッ、そうだな」
私は知らずしらずのうちに少し気を張っていたのかもしれません。ジル様と話していて気が休まりました。
「隊長!副隊長から連絡です」
ボル様がジル様の耳元で何か言っています。
「分かった」
「何かありましたか?」
「一人重傷者運ばれてくる」
「辺境の騎士ですか?」
「違う」
「隣国の方ですか?」
「ああ。国境にも医師はいるし設備もあるがこっちの方が設備が整っているからな」
「そうなのですね。重傷者は平民ですか?」
「いや、」
「では貴族ですか?」
「いや、」
「では、」
「王妃だ」
「王妃様ですか?ですが王妃様は第2二王子と匿う手筈でしたよね?それが何故…」
「ああ、まだ情報が無いから分からないが今の隣国では手に負えないという事だろうな」
「怪我人が多数出れば医師も足りなくなります。それに重傷の程度が分かりませんが薬が足りなくなっているのかもしれません。今の隣国では設備はあっても安全に処置が出来ないのかもしれませんね」
「明日の朝早くにこっちへ運ばれてくる。医師は待機しているから運ばれ次第処置に移るが」
「隣国は今どうなっているのでしょうね」
「国王は王宮に立てこもっているらしい。だがそれも時間の問題だ。王宮の周りには王弟の軍と帝国の軍が取り囲んでいるしな」
「あの馬鹿元王子はどう使うのでしょう」
「国王の説得に使うらしいが」
「王弟殿下からしたら敵の陣地に送るには最適な人材ですね。説得できれば良し、もし殺されても王弟殿下にはなんの痛手にもなりませんもの」
「だな」
「ですが王妃様は心配ですね」
「手引きが上手くいかなかったのか」
「そうですね、国王が王宮で立てこもっているのなら手引きが上手くいかなかった証拠です。手引きが上手くいけば今頃王宮内に王弟殿下と帝国が攻め入っていたはずです」
「王妃が話せるようなら状況を聞きたい所だが」
「ええ。ですがまずは治療優先です」
「そうだな」
王妃様の傷も心配ですが、隣国では今何が起こっているのでしょう。
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