辺境伯へ嫁ぎます。

アズやっこ

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今日からキース様ではなく第六部隊の団長様と副団長様が交代で護衛に付いてくれます。


それは昨日の夜の事…、


「キースが暫く国境へ行く事になった。シアには悪いが明日から違う者が付く」

「分かりました。国境で何かありましたか?」

「いや」

「ジル様教えて下さい」

「王弟の使いの者と国境で会う事になった」

「それでキース様が行かれたのですね」

「そうだ」

「隣国で何かあったのでしょうか」

「まだ分からない。キースが戻れば状況が分かるだろう」

「そうですね。こんな時に申し訳ないのですが…」

「なんだ?」

「街へ行きたいのです…」

「街か…、急ぎか?」

「出来れば。庭師さんに花の苗を頼んでいたのですが、庭師さん、持病の腰痛が悪化したらしくこちらへ運べないと連絡があったそうです」

「爺さんだからな」

「それで苗を取りに行こうかと思いまして」

「騎士隊に取りに行かせれば済む話だろ」

「ついでに刺繍糸を購入してこようかと思いまして」

「刺繍糸か…」


あれからお母様のデザインノートを見ながら刺繍を刺していたら刺繍糸が少なくなり刺繍糸を買いたいのと、布も足りなくなってきて…。どうせなら自分の目で見て選びたいと思ったんだけど…。


「今は止めておいた方が良いですね…」

「出来ればそうしてほしいが…」

「分かりました。苗は申し訳ないのですが騎士の方々にお願いしても良いですか?」

「それは構わない。街へ巡回に行くついでに貰ってきてもらう」

「お願いします」

「刺繍糸は少しだけ待ってくれ」

「分かりました」




朝、団長様と副団長様を紹介され今は団長様が私の部屋の扉前にいます。

キース様のように話しかけるのを躊躇うくらい怖い顔をされています。顔は素敵な顔立ちなのに勿体ないです…。ジル様には負けるけど。

今は刺繍を刺しています。私室の丸テーブルのテーブルクロスを制作中です。


なんか息がつまるわね…。ピリピリとしていて…。怖い顔も一つの原因だけど…。

警戒は有り難いのよ?

それでもね…、


コンコン

「シアどうだ?」

「ジル様!」


私は突然のジル様の訪問に喜んで抱きつきました。


「おいゼフ!お前殺気を飛ばし過ぎだ!警戒するのは良いがこれではシアが怖がるだろ!」

「すみません、気付きませんでした」

「はぁぁ、あのな、護衛をするのが初めてなのは分かる。邸の中でも警戒は必要だ。だがな、シアを怖がらせては意味がないだろ」

「すみません、王女様の護衛なんて初めてで」

「俺もキースもシアの側にいるが殺気なんて飛ばしてないぞ」

「隊長や副隊長は別格ですから。隊長はその場にいるだけで誰も楯突こうとは思いませんよ、見た目だけで怖いんですから」

「何だと!」

「か、貫禄があるって事です、はいすみません」

「お前な、腕は良いんだから自信を持て。後、団長になったんだからもう少し威厳を持て」

「だから言ったじゃないですか、俺には無理だって」

「恨むならお前の親父を恨め。お前に任せて早々に引退したんだ」

「俺親父を説得します」

「説得出来るなら説得すれば良いが、だがな俺もキースもお前なら団長に相応しいと思ったから任命したんだ。第六部隊は若い騎士が多い。時に無茶をするがお前は個々を見極め止め時を良く分かっている。そこを俺達は評価した、その結果だ」

「恐れ多いです」

「邸から出る時はその殺気だった警戒が必要だが邸の中はしまっておけ」

「分かりました」


ジル様は抱きついている私を見て、


「シア、怖がらせたか?」

「大丈夫です」

「なら良いが」

「ところで何か用がありましたか?」

「いや…様子をな……(ケイトも一緒に居てくれれば気にならないが…護衛とはいえ二人きりだしな…)」

「ジル様?」

「今は何をしたいたんだ?」

「刺繍を刺していました。今はテーブルクロスを制作中です」

「見ても良いか?」

「見てくれますか?」


私はジル様の手を引いて制作途中のテーブルクロスを見せました。

ジル様はソファーに座り私を膝の上に座らせました。


「ジル様」

「ん?(これだけ見せつけておけば変な気をおこす事はないだろ)」


ジル様は私の髪を撫でています。


「シア、これは何という花だ?」

「お母様のノートに描いてあったものです。ゼラニウムという花らしいです。赤のゼラニウムには「君がいて幸せ」と言う意味があるそうです。後、ゼラニウムには「尊敬」の意味もあるそうなので、まるで私がジル様を思う気持ちと同じだと思いました。

私は目指せジル様です。そしてジル様が側にいてくれて私は幸せです」

「シア」


ジル様は私を抱きしめました。


「俺もシアに贈りたいものができた。明日一緒に街へ行くか?」

「はい!ジル様と一緒に行きたいです」

「ゼフ、第六部隊には準備をさせておくように」

「分かりました」

「あと荷馬車も準備しておいてくれ。今日街へ巡回に行っている団長に花の苗がどれだけあるか確認してくるように頼んでおいた。後で第四団長に確認してくれ」

「分かりました」


ジル様は騎士隊へ戻り私はまた刺繍を続けた。ゼフ様の殺気が取れ良かったわ。






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